いざ、パーティーへ
「北東の方角の土地の土の具合ですか…」
精霊の間のそばのお部屋をお借りし、先程の精霊さんとのお話をルーベン様に報告する。
アメリアがそっと温かいミルクティーを出してくれた。
一口飲むと肩の力が抜けていくようで、アメリアの労りが感じられる。
「場所の明確な名前は仰っていませんでした。申し訳ございません、きちんとお伺いするべきでしたね」
「いえ、神託はいつも方角や山や森の名前で受けるので気にする必要はありません。ここから具体的な場所を特定するのは、人間の仕事です」
御前会議の各地の報告内容とこの神託を照らし合わせて、今年の農作物の収穫などに支障のでそうな場所を探し、重点的に対処するのだそうだ。
「神託の内容は明日、私から公爵家会議で報告して検討するので、今日のところはこれで結構です。貴女もご苦労様でした」
アメリアが扉を開け、私に退出を促す。
パーティーの準備の幕開けだ。
~・~・~・~・~
「お待ちしておりました、フェリスティア様」
扉を開けると、ミリーを先頭に4名の侍女達が、いい笑顔で待ち構えていた。
「さぁフェリスティア様、お疲れかとは存じますが、パーティーまで時間がありませんので、どんどん参りますよ!」
そこから、ミリーらによる怒涛の「お嬢様変身プロジェクト」が始まった。
まず湯浴みをし温まりながら、顔・デコルテを中心にマッサージをしてお肌の調子を整える。
湯からあがったら、すぐにヘアメイク。
ダンスの際に邪魔にならないようアップにし、白い小花とパールをあしらった髪留めでまとめていく。
メイクはミリー曰く、「初々しくも奥ゆかしい深窓のご令嬢」とのこと。
ミリーの手にかかると魔法のごとく、自分の地味顔が貴族の令嬢のそれに作り変わっていく。
そして、いよいよドレス。
先日オーダーしたドレスをアメリアがクローゼットから用意してくれる。
「きれい…」
水色のオーガンジー素材を幾重にも重ねたスカートには髪留めと揃いの白い小花が散りばめられている。
白い小花は胸元にもあしらわれ、ありがたいことに私のない胸をカバーしてくれている。
今回は全貴族が集まるパーティーということで、露出度を控えめにということで、腕は被われ、そでの部分はかわいらしい白いリボンが編み込まれている。
「かわいらしさや清楚さを引き立てる…まさに、お嬢様のためのドレスですね」
「こんな素敵なドレス、私が着てしまっていいのかしら」と口から出かかる私の先手を打って、アメリアが発言する。
慣れないが、こういったドレスを堂々と着こなすのも貴族令嬢のたしなみだ。
これはアメリアなりに私の背中を押してくれているのだろう。
皆が今日のパーティーのために色々頑張ってくれている。
私も気合いを入れて頑張らなければ。
「ありがとう、アメリア。着るのを手伝ってくれる?」
~・~・~・~・~
通常、パーティーに参加する際、女性は旦那さんや婚約者、父親や男兄弟にエスコートされるのがマナーだ。
婚約者や兄弟のいない私は、ルーベン様にエスコートしていただき、パーティーの行われる王宮の大広間に入場することになっていた。
待ち合わせの部屋に入ると、私より早く用意を終えていたルーベン様がすでにお待ちだった。
「ルーベン様、お待たせしてしまい申し訳ございません」
「いえ、今来たところなので結構です。ドレスも大変お似合いですね」
…あら?、ルーベン様、心なしか不機嫌なような…。
「ルーベン様はこういったパーティーがあまりお好きではないんです」
うしろから、こそっとアメリアが耳打ちしてくれる。
「こういった社交の場にも、シーズン中ほとんどご参加なさいませんし、ご参加なさっても早めに退席なさることが多いです。なので…」
「なので?」
「アーリア家の家臣達は、ルーベン様がより積極的に社交にご参加になるよう、フェリスティア様の手腕に期待しております」
…無理です。
~・~・~・~・~
ルーベン様と2人、会場へと向かうが空気が重い。
アメリアが余計なことを言うから、よりプレッシャーがかかっている。
とにかくいつまでも無言というわけにはいかない。
「…私、他の貴族の方に直接お会いするのが初めてなので緊張しますね」
「いつもどおりで構いません」
「いえ、ご挨拶など粗相のないように頑張ります」
「…」
「…」
「パーティーではどんなお食事がでるんでしょうね!先日の学院主催のパーティーの時も豪華で驚きました」
「パーティーの際はあまり食事をとらないので」
「そっ、そうでしたか、失礼致しました」
「…」
「…」
ごめんなさい、アメリア、みんな…。
私には過分な期待でした…。
「…ふっ」
心の底で泣きながら、家のみんなに謝罪していると、隣から吹き出す忍び笑いが聞こえてきて、慌てて隣を見る。
見るとやはり、ルーベン様が口元を隠しながら笑っていらっしゃる。
というかルーベン様が笑っているところ、初めて見たかもしれない…。
「すみません、私の社交嫌いを誰かから聞いて和ませようとしてくださったんですね」
「いえ…私なんかが出過ぎたまねをして申し訳ございません」
「いえ、こちらこそ子どもっぽかったですね。昔から大勢が集まる場は苦手で」
「お気持ちは十二分にわかります」
「今回は貴女もいることですし、保護者としても少し頑張ってみましょう、宜しくお願いします」
「!こちらこそ宜しくお願い致します!」
ダメなところばかり似た者父娘なことがわかったところで、いざ、パーティーに参戦です!
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