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学院のダンスパーティー4

「フェリスティア様」


クロフォード様と一曲踊り終え、クロフォード様に一礼をし、ダンスホールの中央から再び壁際へ下がる。

奥様や婚約者、それに近い方でない限り、同じ場で2回ダンスを踊らないのが社交の暗黙のルールだ。


名残惜しい気もしたが、ようやくこのプレッシャーから解放される安堵感の方が大きかった。


クロフォード様は休む間もなく、ピンク色のドレスのかわいらしいご令嬢と踊り始められている。


「フェリスティア様」


喉が渇いたので飲み物をもらおうと係の人を探していると、人混みの中から声をかけられた。


「ロザリア様」


声をかけてきたのは、先ほどクロフォード様と素晴らしいダンスを披露していたロザリア様だった。


「ごきげんよう。もしよろしければ、ご一緒してもよろしいですか?」

「もちろんです!」


~・~・~・~・~


人集りから少し離れ飲み物をいただき、2人で小さく乾杯する。


「ロザリア様の先程のダンス、とても優雅で素敵でした。思わず見とれてしまいました」

「私は小さい時からレッスンを受けていますから。フェリスティア様こそ、短期間の練習とは思えないくらい素晴らしかったですわ」

「いえ、クロフォード様のリードあってこそです。ロザリア様は、王太子様と踊るのは緊張なさいませんか?私、踊り終わってから急に緊張で足が震えてしまって」


長いドレスで足が隠れているので助かっているが、クロフォード様と別れてから、急に緊張が解けて足がガクガクしているのだ。


「それも、私は小さい時から慣れていますので」

「慣れている、と仰いますと?」

「クロフォード様はまだご婚約されている方がいらっしゃらないので、こういった社交の場では、ダンスの最初の相手として踊るよう頼まれているんです」

「そうだったんですか!」

「えぇ、時と場合にもよりますが、大概の場合はそういうことになっています」

「それは公爵家のご令嬢として、ということですか」

「はい、今まで公爵家は女子が1人しかいませんでしたので」


ロザリア様は皆まで仰らないが、恐らくグレイソンがダンスの練習役を務めたのと同じ理由で、王太子様の婚約者候補に名乗り出たい子女達が『我こそが1番に王太子様とダンスを!』という争いを避けるための配慮なのだろう。

貴族の中でも立場が上の公爵家が最初にダンスを踊るのを、表だって悪く言う人はいないはずだ。


「まぁ面白くない方もいらっしゃるとは思いますが」


そう仰ってチラリと私の肩越しに向こうを見る。

私もこっそり後ろを伺うと、明らかにこちらを睨んでいる一団があった。

前言撤回。

ロザリア様もなかご苦労なさっているのだ。


「まぁ王太子殿下と踊る滅多にないチャンスですから、気持ちはわからなくはないですが、私も立場上仕方なく、ですので」


そう仰って飲み物に口をつける姿は気品に溢れている。

だが、王太子様が魅力的な方である。

あぁは仰っているが、ロザリア様はクロフォード様について、どうお思いなのだろう。


「きゃっ!!」


場内に女性の悲鳴が響いた。


声の方を見ると、クロフォード様と踊ってらっしゃった、ピンク色のドレスのご令嬢がしゃがみこんでいて、クロフォード様に手を借り、立ち上がろうとしているところだった。


タイミング的に、ちょうど一曲踊り終わったところで足がもつれるかして転んでしまったようだ。

王太子様と踊るのだ、きっと緊張なさったのだろう。

踊り終わってから足が震えている自分のことを考えると、このご令嬢に同情する。


ご令嬢がクロフォード様に助け起こされた時には、次のダンスの曲が始まってしまい、流れでお二人はそのまま踊り始めた。


「怪我がないようでよかったです。驚きましたね、ロザリア様…ロザリア様?」


会話の続きに戻ろうと、ロザリア様の方に向き直ったが、その表情にもっと驚いてしまった。

ロザリア様のお顔が苦悶に満ちた表情だったのだ。


「ロザリア様?もしかしてご気分が悪いのでは…」

「えっ?あっいえ、申し訳ございません。ちょっと立ちくらみがしただけですので、もう大丈夫ですわ」


そう仰っているが、顔色はあまり優れない。


私に気を遣ってか、お話を続けて下さっているが、チラチラと踊るクロフォード様とご令嬢を気になさっている。


もしかして、あのご令嬢が王太子様と2度目のダンスを踊っていることを気になさっているのかしら?

周りをこっそり見回すと、そこここのご令嬢達の輪から中央で踊るお二人に、羨ましいような、妬ましいようなという視線が注がれていた。


ロザリア様ももしかしたら、クロフォード様のことをお慕いしてらっしゃるのかもしれない。

でもこの世界の恋、ましてや結婚というものは、私が元いた世界以上に本人の自由にならないものなのだろう。


「ロザリア様、よろしければ飲み物をもう一杯いただきませんか?」


もしこれが恋ならば、ロザリア様の恋が幸せな形で実りますように。

私は心の底でこっそり祈り、今のこの一時をロザリア様と楽しく過ごせるよう、もう少しおしゃべりに興じることにした。

お読みいただきありがとうございます!

本日はもう一話投稿予定です

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