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学院のダンスパーティー2

パーティーの始まりを告げる挨拶が高らかに宣言され、会場の空気が動き出した。


音楽が鳴り始め、飲食や歓談がスタートし、生徒たちが動き始める中、早速賑やかな一団が早速出来上がっていた。


クロフォード王太子様や、お付きの騎士様で学院の同級生でもあるリューク様、その他数名の殿方とそれを取り囲むご令嬢たちの一団だ。


このパーティーは無礼講ということで、貴族同士の階級などはある程度無視される慣例となっているのだそうだ。

そのため、クロフォード王太子様も学院の一生徒として出席なさっている。


だからこそ、多くの貴族のご子息、ご令嬢にとって王太子様や滅多に会うことのできない公爵家の方々と交流を深める絶好のチャンスなのだ。


特に年頃のご令嬢たちは、王太子様の結婚相手として売り込む、またとない機会。


あらかじめ、ミリーに教わっていた色眼鏡で周囲のご令嬢を見るとなるほど、確かにドレスにアクセサリー、ヘアメイクとどれも気合いが入っている。


まぁ私には関係ないだろう!ということで、こちらも壁際の目立たない位置を確保すべく、早々にシャンデリアの下を退散する。

壁際から場内を見回すと、みんな友人たちと休み明けの再開を喜び、歓談を楽しみながらも、各々周囲に気を配りながら情報収集しているといった感じだ。


なるほどこれが社交界というものなのね、と一人納得していると目の前をさっと音もなく通りすぎる赤髪の男性と目が会う。


リューク・バランタイン様だ。

慌てて会釈しながら、先ほどまでクロフォード様とご一緒だったはずなのに?と思わず行方を目で追った。


あちらも私の方に目礼だけして足早にどこかへ歩いていく。

向かうその先にいたのは、リューク様と全く同じ赤髪のロザリア様だった。


「そうか、お二人はご兄妹でしたね」


アメリアからお二人は兄妹だと教えられていたのを今さら思い出した。

リューク様は本来もう少し早く学院に入学されてもよかったものの、王太子付きの騎士としてクロフォード様のご入学まで、ご自身の入学を遅らせたのだそうだ。

(ミリーは、「バランタイン公爵様はロザリアお嬢様を溺愛しているため、娘にいらない虫が付かないよう、息子を同じ学年で入学させたという噂ですよ!」とも言っていたが…。)


そんなことを考えていると、今度は元来たところに戻るような形で、リューク様とロザリア様が私の目の前を通過していった。

私に気がついたロザリア様が会釈してくださり、慌ててこちらも会釈し返す。


なんだかお忙しそうだわ~と思っていると、オーケストラの奏でる音楽が変わった。

これは、ダンスが始まる合図だ、と同時に場内がにわかに慌ただしくなり始めた。

みんな最初のダンスのお相手を探しているのだ。


まぁ、男性の知り合いのいない私にはそれこそ関係ない、というか、なんとか自分のダンスの腕前を披露することなく、このパーティーを終えたい。


そうこうしているうちに、最初のダンスが始まる。

たくさんの美しく着飾ったカップルが場内の中央に踊り出てくる中、注目を集めたのは、クロフォード様とロザリア様のカップルだ。


お二人とも見目麗しく、また王族・公爵家のなせる業なのか、オーラも周囲とはワンランク違う。

ダンスも優雅で思わず見とれてしまう。自然とお二人が流れるように場内の中央に躍り出る形になった。


「~~素敵なカップル…」

「見とれている場合じゃありませんよ、フェリスティア様」

「!!りゅっリューク様!いつの間に!!」


惚けていた私の隣にはいつからいたのか、リューク様が立っていらっしゃった。

ちゃっかり軽食の皿もゲットし、お食事まで始めている。


慌ててご挨拶を、と思ったがこういう場だから不要、と手で制された。


「リューク様は踊られないんですか?」

「クロード…クロフォードの頼みがあるからね、それが終わったら俺もいきますよ」

「王太子様のお願いですか?」

「えぇ、貴女の居場所の確認と目印代わりに隣に立っといてくれって」

「えっ、なぜですか?」

「クロードが次はぜひ貴女と踊りたい、と」

「!?むっ無理です!」

「えっなんで?普通ここ、喜ぶとこだと思うんだけど」

「…あの、私ダンスの腕前がちょっと…」


嘘をついてもすぐにバレそうなので正直に告白すると、リューク様は一瞬、間をおいて笑い始めた。


「あ~なるほどね、でも残念ながら逃げられそうにないよ」


リューク様がニヤリと笑って小さく指差す方を見ると、いつの間に一曲目が終わったのか、ロザリア様と別れたクロフォード様がこちらに歩いてくる。


王太子様が歩くと自然に人並みが割れて、彼の進む道を作っていき、まるでどこかの宗教の逸話をリアルタイムに見ているようだ。


クロフォード様もこちらがご自身を見ていることに気がついたのか、目が合い、微笑まれた。

その瞬間、他の人は誰も視界に入らなくなり、音が遠くなり、私の時間が完全に止まった。

完璧な微笑みをたたえた王子様が、私を見つめたまま、まっすぐこちらへ歩いてくること以外は―。


「フェリスティア様、私と一曲踊っていただけませんか」

「…はい、よろこんで」


リューク様には現金だと笑われるかもしれないが(事実ニヤニヤなさっている)、クロフォード様の強く、だけれど柔らかさをもったこの瞳に見つめられては、断るという選択肢はなかった。



いつもお読みいただきありがとうございます!

明日は久しぶりに王太子様の登場です

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