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【おまけ】思い馳せる二人

 今日、この神殿で領主様の結婚式が執り行われる。

 三年前まで王家の直轄地だった北部ロンバール地方の一部が、バーミリオン領として新しく公爵になられたヴィンセント様に下賜された。公爵となられて直ぐに婚約者のマーリア様と領地入りした公爵様は、これまで停滞していた領内の産業や人の往来、領民の意識を活性化させる施策を数々打ち出し、見る間に生活水準が上がる事となった。

 マーリア様は公爵邸で執務をこなされたり、代行として領地を回ったりと精力的に動かれていて、領民からの信頼も厚くなっている。だからだろう、この日の為に修復される事になった神殿も、領民の自主的な貢献によって見違えるほどに綺麗に整えられていた。


 公爵様ご夫妻はすでに控えの間にてお召替えが済んでおり、ご家族とご歓談をなされている頃だろう。これから式が始まるというのに、神殿の外には既に多くの領民が詰めかけていて、式が終わるのを待ちわびていた。


 神殿の祈祷の間にご家族方がお越しになり膝を付くと、公爵様ご夫妻がゆっくりと祭壇の前まで進み出る。白い騎士礼服の公爵様の神々しさに劣ることのない、マーリア様の純白のウエディングドレス姿は、荘厳な広間をより一層厳粛なものへと変える。


「ヴィンセント・バーミリオン。そなたはマーリア・プロミラルを生涯の伴侶とし、いついかなる時も愛し、その身をもって守る事を誓いますか」

「唯一の伴侶として、愛し、守る事を誓います」

「マーリア・プロミラル。そなたはヴィンセント・バーミリオンを生涯の伴侶とし、いついかなる時も支え、その愛をもって共に困難に立ち向かうことを誓いますか」

「唯一の伴侶として、愛し、支える事を誓います」

「今ここにバーミリオン公爵家当主ヴィンセントとマーリアの婚姻が整ったことを、司祭たる我ポーラが御心に届け祝福をもってこれが承諾なされたことを宣言します。皆、お立ちなさい。ここに集いし皆様がこの婚姻の見届け人となります。どうか、この二人を支え導いて頂くことをお願いいたします」


 沈黙をもって了承の意を得て、私の誘導で神殿の外へと誘う。

 扉が開いた途端に湧き上がる歓声と祝福を祝う鐘の音が響き渡る中を、腕を組んだ二人が手を振り応えながら進んでゆく。四頭立ての帆無し馬車に乗り込み、ゆっくりと街をパレードして邸に着けば披露宴になるのであろう。さすがに陛下や正妃殿下がお越しになられはしないが、主だった貴族は名代を立ててでも参加なさるのだろう。


「やっとこの時を迎えられたね」

「そう、やっとよ。やっぱりハッピーエンドは感無量よね」

「それでもここはゲームの世界じゃない。彼らはこれからシナリオのない生涯を送っていくでしょう」

「それは私達にも言える事じゃない。でも、最後まで見守っていきたいよね。もう馬に蹴られるような行為はコリゴリだもん」

「そう、最後の時まで見守っていきましょう。もうアドバイスはできないでしょうけど、最後まで見届けないとね。だからアナタも頑張んなさいよ、アイリス司祭補佐」

「えぇ。これからもよろしくね、ポーラ司祭様」


 マーリア様にひどい事をし続けた私が思うのもなんだけど、彼らの治めるこの土地で、彼らと、そう遠くない未来に生まれるであろう彼らの子を、いつまでも見守って行きたいと思う。


これまでに無いほどのブクマや評価を頂けたこと、誤字脱字を根気よく指摘していただけましたこと、この場をお借りしてお礼申し上げます。

見切り発車で落としどころさえ見えないままで書き進めましたが、皆様の支えでなんとか完結まで書ききることが出来ました。

さらにはジャンル別ランキングの上位に入る事もかなって、本当に感無量です。


最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました。

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