本来の精神魔法
今俺は宿屋の一階を借りて並んでいる人間一人一人に精神魔法をかけている。奴隷には魔法が強くなったと喧伝し、誇示させている。
さて、こうなった経緯についてだが、特に語ることはないな。あまりにも簡単にことが進んだからだ。作戦の結果、国民の殆どが教祖を盲信する信者のように奴隷のイエスマンと成り果てた。疑っていた奴も実際に魔法が強くなったのを見て堪らず列に並びだした。
非常に滑稽である。
というわけで何の苦もなく今に至るというわけだ。
...もう千人ほどは奴隷にしただろうか、それにしても一向に列が減る気配が無い。
とは言えこれだけの人数に精神魔法を使っていると慣れてきて、今では一瞬触れるだけで魔法を強くする改造まで出来るようになった。あとはもう無心でやるだけだ。
一万人目。疲れがピークに近づいてきた。
二万人目。疲れより愉快さの方が上回り始めた。楽しい。非常に楽しい。
三万人目。あと半分。しかし、この素晴らしい愉快さに、何故だか懐かしい感じを覚えてきた。よく分からない。何だこの感覚は。
六万人目。最後の一人を奴隷にし終わった。これでこの国の国民は全て俺の奴隷になったというわけだ。笑いが止まらんな。
(すみません。少しよろしいでしょうか)
どうした、奴隷。
(王族の方があなた様に城に来いと申されています)
そういえばいたな。そんな奴らが。
まあ俺も会いたかったしな。行ってやろう。
ああ、それとこれからは王族ごときに敬語を使う必要はないぞ、王族の奴らがこうこう
抜かしてる、ぐらいにしとけ。
(はい。分かりました)
よし、じゃあ行くか。
表に出ると馬車が用意されていた。これで城まで来いという事だろう。
火魔法の奴隷を一人連れ、馬車に乗り込む。
馬車は城に向かい走り出し、乗る事五分ほどでついた。
馬車から降りると、甲冑を着た兵士に王間の前まで案内された。すると兵士から、
「一言注意を申し上げておきますと、扉を開けて入る際は右足から入り、入ったら絶対に目を合わせず背すじっ」
五月蝿いので燃やしておく。
しかしちょっと待てなんだその魔法は。
(何だと言われましても)
恐る恐る魂を見る。
うわ、何だこれは。構造がむちゃくちゃじゃないか。これじゃあんなゴミみたいに汚い魔法しか出せないわけだ。
(どういうことですか?)
本当の火魔法はあんなもんじゃないって事だ。お前あれか、王国民を奴隷にする前にいた奴か?
(はい。そうです)
やはりか、何と情けない精神魔法だ。
一体どうしたらここまで下手くそになれるんだ?仕方ない、本物の精神魔法を見せてやろうじゃないか。
さて、こんな魂はさっさと分解してしまおう。そして魂の根幹となる核を作っていく。
これを肉体に埋め込んで終わり。それだけでいいのにわざわざ全部作ろうとするからおかしくなるんだ。意味が分からん。方向性を示してやれば魂はちゃんとした形で成長するのは当たり前だ。
五秒ほど経ち、魂が形成され終わった。
同時に肉体と一体化し、目が開いた。
どうだ。今の感じは。
(前より体が楽になった感じです。魔法もより強い魔法が使えるようになっています)
当然だ。前の魂が下手すぎたのだから。
さあ、魂をまともにし終わったところで、王に会いに部屋に入るか。




