Prologue / 終わりの始まり
アニマル市警はFBI副長官による汚職事件の後、スワットチームの30・50・60チームの人員からなるタスクフォース・アースソングを結成してFBIから提供された情報を基にゴースト・ガンの捜索を行っていたが…
メキシコ国内にあるとある豪邸の一室。
暗闇の広がる豪勢な部屋の中でとある女性は呟いた。
「はぁ。つまらないな。実につまらない。何も面白くない。」
彼女は〝エル・アルテサーノ〟と呼ばれるメキシコ最大規模の麻薬カルテルであるロス・クルティードを統べる麻薬王である。
元々ロス・クルティードは単なるメキシコ国内に多数存在する麻薬カルテルの一つでしかなかったのだが、彼女が後を継いでからは一気に過激派路線へとシフトしていき、暴力と血によって他のカルテルを徐々に接収していき、そこで政治家や警察と深いパイプを作り上げることで組織を無尽蔵に巨大化させていき、遂には軍の一部までも操れる地位にまで成り上がった。
実はクルティード<皮なめし>という名前は元はこの組織が職にあぶれた皮製品の職人が集まって結成したことに由来していたが、現在では人の皮を剥ぐからこの名前を使っているという形に認識が改められている。これもまたイメージ戦略の一つであると言える。
メキシコ国内において彼女の命令を聞かない者はいない。彼女の名前を出すだけで全員が震えあがる。それだけの名を挙げた。
しかし、クルティード内において彼女の顔を知っているものは本当にごく少数の限られた人間しかいない。
彼女は自身の安全を守ることと自身の神格化と透明性を応用することによって成し遂げて伝説となったのだ。
更に彼女はメキシコだけでは飽き足らずにアメリカにまでも進出していった。
アメリカという隣にある世界最大の国での商売が成功すれば、彼女の名前はメキシコ国内だけではなく世界にまで広がっていくことになる。
そして手を出したのがアメリカ最大の経済都市であるアニマルシティと実質的な私兵集団である民間軍事会社ロス・ビソンテスの設立であった。
最初は上手く事業を軌道に乗せられた。メキシコ国内でやったように他のカルテルに対して恐怖政治を行ったり、はたまた友好的な関係を結ぶことで組織図を拡大できたのである。
そこから韓国マフィアであるダブル・タイガーとの友好関係を結んだことで、彼らの顧客リストにあったFBIの副長官を上手く抱きこむことに成功すると、アメリカ内部の政治家までもを味方として取り込むことができるようになった。
しかし、全ておかしくなってしまった始まりはとある中枢の幹部が殺害され、不正の証拠が詰まったUSBをクロウ・S・マーロンという警官に奪われたのが全ての始まりである。
彼女はUSBをチェックして自身が殺される可能性が高いことを察すると、そのUSBを誰にもわからない場所へと秘匿した。
アルテサーノは代償を支払わせるために彼女を昏倒させると、想像しうる限り最も残虐な方法で彼女を生きたまま切り刻んだ。
家族を目の前で殺し、クリトリスを切り、手足を切り、腹を切り、中身を引きずり出した。
だが、彼女はどれだけ危険に晒されてもUSBの在り処を吐くことは無かった。
彼女を壊すことに甘美さを感じたアルテサーノは〝やりすぎて〟しまい、在り処を吐くより先に肉体と精神が激痛によって崩壊した。
そして最期は豚に食わせて遺体から皮を剥ぎ、彼女の断末魔に至るまでを全てビデオに録画して仲間へと送り付けた。
死後も彼女を辱めるためにそのスナッフポルノをダークウェブで売り、アングラ系のサイトに拡散されていった。今でも少し調べるだけで彼女の最期を誰でも拝むことができる。
これは警官連中の動きを止めるための〝警告〟であるはずだった。
実際彼女を殺害してから一年はクルティードに対する法執行機関の抵抗勢力はほぼ皆無になっていたし、その隙にある程度勢力を伸ばすことができた。
その頃になるとアメリカ以外の国の仕事も増えて大きなマルチタスクとなり、ある程度の管理を一部の幹部とビソンテスに任せていた。
しかし、それが大きな失敗へとつながってしまった。
「ねぇねぇ、私が豚さんに仕事を任せた理由、わかるかい?」
アルテサーノはクッションでくつろぎながら、パシオン・アステカを注いでグラスの淵を指でなぞった。
「そ、そ、それは…アルテサーノ様がお忙しくなったため、我々が代わりにアメリカでの事業を…」
「うん、そうだね。私が忙しかったから豚さんに任せたんだよね。豚さんは前のカルテルでも優秀だったじゃない?だから私は仕事を任せたんだけど、このありさまは何?精々あのCLAWとかいう連中の部下の一部を始末させただけ?それにじゃあなんで半年間も行方をくらませてたわけ?」
「情報がトップシークレットで……なんの情報も手に入らなかったんです。ギリギリ掴めたのがあの二人だったってだけで……」
「でも、貴方が殺させたのはその片割れだけだった…結局のところはあのメス牛の子飼いが殺しただけじゃない。」
「だから……その……うあ゛っ」
アルテサーノは豚さんと呼んでいる一人の部下の耳を手元にあったナイフでサックリと切り取ると、そのまま目の前でバリバリと咀嚼して飲み込んだ。
「ふーん……豚さんの耳はあんまり美味しくないね。ちゃんとした食生活をしてる?ポークチョップばかり食べてたら生活習慣病になっちゃうよぅ。あ、悲鳴は最小限でお願いね。今は夜中だからさ。近所迷惑だよ。」
「うああ゛ぁ゛……すいません、すいません、すいません゛……」
「泣かないでよ。豚さんが悪いんだからさ。あーあ、それにしてもあのメス牛をバラせなかったのは心残りだなあ。初めて会った時からあのツンツンした態度をぶち壊して靴を舐めさせてやりたいと思ってたし、逃げ帰ってこれたらメス牛のあの野心塗れのプライド高い心を私の性奴隷にしてズタズタに引き裂いてから殺してあげようと思ってたんだけど、なんたってあいつはもうこの世に悔いはないですよ~って感じで気持ちよさそうな顔して死んじゃったんだもん。面白くないよね。自分が親を殺した子供を連れて家族ごっこして母親になったフリしてさ…くっさーい三文芝居しちゃって。なんか、母親になったつもりでいたんだよ、あいつ。滑稽だよね、あはっ、あははははっ!おもっ…しろっ…!ホント…バカみたい……!ぷぷぷ……」
「はは…はは…」
「面白いよね!ほら、もっと笑ってもっと笑って!」
「う゛ぐっ゛……」
アルテサーノは笑いながらもう片方の耳をナイフで切り落とすと、再度バリバリと食べて飲み込むと、テキーラを呑んだ。豚は必死に涙を堪えながら笑い続けた。
「はぁ……つまんないなあ……あのクロウってカラスちゃんを殺した時は凄く楽しかったんだけど……楽しみは奪われるし、任せた事業には失敗しちゃうし……豚さんってホントにダメな人だね。」
「ご、ごめんなさいっ、ごめんなさい……」
「ねぇ、そういえば豚さんって今の状況分かってる?お前は私の酒のつまみなんだよ?もっと美味しくないとダメだって。自分磨きしないと、豚さんなんだから。わかる?生きた生ハムなんだよ?」
「はいぃ…はいい……」
「はーあ、怯えてばっかでつまんないなあ……あ、そうだ。豚さん、いいことを思いついたよ!」
アルテサーノは指を鳴らすと満面の笑みで豚さんの後ろにあった二つの死体を指差した。
一人は四十代の女性でもう一人は六歳ぐらいの幼い娘だった。二人とも首を切り落とされ地面には大量の血が滴っていた。
「豚さん、今からあれを食べてよ。」
「え゛!?」
「餌だよ。いい豚はいい餌を食べていい肉を作るんだよ?だからほら、食べないとダメだって。お腹空いてるでしょ?昨日から何も食べてないんだから。」
「う゛……う゛ぅ゛……」
豚は倒れた家族の遺体を食べようとするが、どうしても脳の安全装置が作動して噛むことができない。そしてこんなおぞましいことをやっている現実に吐き気がして倒れそうになる。
「い…い゛……いぃぃ゛~……」
「おっ、嫌?嫌って言っちゃう?本当に言っていいの?言っちゃってもいいの?」
「嫌゛ですっ゛家族を食べる゛ことなんて゛でき゛ま゛せ゛ん゛!」
「あっ!言っちゃった!言っちゃった!遂に反抗しちゃった!」
アルテサーノは腰から大口径のリボルバーを出すと、そのまま豚の頭を撃ち抜いて破裂させると、立ち上がって死んだ娘の肌をナイフで切り裂き、そのまま口へと入れた。
「うーん、あんまし美味しくないなあこの家族。親がマズけりゃ娘もマズい!救いようがないじゃんね!ゲロマズ~!」
懐からアルテサーノは葉巻用のマッチを取り出すとそのまま、死体に放って火を放った。
少しずつ部屋が燃え広がる中で小さな声でバイバイと言いながら手を振ると、家の前に停めてあるポルシェ・356に乗り込んで懐からiPhoneを取り出し、どこかへと連絡を取った。
「あー、もしもし?私だけど。おサルさん〝例の物〟の準備は順調かな?」
「はい。準備できています。それと指示された通り〝置き土産〟も用意しました。八十年代の秘匿・廃棄されていた米軍基地に遺されていたものです。連中は貴方の思惑通りに引っかかるはずだ。」
「お、いいね~久々に楽しくなりそう!アニマル市警の奴ら、豚さんが手を抜いてたから簡単にゲームをクリアできてたみたいだけど、私がプレイヤーになるなら今度は手加減しないもんね!じゃ、いつも通りのルートでネズミちゃんたちに運ばせてあげてね。あ、中身は伝えちゃダメだよ。あいつらバカだから。」
「はい。承知しました。」
「じゃ、切るね。ちょっとワクワクしてきたから、私観覧車でも乗ってくるよ!」
アルテサーノはまるで子供のようにはしゃぐと、背伸びしてポルシェのエンジンをかけた。
「あー楽しみ!今度は私がプレイヤーなんだもん!よーし、最後の大仕事頑張るぞー!」
FBI副長官による重大犯罪とロス・ビソンテスとCLAWの抗争から半年後……
アニマル市警は事件の英雄であるFBIのエイヴァ・バットリー・キャンベル上級捜査官によってもたらされた情報から、ロス・ビソンテスが街に違法流通させていた幽霊の銃<ゴースト・ガン>をアニマルシティから完全駆逐するべく、複数のアニマル市警スワットチームを統合して作られた部隊であるタスクフォース・アースソングを設立し、違法輸送や取引現場に介入して検挙を行っていた。
このチームでリーダーに選ばれたのは数々の事件を解決した功績を称えられ、定年退職した先代に代わって50チームのリーダーに昇進したグレイシー・ホワイト一等巡査部長であり、補佐としてかつてイブキ・シバミネと共に活躍し、FBI副長官による陰謀であったゴースト・ガン事件で唯一原隊復帰できた30チームの現リーダーであるオーダ・アーキンソン一等巡査部長が選ばれた。
更にはバックアップの為の狙撃班としてアニマル市警の中で最も狙撃に秀でている60チームが選ばれた。
彼女らはエヴァの情報を使用してロス・クルティードが使用している輸送ルートをあらかじめ把握して容疑者を逮捕、徹底的な尋問によって得られた情報を使って虱潰しにゴースト・ガンの流通を止めていった。
そして二人が率いるチームはベル421ヘリに乗って、ロス・クルティードがメキシコとの国境付近で行われようとしていたゴースト・ガンの取引現場へと向かっていた。
「おい、グレイシー。お前今度は二等巡査部長に昇進するんだって?」
「ああ。今回の事件でゴースト・ガン撲滅に多大なる貢献をしたからって上から言われたよ。」
「昇進ってことは新しい覆面が配備されるってことじゃないか。どんな車にするんだよ。」
「ああ、色々悩んだんだけど、日産・マキシマを選んだよ。今まで使ってたV37型スカイラインと顔が似てるし、何より使い勝手とスピードを両立してるところが気に入ったんだ。納車の日が楽しみで仕方ないね。アン公に自慢してやるんだ。ただあいつは絶対に運転席に乗せないけどな!」
「おお、マキシマか!めちゃくちゃ良い車じゃないか。俺は昇進したらスバル・WRX STIのファイナルエディションに乗りたいな。あの青色にワンポイントで入れられた赤色が好きなんだよ。」
「この仕事を片付ければお前も昇進できるはずさ。好きなようにぶっ飛ばせ。」
「だな。」
二人は拳をぶつけると、ガイズリー・スーパーデューティのプレスチェックを行った。
ベル421の視界から数キロ先にポツンと小さな車列が見えてくる。
先頭で荷台に帆のついたトヨタ・ハイラックスが走っており、後ろには護衛なのかマシンガンを積んだ旧式のピックアップトラックが三台ほど走っている。
「連中、今日はやけに数が少ないな。」
「それだけ俺たちが奴らを追い詰めたって証拠だよ。もはや細々とやる以外には無いのさ。」
「ああ、だが何か嫌な予感がする…皆注意してかかってくれ。60チーム、今から攻撃に入る。バックアップを頼むぞ。」
グレイシーが無線機にそう話すと、遠くで並走しているヘリに乗ったオライオンがサムズアップした。
すると、クルティードの武器密輸団はグレイシーたちの存在に気付いたのか二台の上に設けられたM240機関銃から七・六二ミリ弾を発射していく。
「クソ、奴ら撃ってきやがったぞ。」
「オライオン、あの固定された機関銃を破壊してくれ。」
無線通信を聞いたオライオンは前もって武器庫から取り出していたバレット・M82A1対物狙撃ライフルを取り出すと、ヘリが揺れ風が邪魔をする中で息を吸って吐いてを繰り返し、落ち着いてトリガーを引いた。
轟音の銃声と共に放たれた十二・七×九九ミリ弾はM240機関銃を機関銃種諸共貫き、クルティードの一人は腕が爆散するとそのまま動かなくなった。
「よし、対空砲を潰れたぁっ!全くいい腕だぜオライオン!四百メートル先の標的だってのに!」
「このまま連中の車列と並走して攻撃を仕掛ける!くれぐれも流れ弾には注意しろ。この作戦が終われば昇進が待ってるぞ!」
グレイシーがヘリのパイロットに近づくように指示をすると、そのまま一気に距離を詰めてスーパーデューティライフルを構えながら近づいていく。
すると、運転席からクルティードの構成員がケダール短機関銃をブラインドショットで撃ってきたため、ライフルでの制圧を開始する。
複数の鍛え上げられたエリートが放った弾丸はあっという間にケダールの射手を蜂の巣にしてしまうと、更に距離を詰めていく。
「おい見ろ…ありゃあ、RPGだ!おい、回避しろ、回避だ!」オーダが大声で叫ぶと同時にRPGは発射されると、パイロットは勢いよく反応して何とかニアミスで着弾を回避する。
「今のは危なかった!危うく仇撃ちを終えられずに死ぬとこだったぜ。野郎ども、とっととあいつを止めるんだ!」
ライフルを撃ちまくりながらピックアップトラックを穴だらけにすると、運転手が銃撃によって倒れたのか急激にスピードが弱まった。
そしてその弱まったピックアップを守るためなのか、他の車も止まって中からクルティードの構成員が銃を構え始める。
グレイシーはそのまま降下を指示して少し距離を取ってからヘリから降りると、砂塵の中で十人を二分割の隊列を組みながら移動していく。
「こちら50D。連中への襲撃を開始する。60チームはヤバくなった時の為に距離を取って援護を頼むぞ。」
「60D了解。砂塵がキツくなってきたからサーマルに切り替える。」
「50D、こちら30D。部下全員に標的を狙わせてる。合図をくれたら攻撃を仕掛ける。連中はRPGと対空砲以外は対した装備を持ってないな。どれもこれもコピー品ばっかだ。」
「ああ、30D。良く見えてる。私たちも狙ってる。少し待ってくれ。銃声が聞こえたら一斉に撃て。」
グレイシーは砂塵の中で落ち着きながらゆっくりとライフルを構えると、標的の一人の頭に照準を当てて冷静に引き金を引いた。
そして後から続くように複数個所から五・五六ミリ弾の乾いた銃声が響くと、クルティードの構成員は全員額を撃たれて動かなくなった。
「よし、とりあえず制圧完了だ。後はゴーストガンを押収するだけで済む。各隊前進しろ。不意打ちに注意するんだ。」
タスクフォース・アースソングのメンバーたちは周りを取り囲むように動いてやがて包囲網を作り上げると、そのまま生存者がいないかどうかをゆっくりと確かめながら近づいていく。
各隊がゆっくりとピックアップのドアを開けていくが、中には死体だけが残っていた。
「ふぅ……各隊、こちら50D。先頭のピックアップは完全に沈黙。30D、どうだ?」
「こっちも全員死んでる。心配はいらねえよ。」
「先頭のピックアップの荷台を確認する。60D、サーマルで誰かいないか確認できるか?不意打ちで死ぬのはごめんだからな。」
「熱反応はない。おそらく沈黙していると考えていいだろう。」
「了解。荷台の中を確認する。カバーを頼む。」
グレイシーはライフルを構えながらピックアップトラックの荷台に登って帆を潜り、シュアファイアのライトを当てながら中を探るが、何故かそこにゴースト・ガンは何一つとして残っていなかった。
「がら空き……?おかしいぞ。ここにはゴースト・ガンはない。」
「50Dそれは本当か?クソ、ハメられたかもしれないな。他に何か置いてないか?」
「リュックのようなものが見える…中身を確認する。」
グレイシーは慎重に中身を確認すると、そこには円柱型の大きな重厚感のある深緑色の鉄塊が鎮座していた。
「これはなんだ…?金属製の鍋のような…おいおいおい、待て、なんだこれは!?」
グレイシーの瞳にはまさかの物が映っていた。それは放射性物質を表すハザードマークである。
そして次の瞬間、小さなカチッという音が聞こえるとグレイシーは大焦りで走り始める。
「これは核爆弾だーーーーーーーーーーーーーーーーっ!全員後退するんだーーーーーーーーーーーーーーっ!逃げろ、逃げる──」
本当に一瞬の出来事であった。次の瞬間、グレイシーの体を無慈悲にも三千度近い熱が包んでいった。
そして周りにいたスワット隊員たちもまたその太陽のような熱に包まれていった。
彼らの体は死を認識する暇も無く一瞬の内に炭化して地球上から消滅すると、あたりには焼け焦げた〝影〟だけが残った。爆発したそれは半径三百メートルを焼き尽くす本来は建築物等を破壊するために作られた米軍の旧式の超小型核爆弾〝SADM〟であった。
そして黒い小規模なキノコ雲が砂漠の内側で咲き誇った。
次の瞬間少し離れた距離にいた60チームの乗るベル421ヘリの電子系は全てショートすると、姿勢を崩してスピンし始める。
「クソ、メーデーメーデー聞こえるか!ヘリが墜落してる、クソ制御できない!ベル421ダウン、ベル421ダウン!」
「ライガー、振り落とされるんじゃないっ……!」
「隊長…隊長…!隊長ーーーーっ!」
オライオンは姿勢を崩した機体から落ちそうになっていたライガーを助けようとするが、一歩叶わずそのままライガーは先に吹き飛ばされていった。
ベル421ヘリは地面へと激突すると、オライオンとその仲間たちはその衝撃を受けて視界がブラックアウトした。
そして数十分後に煤だらけのオライオンが咳き込みながら目を覚ましてあたりを見渡すと、そこには死体の山があった。
先ほどまで元気にしていたライガーは地面に激突し原型を留めていない形で即死。タイゴンはヘリに挟まって腕が潰れて失血死しており、レオポンは頭がまるでスイカ割りでもされたかのように綺麗に割れていた。レオンは全身挫傷しており、パイロットに至っては腕しか残っていなかった。
「クソ、クソ、私以外……全員……死んだのか……!なんてことだ……っ!グレイシーやオーダも……」
そしてあたりを見渡すオライオンも体の変化を感じていた。それは先ほどの落下の衝撃で腰の一部にダメージが入ったことで神経系がやられて体の半分が動かなくなっていたのだ。
恐怖心でパニックになりそうな心を四・四・八呼吸法で止めながら、何とか動く右手で何度も何度もPTTスイッチを押すが、全く反応がない。
「おい、おい、頼む、誰か、誰か応援を寄越してくれ!頼む、私を早くここから出してくれ!みんな、死んでるんだ。私の目の前で!動けないんだ、動けないんだ──」
オライオンは先ほどまで元気に生きていた仲間の損壊された遺体に囲まれ、半身麻痺の状態でパニックになりながら、ただひたすらに動けないと叫ぶことしかできなかった。
だが、先ほどの核爆発で電波は遮断されどれだけ無線機に叫んでも応答はない。
そして助けが来るまでの間に彼女の体は小規模なキノコ雲による放射能によって蝕まれたのだった……




