魔法学園での生活が始まります 2
次の日の朝。
「…変じゃないかな?」
室内の姿見鏡の前で制服に袖を通した私は無駄にクルクル回っている。
昨日はうっかり寝落ちしてしまい、気がついたのは夜中の3時頃だった。朝までコースにならなくて本当によかったよ…。お腹は空いていたけどそんな時間にカフェがあいているはずもなく。仕方がないのでシャワーを浴びて再び寝た。もちろん今度は目覚ましをかけて。
そうして無事に目が覚めて今に至る。部屋着で食事に行くのはよろしくないと思い、当校にはまだ早いけれど制服に着替えてみた。胸元にフリルがあしらわれた白いブラウスに、ワインレッドのふんわりとした膝下丈のスカートは、裾に金糸で刺繍が入っている。今まで触ったこともないような高級な生地にうっとりする反面、いくらするんだコレ…とも思った。ちなみにジャケットもスカートと同じワインレッドで袖口に金糸の刺繍があるのだが、それほど寒くない為今は着ていない。
「…よし、行くか!お腹ペコペコ!」
村にいた時と同じように髪をポニーテールにまとめ上げカフェに向かった。想像以上に人がいない…
この学園の寮には全ての生徒の部屋が設けられているが、使用するかは個人の自由らしい。だから寮で生活しない生徒も多いとは、聞いてはいたけれど…。
まいっか。無駄に緊張しなくて済むし。
朝食にパンとスープとサラダ、ヨーグルトをいただいた。どれも絶品だった。
一度自分の部屋に戻り、時間に合わせて荷物を持って部屋を出る。グリモワールさんに朝は担任となるヴァン=ダンピエール先生を尋ねるように言われた。この学園どうやら職員室というものがなく、教員はそれぞれ部屋を与えられているらしい。お目当ての部屋が遠いったらありゃしない。
やっと着いたのでとりあえずノックした。
「失礼します。今日から先生のクラスに編入させていただく、トゥシェ=ルルーです。」
ガチャリとドアが開くと長身の男性が姿を現した。日本人を彷彿させる黒髪にエメラルドのような緑色の瞳、黒縁メガネがよく似合う。
「おはようございますトゥシェ=ルルーさん。学園長から話は聞いています。僕はヴァン=ダンピエール、貴女の担任となりました、よろしくお願いします。」
言ってることは至極真っ当なんだけど、なんかカタイな、この人。
「早速ですが、教室まで案内しますのでついてきてください。」
「ハイッ。」
うわぁとうとうだ。平民って私以外いるのかな、やっぱり貴族の御子息や御令嬢ばっかりなのかな…なんかめちゃくちゃ緊張してきた、気を紛らそうなんか楽しいこと考えよう。
…ここって魔法学園よね、めちゃくちゃファンタジーな世界。もしかして、悪役令嬢とかもいたりする?どこかで婚約破棄だーとかやってたりする?なにそれめちゃくちゃ楽しいじゃん、関われなくてもいいから端の方で拝ませて欲しい!万が一関わる機会があったらどうしよう。でもその場合私のポジション何なら上手く収まるかな。
田舎から来た平民の娘、珍しい魔法が使える……なんかヒロインにありそうな設定だな。いやーでも自分がヒロインとかないない。だって、ヒロインって大体可憐なイメージだもん。自分対極すぎて。それに前世では恋人はおろか、友達すらろくにいなかった元コミュ障の私に男が言い寄ってくるとは思えない。…自分で言ってて虚しくなってきたな。
「着きましたよ。」
はうっ。妄想膨らませてるうちに着いちゃった。
「では、僕は先に教室に入りますので、呼んだら入ってくるように。」
「ハイッ!」
本当の本当にいよいよだ。教室の中からは多くの人の話し声が聞こえてくる。高鳴る鼓動を感じつつ呼吸を整えた。
「…ーでは、入ってきてください。」