フルール様の屋敷でお茶会です 3
フルール様とスクレさんに案内され屋敷の廊下を進んでいく。慣れない靴だからどうしても歩くペースが遅くなってしまうけど、2人とも文句ひとつ言わずに歩幅を合わせてくれた。廊下が分岐している場所で立ち止まり、フルール様がくるりと私の方を向く。
「私は、そろそろ来られるオリヴィア様達のお出迎えがありますので、トゥシェさんはスクレと共に先に会場で待っていてくださいますか?」
「お出迎えって、私いない方が良いとかですか?」
「いいえ。でもその靴で歩く距離は、少ない方が負担がかからないと思いますので…。」
おっしゃる通りだわ。フルール様の言葉を受け入れて、私はスクレさんと歩き始めた。少し進んでから外に繋がるドアが開かれるすると目の前に、手入れされた草花に彩られた広大な庭園が現れた。
これか!トリオがテンション爆上げで話してた庭園ってのは!
「お気に召しましたか?本日のお茶会は庭園中央に位置するガゼボで行いますので、庭園の通路を進んでいきますね。」
私のウキウキが伝わったのか、スクレさんも嬉しそうに微笑んでくれた。通路をゆっくり歩いている為、ガゼボに着くまでの庭園の景色を堪能できたのははラッキーだと思う。形を揃えられた通路横に並ぶ低木、均等に配置された小ぶりな木々。進んでいくと色とりどりの花が増えてきて、さらに進むと草花のアーチ。アーチをくぐり、トンネルを抜けた先に白い大きなガゼボが見えた。
「御伽噺の世界みたい…。」
「そう言っていただき光栄でございます。後で是非、お嬢様にも伝えてあげてくださいね。」
スクレさんに促され、用意してもらった席に座ってフルール様達を待つ。その間スクレさんは、食器などの最終確認をしたり、ガゼボに控えていた使用人と話をしたりしていた。
しばらく経って、トンネル方面から楽しそうな話し声が聞こえて来た。トンネル出口から声の主達の姿が見えたので、立ち上がりガゼボから彼女達の方へ歩いて行く。
「皆さんこんにちは!先にお邪魔してます!」
「トゥシェさんご機嫌よう!お召しのドレスとってもとってもお似合いです!」
「ピンクを基調に優しく愛らしくまとめられていて、トゥシェさんの新たな一面を見た気がします!」
「本当に…さすがフルール様、センスが私達より飛び抜けていらっしゃいます!」
「私はドレスや装飾品と、彼女を美しく仕立てるスタッフを集めただけです。この美しさはトゥシェ自身の輝きですわ!」
会って早々、ドレス姿をトリオに褒めちぎられて照れ臭いやらこそばゆいやら。でも嬉しい。
トリオのドレス姿を見るのは2回目だけど、3人とも前のお茶会とは違ったコーディネートで様になっていた、当たり前か。
それぞれ席に案内され、円テーブルに均等に間隔を空けて着席する。それとほぼ同時に、スクレさんを中心としたフルール様の屋敷の使用人が紅茶を運んできた。凄い、タイミングバッチリ。流石は公爵家の使用人といったところか。
出された紅茶は一般的なものより赤みがかっていて、花びらが浮かぶお洒落なもの。良い香りがする。
「…薔薇の香り?」
「正解です。今お出しした紅茶は、屋敷の薔薇園で咲いた薔薇を用いたものになりますわ。」
うわぁなにそれ貴族っぽい…当たり前か。いただきますと呟いて一口含む。華やかな香りがふわっと広がるとともにすっきりとした味わいがした。ローズティー、前世込みで初めて飲んだけど美味しいな。
そこから自然と、会話の話題は薔薇園やこの庭園の事になった。モーヴェ公爵家の血筋は昔から植物の魔法に長けた者が多く、この庭園にも一族の方々の魔法が使われているらしい。でもフルール様が大切にしている薔薇園は、彼女が手掛けるようになってから魔法をほとんど使わずに管理しているらしい。
「私の魔力が弱いから…というのもありますが、私は植物を育てるのに魔法は必要ないと考えています。自ら運んだ水を与え、土を直に触り、適した肥料を考える。時に天候に左右される事もありますが、それらを全て踏まえた上で手入れを続けた草木が花や実をつけた時、何にも変え難い喜びを感じるのです。」
フルール様は驕る様子も嘆く様子も無く、それが当たり前といった表情でそう言った。なんだか彼女らしいな、と思う。薔薇園の話をする彼女はとても楽しそうで、彼女自身が艶やかな大輪の薔薇に見えた。時期的に今は咲いている品種は多くないけれど、後で案内してくれるとのこと、楽しみだな。




