午後の過ごし方リニューアルです 3
次の日も、その次の日も、オルロージュ先輩は宣言通りちゃんと実技部屋にやって来た。距離近いな〜って思う時もしばしばあるけど、それを除けばいたって真面目に魔法を教えてくれる。案外面倒見がいいのかも、とすら思い始めていた。
ただ今日は、今までだったらヴァン先生と補習をしていた曜日。先輩の絶対連行宣言の事もあるし、本来の午後の過ごし方を考えると補習は断らないといけないよね。午前最後の授業がヴァン先生の授業だから、その後にでも言いに行かないと。
授業が終わり、いつもの流れでランチに誘ってくれたフルール様に先に行くようにお願いして、小走りで教室から出たばかりの先生を追いかけた。
「ヴァン先生ーっ!ちょっと良いですか?」
「?どうかしましたか。授業でわからない所があったのなら、この後の補習で対応しますが…。」
「その補習についてなんですけど…。実は、前の補習の翌日から午後は魔法の実技に取り組めるようになったんです。なので、午後の時間を使う今までみたいな形の補習が出来なくなりました。」
先生は相変わらず無表情だけど、珍しくすぐに返事をしてくれない。一回他所を見て、眼鏡をクイッとしてから再度こちらを向いた。
「それは、アルブレ君が学園に来るようになったからですか?」
「はい。前に私が絡まれた〜って騒いでた人がその人だったんですけど、私以外で唯一時の魔法が使えるって先輩だったみたいで。色々あって、ちゃんと魔法教えてもらえる事になったんです。数日様子見てから先生に伝えようと思ってたらこんなギリギリになっちゃいました。…今日も私の為に準備して時間作ってくださったのに、本当にすいません。」
先輩の事把握してるんだ、彼が学校来るようになった事が異例だからなのかな。
本来ならもっと早く言うべきだった事はわかってる。でも、あのちゃらんぽらんな先輩が不登校再発する可能性があったし、何より私自身、補習の時間が無くなるのが嫌だったの。
所々に緑を感じる澄んだ空気のあの部屋で、先生と2人。勉強を教えてもらうのは勿論だけど、その後お茶する時間が好きだった。どうでも良いかも知れない私の雑談を、いっぱいいっぱいちゃんと聞いてくれる先生。表情はかたいままだけど、包み込まれるような優しさを感じていたから。
謝罪の言葉と共に頭を下げる。先生はまた、返答に時間がかかっているみたい。それならそうと早く言えーって怒られる?そうなっても仕方がないよね。
「ルルーさんはこの1か月でかなり学力が向上しました。補習の効果も考えられますが、1番の要因はあなた自身の努力です。教えている僕の立場から見て、今のあなたは補習無しでも問題なく授業に着いていけると思いますよ。」
「そう…なんですか?」
「はい。なので補習そのものを終了するのは問題無いと、僕は思っています。ただ…」
「ただ?」
先生またも黙るの巻。今日の先生はよくためるなぁ。
「補習が無くなると不安であると言うのなら、放課後に時間を作りましょう。頻度や時間は減ってしまうかも知れませんが。」
「本当ですか!?」
予想外に大きな声が出てしまった。先生びっくりしてるし通行人の視線集まってるし。
乾いた笑いで誤魔化して、ボリューム落として改めて先生に向かって口を開いた。
「是非お願いしたいです!時間短くなるならその分短時間で集中してやります。むしろご迷惑じゃ無いですか?先生放課後やる事あるんじゃ…。」
「その辺りは僕自身で調整するので問題ありません。では早速日程を決めましょう。今週は難しいので来週以降で良いですか?」
「全然大丈夫です!」
ヴァン先生優しすぎん?先生は迷惑じゃないって言ってくださってるけど、本当に大丈夫なのかな。無理にとは言わないんだけどな。そうだ、この事ってグリモワールさんにも伝えとくべきだよね。彼が補習の調整とかして色々くれたんだから。
ヴァン先生と解散した後その足で学園長室にその事を伝えに行った。「オルロージュ君が登校するようになったのはすぐ耳に入ったからね、そうなると思ってたよ」ってあっさり言われてしまった。話が早くて助かったけど。
ただ残念な事に、時の流れは無常です。学園長室からカフェに向かって歩いている途中に昼休みの終了を告げる鐘が鳴ってしまった。お昼ご飯…食べ損ねたぁぁぁあ!!
この日の午後、時の魔法の実技部屋にはトゥシェ=ルルーのお腹の音と、それに爆笑するオルロージュ先輩の声が響き渡ったのでしたー…。




