Episode 15:「The Decision "夢への決意"」
日中でも涼しい風の吹くことが多くなり、校庭の木々も紅葉したかと思っていたら、もう枯葉となって風と共に消えていくような季節となっていた。
過日、交通事故で大きな怪我を負った愛莉も、若さあってか着々と回復の様子を見せていた。 しかし、まだ松葉杖をつきながらの登校で、手足には包帯が巻き付けられており、その痛々しい様子に、隆太たちも哀れに思いつつも、彼女を心身ともに支えている日々であった。
「水泳…、、、グスン…。。。 私はもう…、泳げないのかぁ…」
水泳部の練習中、プールサイドのベンチで隆太たちの練習を見ている愛莉は、時々そんな弱音を吐いてしまうのであった。
時に、大粒の涙を流して泣くこともあり、見かねたあきらが彼女に駆け寄り、その都度宥める。
「愛莉…、もう、泣くなよ。。。 十分、気持ちわかるからさ…。 俺、愛莉が泳げるまでに回復したら、またコーチしてやるって言ってるじゃん!! それが何年後になったって構わないさ!! もし愛莉がその時になっても、オリンピック選手目指したいって言うんだったら、俺、、、愛莉と一緒に泳いでやるよ!!」
「うわぁん…、、、あきらぁ…」
二人の仲を見て、友加里はつい、「ひゅーひゅー♪ おアツいねぇ~お二人さ~ん♪」…と、茶々を入れたくなってしまったが、そんなことをしたら愛莉の傷口に塩を塗るようなものだ。 ここは雰囲気に同調して、愛莉の沈んだ気持ちを支えてあげなければならない。 隆太だってその思いは一緒で、水泳仲間として一緒に青春してきた愛莉が、同じプールにいないことを、淋しく感じているのであった…。
隆太たちは、練習の合間、愛莉のもとへ集まり、雑談しながら、大切な話もしていた。
あきら「なぁ愛莉? お前、部活どうするつもりなんだ? 先生は、文化部への異動を勧めてきたけれど、愛莉はそれが嫌なんだって??」
愛莉「うん…。。。 だって、、、みんなのいない部活だなんて、そんなのやってて何が楽しいって言うのよ…。 あたしは、みんなと一緒だったから、下手でも水泳頑張ろうって思えたし、練習辛くても耐えて来れた。 この学校って所詮は田舎の学校だから、他の部活ったってほとんど選べないし、自分に合わないことを無理にやろうとしたって、、、そんなの…」
…友加里が、妙に愛莉の言葉に納得を示すかのように…
「そうだよねー。 この学校、吹奏楽部とか、音楽を扱う部活ってないもんね。。。 唯一あるのは合唱部くらいだけど、ウチも愛莉も、歌う側の人間じゃないもんね…。」
愛莉「そう。。。 だから、部活変えるのは嫌だって、親にも先生にも散々話したよ…。 最初は、身体の都合で泳げないのに水泳部居たって意味ないだろ!!って言われたけど、あたし、、、たとえ水遊びしてる子供同然だって笑われてもいいから、スポーツは水泳やりたいんだ…。 友加里の言う通り、他に適した部活があればそっち行ったかもしれないけど、あたしの意思に反して部活するのも良くないってことで、渋々だけど、水泳部にいることを許されたんだ…。」
隆太「愛莉…。 僕、愛莉の気持ち思うと、愛莉のぶんも、引退まで頑張らなきゃ!!って思うよ!! 僕達、3年生の1学期を最後に部活引退じゃん。 そうなるまであと1年もないんだよね。 僕は正直、中学出たら水泳続けるかどうか迷ってるけれど、何とか中学校にいるうちに、大会で一つでも多くの実績作りたいから、全力で頑張ろうって思ってる。」
愛莉は、隣に座った隆太の顔を涙目で見つめながら…
「うん。ありがとう。」
…ちなみに、彼らの先輩だった杏奈は既に部活を引退しており、今は高校受験に向けて勉強に大忙しである。
だが、ある日のこと、そんな杏奈が水泳部の練習に顔を出した。 愛莉が事故に遭ったことは当然知っている。そして自分はもう、水泳部の人間ではないことも…。 だが、愛莉が可愛い後輩であることは変わっていない。
いつもプールサイドにいる愛莉を見て、不憫に思った杏奈は、彼女に慰めと励ましの言葉を掛けたかったのだ。
「織畑…、、、水泳でオリンピック出るの、夢で終わらせるなよ!! もし織畑が、ガッツリ強く決心しての目標だったんならな!! 現実のオリンピックでも、身体にハンデ抱えてる人でも健常者に負けない泳ぎ見せてるじゃん!! 織畑、あんただって、努力してあきらめなければ道は拓かれるぜ!! もちろん、自分の身の丈に合った、ふさわしい目標を求めていくってことは大事だから、無理を押してまで…ってわけでもないけどさ。」
…愛莉は少し考え込んで俯いた。 それを聞いていた友加里たちも一様に…。
なぜかというと、もうすぐ、成績や進路について、家庭と学校とで話し合いをする「三者面談」が控えているためだ。 自分の進路について明確な目標や見立てを持っているなら、そこそこ話をしやすいところだが、そうであるのは今のところ友加里のみ。 あきらも隆太も、漠然とした目標こそ持ってはいるものの、どんな高校へ進学し、そこで何を学ぶのか、さらにそれを、将来の自分へどう活かすのか…。
自分という現実に対し、理想があまりに高ければ嘲笑されてしまうだろう…。 ましてや、自分の成績の低さを挙げられてしまえば、どんな状況になるかは明確だった。
杏奈「ま、アタシは進む高校決めてあるんだ。 将来は何になるかはねぇ…、、、実は、みんなには教えてないんだよ…。あははwww いや、だってね、いつか同窓会とかがあった時、杏奈ってすげぇ仕事してるなぁ~!!って言われたいって思ってるんだよ♪ だから、今はごめん、ナイショにさせてな!」
隆太「杏奈さん…、高校は県外ですか?」
「うん…、そのつもり…。 だから卒業したら、寮生活して暮らすことになってる…。 でも、みんなとは友達だからね!! そこだけは忘れないでいたいからね!! 卒業しても忘れないぜ!!」
…少し、緊迫した空気が辺りを包んだが、杏奈は塾へ行く時間になったとして、この場を去った。
「じゃ、みんな、しっかりやれよっ!!」
…それが、杏奈が水泳部で語った最後の言葉となった。
ちなみに、部長であった杏奈の後任には、女子でそれなりの実力、牽引力のある、水島愛衣という部員が就いた。 彼女もまた杏奈のような男勝りな性格だったが、隆太たちとはあまり話はせず、厳しい性格をしていることもあって積極的な彼女との会話は生まれにくかった。
「進路…かぁ…。 そろそろ、具体的に決めなきゃならないんだろうなぁ…」
ある日、隆太は一人で電車に乗っていた。 向かうは、涼子と一緒に水泳をする市民プール。 この日隆太は、進路について話がしたいと切り出して、練習の後に涼子と一緒に、ファミリーレストランへ出掛けた。 いつもならデート気分でウキウキ…なのだが、今日はそんなテンションはほとんどなく、神妙な面持ちで、涼子に将来、自分が彼女の家に婿入りして働きたい…と話した。
「…んー、、、あの、隆太くん…?? その…、、、仮に、うちに来るってことになっても、別に資格とか何もいらないんだけど…ww?」
「…でっ、、、でも、、、旅館の経営とかって、商業的なノウハウがないとやっていけないでしょ?? 僕、涼子さんと一緒に旅館を切り盛りする上で、必要になる資格とか知識とかを身に着けたいんです!! …でも、どんなことが必要で、どんな学校ならそれが勉強できるか、わからないんです…」
…涼子は少し考え込み…、、、
「…って言うか、隆太くん…。 そんなに遠い未来のことを今から悩まないでよ♪ 以前も言ったでしょう? 私は基本、仕事の性格上、隆太くんに内緒で彼氏とか作れないって。 それで、もし隆太くんが成人した時、私で良ければお嫁にどうぞ…って。 だから隆太くんは、自分で一番やりたいことに対する勉強すればいいし、進みたい道を歩いて行って欲しいの。 もちろん、私は隆太くんを応援するよ!! そうでなきゃ隆太くんを、きみが成人するまで私が私のために縛っていなきゃならなくなっちゃうもの…。 そんなの申し訳なさすぎるよ。」
「だっ…、、、だけど、僕は、、、どうせ友加里とは進路バラバラだし、高校行ったらもう会えなくなる。。。 友加里だって、僕とはあえて結ばれなくてもいいなんて言ってるし…。」
涼子は、ホットコーヒーを少し口に含み、隆太の胸の動悸が収まるタイミングを見計らって、こう話した。
「隆太くん…。 これは私からのお願い!! 高校は、私に構わないで決めてほしいの。 隆太くんだって、色々と叶えたい夢はあるはずでしょう? 現に、友加里ちゃんだって、自分の叶えたい夢のためにって、夏休み返上で音楽の勉強してたし、その間、隆太くんっていう大切な恋人さえも遠ざけていたんだよ? 隆太くんだって、ひたすら私との将来の生活考えてるみたいだけど、自分が本当に叶えたい夢って、本当にそういうことだったの? 私はそれじゃ、きみから夢を奪ってまで結婚したいと思ってるみたいで…。」
「…そそ、、、そんなことありませんよ…!!」
「ねぇ、隆太くん? だったら質問しちゃうけど、もし、きみが私と二十歳前後で結婚したとすれば、きみは人生で経験するべきたくさんの楽しみや喜びを、ポロポロとこぼして歩いちゃうかもしれないんだよ。 私は、この通りもう旅館の仕事に徹するのみだからいいんだけど…。 隆太くんは、これからも沢山の人と知り合って、高校や大学で色々なことを勉強して、自分が一番叶えたいと思っていた目標を、実現してもらいたいもの。 そこんとこは、残念ながら歳の差がこれだけあるが故に、気持ちがかみ合わないってとこだと思うけどさ…。」
…隆太は、不安そうな表情をしつつ、頭の中で、涼子の言うことももっともだと理解していた。
「つまり、、、隆太くんには、自分の夢を叶えることを、私との結婚の条件にさせてもらうよ♪」
「ええっ…!?!?」
「…少なくともきみには、一つでも叶えるべき夢を叶えてから私のとこに来てほしいなぁ。 だってそうじゃなきゃ、将来本格的にお付き合いしても、学生時代に何の目標もなかったなぁ~とか、全然夢も目標も叶えられなかったなぁ~…なんて、シケた話しか出来ないカップルになっちゃうよ…??」
…隆太は、息を呑んでこの話を心に刻んだ。
「涼子さん…。ありがとう!! ぼ、、、僕、高校や大学でも、水泳を続けて、一流の選手になることを夢見てました!! 僕、ぜひ、その夢を叶えて、涼子さんにプロポーズしたいと思います!! …それに、友達の愛莉も、事故で水泳ができなくなっちゃったんで、彼女のぶんも僕やあきらが泳いでやるって、ついこの間、誓い合ったんです!!」
…涼子は、優しく笑みを浮かべて、隆太にデザートのプリンを差し出した。
「そうだね。 愛莉ちゃんは、、、水泳選手になる夢があったのに、それが断たれちゃったんだものね…。 だったらなおさらだよ!! 隆太くんは小さい頃から水泳続けて来て、現に色々な大会で賞を貰ったり、将来を嘱望されていたりしてるんでしょう!? それじゃあ、ここまで培ってきた才能と努力、しっかりと花開かせるのがきみにとっての一番の目標だね!!」
「はいっ…!!」
隆太は、少し思わぬ方向へと話が曲がったかのようにも感じたが、涼子の言うことはもっともだと思い、後日の三者面談では、自分の希望として、水泳に力を注いでいる学校への進学の意思を表明しようと考えた。
この日は、涼子と少しだけ街を歩いた。 恐る恐る涼子の手を繋ぎ、肌寒い街並みを、デート気分で歩いた。
「隆太くん…。 でも私は嬉しいかも…。」
「えっ…!? 何がですか?」
「うん…、だってみんな、夢のためにって、学校卒業したら遠くへ行っちゃうもの…。 仲良しだったきみ達だって、バラバラに離れちゃう…。 でも、隆太くんは、地元に残っていてくれるんでしょう? 私は、それだけでも心強いんだよ♪」
(突如、友加里たちの笑顔が脳裏を過る…)「そ…、、、そうですね…。。。 僕、地元に一人になっちゃいますね…」
「でも心配いらないよ。 実際に会える機会は減っちゃうだろうけど、友達として繋がっている以上、気持ちもずと通い合うって信じてる。 私だって、友加里ちゃんや愛莉ちゃん、あきらくんのメアドとか交換してるんだし、歳は違ってもみんな一緒の仲間だってこと、いつまでも忘れないでいられるからね♪」
「うっ…、、、うううっ…・・・・・・・・・・・、、、みんな、、、離れちゃう、、、」
涼子の手を握る力が強くなってしまう隆太。 瞳には、涙がいっぱいに溢れていた。
「ちょっ…www いたた…、、、手、痛いってwww 隆太くん!!」
「ああっ…、、、ご、ごめんなさい…!!」
…それから数日後、いよいよ、三者面談の時が訪れた。
友加里は既に進む学校を絞ってある。 しかし、学力も去ることながら、彼女の音楽的な実力で、その学校への入学が叶うか、また、叶ってもその後の学費や生活等をどうするか…。 友加里は大きな夢を持っている一方、大きな悩みもまた避けられないのであった。
「私は、夢のためだったら恋人でさえも遠ざける覚悟はできています!!」
…面談の席で、あろうことかそう豪語した友加里。 しかしそれは彼女の頑なな意思であることに間違いはない。 現段階では完全に進む道を決めたわけではなかったが、それでも、もう後戻りはできないという気持ちで、着々と進学する学校を選ぶことにしていた。
愛莉は、水泳選手を夢見ていたが、過日の事故で足の自由を失った。 完全に治る可能性はあるが、その時に水泳の道を歩めるか否かは疑問であった。 愛莉は、「Sweet Chocolate Garden♪」というバンドに参加しており、当人も音楽が大好きなので、高校は文化系の活動に力を注いでいる学校を選ぶことに主眼を置き、3年生の今頃には、受験する学校を決定させる方針であった。
あきらは、水泳の技術を活かして、将来は水泳のインストラクターになりたいと思っている。 そのため、インストラクターのライセンス修得を目標としつつ、体育系の学校を進学希望としていくつか候補を挙げた。 しかし、それらの学校へ入学するには、もう少し学力面での努力も必要だと判断された。 あきらは、それほど成績が悪い方ではないのだが、レベル的に高い学校を目指すことから、これからは部活と勉強の両立をいっそう頑張らなければならないといった話で面談は終わった。
そして隆太。
当初の気持ちでは、恋人(涼子)のために商業系の学校へ行って、宿泊業で活かせる資格や知識を得たい…と語ろうと思ったが、まさか親や先生の前でそんな赤裸々な話もできない。 それに先日、涼子と約束したばかりだ…。 「自分の夢を叶えることが結婚の条件」だと示されて、そのために水泳で名声を博する人物になることを…。
担任の倉石先生と、隆太の母親、それに隆太が教室で、学校生活での諸々から、成績、進路について語り合う。 隆太にしてみれば、途轍もなく緊張する時間である。 しかし、ここで自分の確固たる意志を示せなければ、涼子とのゴールインは、夢は夢でも”散る夢”となってしまうだろう。
覚悟を決めて、進学したい学校と、そこで学びたいことをしっかりと語った。
倉石先生「小野隆太くんは、素行も真面目で、人柄も明るいので、新しい学校へ進んでも順調に人間関係を構築して、自身の目標へも前向きに歩いていけるでしょう。 ただし一つだけ問題なのは、小野君が志望している学校は、県内でも有数の高倍率な難関校です。 現在の成績を維持できたとしても、あと1年弱の間に更なる成績向上が望まれます。」
…胸が詰まる思いで話を聞く隆太。 そして次の瞬間、思わぬ言葉が先生から飛び出した。
「小野君、あなたの目指す学校では、学力と同じくらいに、生徒一人ひとり、人としての個性を尊重されます。 あなたは何か、勉強や部活以外に情熱を注いでいる物事がありますか? 入学試験ではそれも大きく問われますよ。 勉強やスポーツができることは結構なことですが、それだけでは石頭な人間になってしまいますね。 小野君にとって、自分の心に抱くべき大切なものは何か。 それを明確に、胸を張って表現、説明できるようになることも、合格への絶対条件となります。」
「…!?!?…。。。 勉強や部活以外で、自分の心に抱くべき大切なもの…!?」
…真っ先に、友加里たちのような親友を思い浮かべたが、それは”個性”という意味とは少し違うようだ。
…となると、自分にとってのそれは、一体、何だと言えるだろうか…。。。
「ううっ…、、、…、…、…、 …何だろう…?? はっ…!! ひょっとして、涼子さんが言っていた、自分の大好きなこととか、叶えたい夢を大事にしろとかっていうのは、こういうことだったのか…!!!!」
…しかし、改めて思い返しても、その候補はいくつか挙がるが、自分の言葉でそれを、具体的に説明できるかと言われれば、再び頭を抱えてしまうしかなかった。
数日、隆太は自問自答を繰り返したが、結局、まともな答えは見いだせなかった。
隆太は、ひたすら”夢”や”目標”については考え続けたし、それをどうするかの決意を固めた。 だが、それに伴って持っているべき第三の財産”個性”が、自分には全くわからないのであった…。
月日が過ぎるごとに、隆太の焦りは募るばかり。 ある日の放課後、すっかり悄然とした隆太を見かけた友加里は、思い切って彼の悩みを聞き出すことにした。
「ほっといてよ!! どうせ僕なんて、、、ただのつまんない男子だっての!!!!」
「…な、、、なんだよそれぇ…!? ウチがせっかくあんたの悩み聞いてやろうってのになんだよなんだよ!!」
「うっさいなぁ!! 友加里みたいに、夢も個性も余ってる人間なんかに、僕の気持ちがわかってたまるかよぉ!!!!」
「なな…、、、なに? どったの隆太ぁ…??」
隆太は、夢や個性という意味で友加里に劣等感を抱いていた。 それだけに、友加里を今は、悔しい存在として見つめているのであった。
「待てよ隆太ぁ! 話してみろよ!! ウチとあんたの仲じゃ---」
「ドン!!!!」
…隆太は、駆け寄って来る友加里を、思わず突き飛ばしてしまった。
そして隆太は、何も言わず家に走って帰った。
「…隆太…?? 一体…?? ってか、あいつに悩みなんてあったの?? …だったら相談乗るって言ってるのに、、、んもうーーー!!!!隆太のバカバカバカーーーーーーー!!!!!! うわぁぁぁぁぁーーーん!!」
…すっかり日も暮れた放課後の校舎に、友加里の泣き声だけが響き渡った…。
隆太に邪険にされたのは、初めてだったかもしれない…。 その夜、友加里は夢中になって隆太のケータイに電話を入れたが、彼が電話に出ることはなかった。
それ以降もずっと、隆太は誰とも話さない。 友加里はこのことをあきらと愛莉に相談し、その結果、隆太をとあるパーティーに招待しようということになった。
友加里たちは、隆太に気づかれないよう、その招待状をこっそりと彼のカバンの中に忍ばせておいた。
隆太はそれに気づき、封筒の中のカードを読んだら、そこにはこう書かれていた。
~ Dear 隆太さま♪ クリスマスイブの夜、あなたさまを素晴らしいパーティーへご招待したく思います♪
12月24日 夕方6時 ○○多機能ホールにてあなたをお待ちしております。
なお当日は、平服でお越しいただいて結構ですが、隆太さまが一番好きな楽器を必ずひとつお持ちくださいま
すよう、お願い申し上げます。
それでは、イブの夜にあなたの訪れをお待ちしております♪ ~
隆太も、自分の気持ちの迷いを整理できないままだったが、その招待状に従って、雪の降る中会場へと足を踏み入れた…。
-つづく-




