犬井彩夏&猫理冬美vs御堂谷エル 3
私は何の為に、助けに来たのだろうか。意味がなかった。
御堂谷の言う通り私達は所詮レベル1。二人いたとしても1+1で2。だけどそれは違うらしい。1×1で1のまま。どんなに1が集まろうと、1のまま。2も3にも成りはしない。
9に敵う筈がなかったのだ……
私は、諦め目をスッと閉じた。
全てを受けとめ終わらせようと私は思った。
もう私が戦うことは無いだろう。もう戦いたくない……
高い雄叫びは、会場に響く。私には響かない。九つの頭をもつヒュドラは私達目掛けて襲いかかる。
「冬美、伏せて!!」
不意に聞こえた声に、目を見開き、反射的に体を沈めた。そこに見えたのは、ボロボロに成りながらも、前に飛び出す彩夏の姿があった。
「彩夏!!」
彩夏は、こちらを振り向くと何かを呟いた。うっすらとだったけどその言葉は聞こえた。だけど、聞きたくなかった。
「彩夏あああああぁぁぁぁぁぁ!!!」
彩夏は最後に、私に微笑みを向けて向こうを向いた。
叫ぶようにしてフォースを溜める彩夏。残り少ないはずの彩夏のフォースは、寧ろ本来彩夏が持つフォース量よりも、膨大な物だった。何処にそんな力があるのだろうか。
赤く燃えている炎のようなフォースの塊が彩夏を包み込む。
「使者覚醒・バーニングエンド!」
彩夏の周りからは火というにはあまりにも大きすぎる広大で強大な炎が燃えたぎる。
その身で彩夏はヒュドラに飛び込む。
二対が衝突した後は呆気なかった。
激しい衝突音が会場に響き、煙が立ち込めるだけ。
そして、煙がはれると、1つの人影が地面に倒れ混んでいた。全身毒まみれで、見るに耐えない光景だった。毒で覆われている人物は、端から見ると、誰か分からないほど無惨。ただ、ここは会場の中ゆえに検討はつく。
ヒュドラは全身に炎が充満し苦しそうに、もがいている。時間が経つにつれ、動きが無くなっていき、蒸発するように、毒が消滅していきヒュドラは昇天する。
「驚いた。ヒュドラが殺られるとはね。凄いもんだ」
御堂谷らしくもないのだろうか、苦笑を浮かべていた。
けれど、私はそれどころではない。
「さい……か……?」
倒れている彩夏に恐る恐る近寄り私は、膝まづく。悔しさのあまり私は、地面を叩いていた。気が気ではないのだ。
「何で、私なんかの為に……?」
自然と私の目からは涙が、こぼれ落ちていた。
辛い。何も出来ない私が憎い。何もしなかった私が憎い。自分の弱さを認められなかった自分が憎い。
それなのに、そんな私を助けてくれた彩夏が……
私は、彩夏の体に手を伸ばした。
「おっと。君君。触れない方が良いよ。毒が移っちゃうから。」
御堂谷は直ぐに表情をいつも通りに戻し、一度クビを鳴らす。
「さてと、後は一人だね。良いことを教えてあげるよ。一ヶ所から毒が全身に回るのは10分だけど。全身だと5分だよ。まずいね。だから、後五分以内で片付けてあげるよ。楽にさせてあげる」
恐ろしくなるような笑いを浮かべる。その言葉は、私にとっては挑発にしか聞こえない。
「ふざ……けんな……」
「ん?」
涙が出て、声はうまく出せない。さっきから大きな声を出しすぎて掠れ気味な声音になっていたと思う。
自分と、御堂谷に怒りが込み上げている。
涙を腕でゴシゴシと拭い彩夏の方を見る。彩夏はもう動いていない。毒が始動しているみたいだ。
「なら……その五分でお前をぶっ潰してあげるのだ!!」
怒号をあげ私は御堂谷を睨みつける。1組ベンチは何やら騒いでいる見たいだけれど今は、ゴメン。そっちは振り向けないや。皆優しいから、彩夏と私のことを心配してくれているんでしょ?本当は、私の無様な姿は見たくないでしょ?
けれど、待ってて。この戦い、直ぐに決着をつけるから。
必ず、勝って彩夏の仇をとるから。
だからその時は……その時は……私をまた受け入れてほしいな。
一度喧嘩して出てきて皆、私を軽蔑したかもしれないけど。それでも、この結果次第で、私を許してくれますか?
必ず、コイツを、御堂谷さんを倒しますから。
そしたら、彩夏。私を褒めてくれますか?
絶対に諦めない彩夏をずっと見てきた私は彩夏に憧れていたことも話さないとな。
照れ臭いけれど。
でも、彩夏は笑ってくれるよね?
私、頑張るのだ……
「使者覚醒・ウォーターエンド!」
第21話 ~犬井彩夏&猫理冬美vs御堂谷エル 3~




