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神々の戯れ~ゴッドゲーム~   作者: 歌ポケ
第一章〜邂逅編〜

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不運から

人生ってのは失うときは一瞬って誰かが言っていたけど、まさか身をもってその言葉の本当の意味を知ることになるとは思わなかった。


小学生の頃からずっと野球一筋で、野球推薦で強豪校に進学してやっとの思いでレギュラーを勝ち取った。


最後の大会まであと数日、浮かれてなんていなかったし、漫画で読んだ「利き腕のほうの肩にはカバンをかけない」なんて知識を毎日忘れずにやるくらいには細心の注意を払っていた。


それなのに帰っている途中、道端の木が突然倒れてきて下敷きになるなんてついてないにも程がある。


「廻神大助(えがみだいすけ)君、辛い話になってしまうかもしれないけど…」


医者から長ったらしい説明をされた。


右腕の尺骨を骨折したそうで、俺が大会に出ることは厳しいらしい。


頭が真っ白になって泣こうにも泣けなかった。


俺よりも、隣で話を聞いていた両親のほうが泣いていたと思う。


家に帰って自室に戻る。


ベッドに飛び込みたかったが骨折したことを思い出して、ゆっくりと仰向けになって寝た。


十年以上もの時間を費やした青春のあっけない幕切れ。


途方もない悔しさや悲しさが襲い掛かってきた。


寮生活じゃないので、部のみんなに泣いてる姿を見せずに済む。


大声で泣いたら両親を悲しませてしまうかもしれないが、きっと許してくれるだろう。


自分の青春があっけなく終わる実感が湧いてきたと同時に、腕だけじゃなく心も折れた気がした。


一年生ではスタンドから応援、二年生ではベンチ入りするも基本は控え選手、三年生になってようやく掴んだ正真正銘最後のチャンス。


もちろんこの先も野球を続けることはできるが、夏の甲子園という夢の舞台への挑戦権が無くなるのは受け入れ難い事実だった。


涙が出そうになった瞬間、自分の中にある言葉が浮かんできた。


--やれることは全部やったのか?--


怪我して終わり?そんなことはない。


片手でならバットを振れるし、守備は駄目でも代打なら出られるかもしれない。


もし出れないにしても、皆のサポートもできる。


泣く暇なんかない。泣くのはやれることを全部やってからだ。


体を起こして部屋から出る。


「大助、大丈夫?どこ行くの?」


母が俺の姿を見て声をかけてきた。

さっきまで泣いていたのか、目が真っ赤だった。


「まだやれることがあるから、練習してくる。」

「え?ちょっと!」


十分な言葉ではないことは自覚はあったが、母を安心させるように言って外に出た。


胸の中はいろんな感情がごちゃ混ぜになっていた。


それでも、とにかく今はやれることをやる。


それしか頭になかった。


それ以外に、一度折れた自分の心を支えるものが見つからなかった。


無理しない程度に体を動かしてから部屋に戻り、一息つきながらスマホで検索をしてみた。


骨折してもヒットを打った選手、肩を脱臼しても出場して世界一になった選手。


自分にもできるかもしれないという、儚い希望を眺めていた。


一通り済ませてベッドで休んでいたら、スマホに大量の通知が来た。


「大丈夫か?大会出れんの?」

「怪我したって本当?」

「信じて待ってるから。」

「カルシウム摂れば治るべ」

「さっき聞いたんだけど怪我したの?大丈夫なら後で電話したい。」


部の仲間やらクラスメイトやら、近所の幼馴染の光から連絡が来ていた。


一つずつ返信する。


たくさんの人たちが自分を心配してくれていて、自分は恵まれていることを実感した。


だからこそ、俺はこんなところで諦めるわけにはいかない。


大会まで残りわずかだけど、最後の最後まで足掻いてやる。


そんなことを考えていたらいつの間にか眠ってしまっていた。


------------------


目が覚めると、ベッドで寝ていたはずなのに見たことのない空間にいた。


辺りは暗闇に包まれていて、明かりも無くひたすらに闇が広がってるようだった。


音もなく不気味な空間ではあるが、不思議と恐怖心は無かった。


「どこだ、ここ。」


まさかあの世?俺死んだのか?


「やっと気づきましたか。」


何もないはずの空間のどこからか、声が聞こえてきた。


「誰だ!?」


声の聞こえた方向に叫ぶと、目の前に光が広がり、光の中から巫女装束の同い年くらいの美しい少女が立っていた。


「初めまして、廻神大助(えがみだいすけ)。あなたに話があります。」


神々しさすら感じる少女が目の前に急に現れて、俺はひどく驚いた。


「い、いきなり現れてなんだよ!というか、ここどこ?天国?」


あまりにもいろいろなことが起こりすぎて、理解が追いつかなかった。


「そうなってしまうのも無理はないですね。一つずつ説明します。」


気が動転している俺に対して、少女は冷静に話し始めた。


「私の名前はカンナ、神です。まず、あなたは死んでなどいません。魂だけがこの場所に飛んできている状態です。体は私の力で保護してますから安心してください。」


神?こんな俺と同い年くらいの子が?頭がこんがらがったが、とりあえず聞けることは聞くことにした。


「す、すみません。保護してるから大丈夫って言ってましたけど、俺の体って今どんな状態なのです?」


動揺のせいで、変な敬語になってしまった。


「ふふ、そんな堅苦しくなくて大丈夫ですよ。むしろ歳は近いと思うので気軽に接してください。あなたの体は魂が抜けて抜け殻の状態になりましたが、私の力で抜けた魂の穴を補って正常の状態を維持しています。他に何か聞きたいことはないですか?」


神々しくもあどけなく笑う神様に、どことなく親近感を覚えた。


「そっか、じゃあ遠慮なく。カンナだっけ?ちなみに何歳なの?」

「三百歳です。」

「え?」

「三百歳です。」


神様だから同い年とは思ってなかったが、親近感は跡形もなく消え去った。


「さ、三百歳といっても神の中では若いほうで、神基準で見たらあなたとさほど変わらないくらいですから!」


少し慌てた様子で話す姿は、俺の幼馴染に近いものを感じた。


おかえり、親近感。


「そんなことより、あなたに話さなければならないことがあるのです。」


和やかになった空気が一変し、カンナは話を続けた。


「廻神大助(えがみだいすけ)、あなたにはとある理由でここに来てもらいました。あなたには、どうしても叶えたい願いがあるのでしょう?」


ここに呼ばれた時点でそんな気はしていたが、どうやらカンナは大体のことはわかっているようだ。


「ああ、俺は怪我した手を治して大会に出たい。青春全部費やした結果が、怪我で水の泡なんて納得できない。」


心の奥にしまおうとしていた気持ちを吐き出せて、少し楽になった気がした。


ん?怪我と言えば…


「あれ?骨折治ってる?」


気づくのが遅れたが、


右手は怪我もなくピンピンしていた。


それどころか眠る前より体調が良い。


「それはですね、今のあなたは魂体(こんたい)という状態なので怪我していないんですよ。」


「こんたい?」


知らない単語が出てきて、落ち着いていた頭がまたこんがらがった。


「まあそれは今は忘れてください。それより、先程話してくれた願い、何が起ころうとも叶えたいですか?」


「叶えたい!」


心のどこかでは諦めていた、でも諦めなくていいなら何でもやる覚悟はできていた。


「それでは廻神大助(えがみだいすけ)、心して聞いてください。」

「大助でいいよ。フルネームはなんかムズムズする。」

「ふふ、わかりました。大助、あなたの願いを叶える方法があります。」


そういう展開なのは察しがついていた。


「俺は何をすればいいんだ?」


カンナは神妙な顔つきになり、一度瞳を閉じた。


そして覚悟を決めたように目を開けこう言った。


「私と契約し、神々の戯れ(ゴッドゲーム)で勝ち抜いてほしいのです。」

「神々の戯れ(ゴッドゲーム)?」


また知らない単語と、カンナの様子から何やら嫌な予感がした。


「契約って何か代償とかあるのか?」


カンナは少し拳を握り、それから口を開いた。


「契約自体に代償はありません。ですが、神々の戯れ(ゴッドゲーム)には危険が…」


突然、カンナの言葉を遮るかのように轟音が辺りを襲い、同時に真っ暗な空間が消え去り夜空が広がった。


「見つけたぞ!今日の獲物だ!神従者(パートナー)らしき奴も一緒だ!」

「獲物!獲物!」

「本体様に褒めてもらわんと!」


鎧のようなものを着た奴らが、黒い鳥のような生き物に乗って上空からこちらを見下ろしていた。


「い、一体なぜ!?大助!!逃げますよ!」

「え!?ちょっと!!」


お互いに酷く動揺していたが、カンナは現れた時のような光の中に俺を連れ込んだ。

瞬く間に光は俺達を包んで、黒い鳥達から離れるように夜空へ飛んだ。

神々の戯れ(ゴッドゲーム)第一話を読んでくださりありがとうございます!質問や感想をいただけると励みになりますので、ドシドシお待ちしてます!次回、第二話は10月11日(日)21時投稿予定です!

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