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耳がよすぎる地獄耳令嬢、目立ちたくはありませんがうっかり神の声を聞いて聖女認定されたのは伯父の計画だったようです!  作者: 螺鈿細工


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1 丸聞こえでしてよ!

聖女ものを書いてみたい!と思って書き始めました!

聖女なんだから恋愛のお相手は王族じゃなくて神様の方がいいんじゃない?という発想で作ったお話です。

第一部という区切りまでは完結しているのでのんびり投稿します。

あ、ほのぼのですが、全体の実態はギャグっぽい部分が多いです!

「ハリエッタ様、またお祈りされているわ。本当熱心ですわね…?」

「家の呪いを解くために必死なんじゃありませんの?」


 ひそひそと、声がする。本人たちは聞こえてないように言ってるつもりであるが、ハリエッタには丸聞こえだ。


「ある意味とてもお気の毒ですわね。伯父様の呪いのせいでこの学園に入れられたのでしょう?まるで生贄ではありませんか?」

「聞き捨てなりませんわね」


 姿勢を崩さぬままハリエッタはぴしゃりと言った。通りが良いと伯父に褒められるその声は聖堂に響き渡る。

 神像の前から立ち上がったハリエッタは、ひそひそと話をしていた三人のご令嬢にまっすぐ近づいていく。


 彼女たちがいる場所もその顔触れも予想通りだった。


「わたくしの耳がとっても良いことはご存じでしょう?丸聞こえでしてよ!わたくし、色々なお話が聞こえますが、自分に関係ないことは興味ありません。けれど、伯父様をあしざまに言われるのは我慢ならないわ!そもそも呪いなんて事実無根ですもの。虚言でわが家を貶めないでいただきたいわ」


 三人のご令嬢はものすごくばつが悪そうに黙り込む。が、ハリエッタを怒らせた「伯父様の呪い」発言の令嬢だけは一呼吸おいてにらんできた。

 確か侯爵家の娘だったか?ハリエッタは興味もないし、クラスも違うし会話をした記憶もないが、やけに嫌われてこうしてうわさを流すので迷惑極まりない。


 それでも先方の家格が上なので直接攻撃されない限りはスルーしようとしていた。

 そしてハリエッタの地雷を見事踏み抜いたので、いっそすがすがしい気持ちで(けれど伯父様への発言は許さないが)反撃に出たのである。ついでに追撃してみることにした。


「呪いといえば…あなたこそ大丈夫ですの?」

「な…なんですの!?」

「成績が上がらない呪いをかけられているそうですわね?神官様に解呪をお願いされていたでしょう?解呪の費用がかなりかかるとお話しされていましたよね?」


 その場の空気が凍り付いた。

 対峙する侯爵令嬢は表情筋をぴくつかせている。


 成績が上がらない呪い?それは単に頭が悪いだけでは?というか神官に金で成績を買っていたということか?それぞれ思うところはあるが口には出せない。今発言すれば確実にハリエッタに「聞こえて」しまうからだ。


「あのような大事なお話をあのような裏庭でしないほうがよろしいですわ…。いえ、それは神官様に申し上げるべきでした。あの方、他のご令嬢ともあの場所で…いろいろな解呪のお話をされているようですの。お相手はどなただったかしら?」


 はて…?とあざとく首をかしげながらハリエッタは言った。


 今、この聖堂には学園のちょっとえらい立場の神官もいる。裏庭神官終了のお知らせを生徒たちは悟った。ついでに顔色がよろしくないご令嬢数人と内容のまずさにやっと気づいた侯爵令嬢も自身の終了のお知らせを察した。


「…地獄耳…」

「あ、そう、それですの!わたくし、本当に耳が良すぎてしまってそう呼ばれてますの!ご存じでしたわよね?それか…本当に聞こえているのかお疑いでして?仕方ありませんわ。わたくしだって、自分のことではなかったら大げさだなと思うだけでしたでしょうし…」


 侯爵令嬢が思わずつぶやいたハリエッタのあだ名を、もちろんハリエッタが聞き逃さないわけはない。

 こちらが嫌がらせをしたのならともかく、全く接点を持とうとしなかったのに手を出してきたのはあっちである。一方的に敵意を向けられ今まで迷惑なうわさを流されてきた。水面下で処理していたが、良い機会なので正面から一撃お見舞いしてやることにしたのだ。


 どうせそろそろ卒業である。言われっぱなしは癪なので卒業までに一矢報いる気でいたのだが、今が絶好の機会だったというわけだ。


 聖堂学園は神のもとで学ぶという建前ゆえ、生徒たちは平等。ここでハリエッタの言葉が問題になることはない。元々非は向こうにあるのだから。

 ちょっとえらい神官が近づいてきた。後ろに部下の神官…つまり教師が三人。侯爵令嬢に「話があるからついてくるように」と言った。成績を金で買ったのが事実なら重大な規約違反である。彼女は一緒にいた友人を振り返る余裕もなく神官たちについていった。


「わたくし、よそ様のお話が『聞こえて』しまっても、わたくし自身に関係ないことと、犯罪につながらない限りは『聞こえない』と思い込むことにしてますの。誰だってプライベートで内緒話ぐらいするでしょう?全部に聞き耳を立てるほどわたくしもヒマではありませんし、他人のことにいちいち首を突っ込むなんて無粋ですものね。世間には何かと立ち聞きをしたり、あれこれ嗅ぎまわったりうわさをするのがお好きな方、それで自分は情報通だと勘違いなさる方もおいでですが、わたくしはそうではありませんから!」


 ハリエッタは独り言の体裁で宣言する。


「だってわたくし、大多数の人々に興味ありませんもの!ゆえにこうして神様の下で学んでいるんですわ!それと、誤解のないように申し上げておきますと、我が家も伯父も呪われてなぞおりません。わたくしが自分の意志でここにいるのです!」


 聖堂は静かなままだ。反論する者もいなそうなのでハリエッタは言いたいことは言ったから退出することにした。もっともこの静けさならだれの耳にも聞こえると思うが。

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