No.373
No.373 【幕間】そのはち 『ディータの道筋』
穀倉地帯。金の穂が垂れ下がった稲を統一郎達が刈り取っていく。そんな中一人、まあ正確には他にも要るのだが、ディータは一人、蒸気車のシートに座り。自分が調べたものを読み返し、改めて自分が調べたものを考えていた。
そんな事を毎度しているディータに、統一郎は苦情を言う。
「お前な、毎回言うけど。付いてくるんだったら手伝えよ。なに読んでるか知らないが、それだったら家でもできるだろうが」
「嫌よ。どこで読もうと私の勝手でしょう。あんたは気にせずあんたの出来ることをしなさい」
お得意のインチキ能力を使ってと、これまた毎度の受け答えを返すディータ。
「大丈夫トウイチロウ。トウカがお姉さまの分も手伝う」
「にゃーん」
トウカと虎丸が声を上げで自分達が頑張るからと言うと。
「ありがとうな、ほんと二人は良い子だよ。統一郎さんは助かるよ」
何処かの誰かもこれくらいしろよと言う目で見る。
しかしディータは気にすることなく調べものを読み返していた。
「ハァ、あいつが手伝わないから余計にあいつらが手伝わないんだけどな」
そう言ってトウモロコシ畑でトウモロコシを食べている猿の賢獣達を見る。
「「「「むきゃむきゃ。ガツガツ。モグモグ」」」」
トウモロコシをもいでは剥き。一心不乱に食べていた。その様子は一種異様であるが、彼らにとっては当たり前なこと。
「おまえらー。食べ終わってからで良いからこっち手伝えよ。自分達が食べる食料なんだからなー」
統一郎が猿の賢獣達に声を掛けるが、彼らは返事を返すことなく食べ続けた。
「あいつら自分達の体積以上の量を食べてるよな? 何でそれで腹が一杯にならないんだ? 胃がブラックホールと直結でもしてるのk………」
途中で言葉の止まる統一郎。
そして家のある方向を見て考える仕草をする。
「……どうしたの?」
統一郎の時たまあるその行動に、何かあったのかと聞くディータ。
「いや、どうも知り合いがこっちにか来るみたいなんだ。速さからして、急ぎって感じじゃなさそうだし。どうしたもんかなと、思ってな」
「帰るのトウイチロウ?」
「いや少し待ってもらおう。せっかく刈り取った物を置いていくのはもったいない。今刈り取った分を回収してから帰ろう」
統一郎がそう言うとトウカと虎丸は元気よう返事をして、刈り取った稲の回収に入った。
回収の時も統一郎はディータ達に対して「手伝わないのか~。手伝わないのかね~」とウザったいほど言っていたが、最後まで無視を続けた。
蒸気車の貨物部分に稲を乗せてから家に帰る。統一郎は蒸気車を車庫に入れると、ディータ達に家に居てくれと言う。
余程の理由がない限りは自分一人で、来客の相手をした方が良いだろうと言うことらしい。
「わかったわ。何かあったら言いなさい」
「トウイチロウ。トウイチロウ。今度はおもてなししなくて良いの?」
「その時はトウカにお願いするよ。お前らもこっちで遊ばず家で遊んでろよ」
「「「「ウキー」」」」
ディータは客の相手は面倒臭いと言うように家に入っていき。トウカはこの間のリベンジと言うように統一郎に聞く。統一郎はそんなトウカの頭を撫でてからその時は頼むとお願いする。
そして好き勝手に行動しようとしていた猿の賢獣達に川原へ行かないように注意してから、統一郎は川原へと向かっていく。
「知り合いって言っていたけど誰かしら?」
面倒臭い様なことを言っていたが気にはなるディータは、家の二階の川原の方が見えるテラスから誰が来たのかを確認する。
そこには海人族の男性がいた。
ただその男性は白い布で顔を覆っていたのと。どう言うわけか、家に残っていた猿の賢獣達から攻撃されていた。
「何であの子達があんなことしてるのか分からないけど。あの海人族の人がしている格好って極刑の罪人に対するものよね」
自分の知識のなかに有ったものを掘り起こして再度確認するが、間違いないと確信する。
「……何をしに来たのかしら」
知り合いが死罪となり流罪とでもなったのかとディータは考えた。
「あり得るかしら聖地への流罪なんて?」
他国の罰などそれぽど詳しく知らないディータは、そう言うのもあるのかも知れないぐらいにしか思わなかった。
「そうじゃなさそうそうね」
統一郎が海人族の男性に対して何か言っている。どうやら向こうの男性が勝手にあの格好をしていたようだ。
何か大きな問題があったわけじゃないとわかると、ディータはそちらから意識を離す。
「しばらくすれば何か言ってくるでしょう」
初めて統一郎と会った時とは違い。今の統一郎は余程の事がない限りは死ぬような目には合わないだろうと思ったが、いつも鍛練で死にそうな目に遭っていると言うことを思い出した。
「あの賢獣達の鍛練が異常なだけよね」
そう思うことにして先程からこちらを伺っている者に声をかける。
「それでどうしたのトウカ? 何か用?」
トウカはディータに声をかけられるとぱあぁっと表情を明るくしてから。
「あのねお姉さま。お暇ならトウカに文字を教えて欲しいの」
「あらあなた簡略語なら覚えてるでしょう」
「うん。でもね図書館のご本はそれだけじゃ読めないから」
ああなるほどとディータは思う。
ここの聖地に存在する『叡智の図書館』と呼ばれる鼠の賢獣達が管理している書庫がある。
ディータもその存在を知ってからはちょくちょく通って、そこにある本を読んでいるが。トウカが読めるような簡略語は中々置いていなかった。
「わかったわ。なら簡単な文字から覚えていきましょう」
「良いの?」
「構わないわよ。何かを急いでやる事は無いだろうからってなに? あなたも文字を教えて欲しいの?」
「ウキッ」
トウカに色好い返事を返すと。トウカの横に一匹の猿の賢獣が自分も教えて欲しいと言うように、紙と筆を持っていた。
「教えるのは別に構わないわよ。あなた以外にも教わりたい子がいたら言いなさい。別々に教えるのは効率悪いから」
そう言ってその辺で遊んでいる賢獣達に声をかけると、何だ何だと寄ってくるが。トウカが「これからお勉強だよ」と言うと、賢獣達は物凄い嫌そうな顔をしてから去っていく。
「…………あなたが変わった子だけなのかもね」
やる気に満ちてる猿の賢獣を見てそう呟くディータ。
それからその賢獣とトウカに文字を教えるディータであった。
未完の大器ディータ。本名ディータ・セフィーロ・コクマー。
数々の霊人族が住む『霊族連合国』の衛星都市のひとつ。『コクマー』に住んでいた少女。
何でも興味を持つ。熱しやすく冷めやすい性格をした少女だった。
術士としての師であり。自分を保護者をしてくれている養祖父たち。そして師兄姉たち。
彼らが偉大であり才能溢れる者達で有ったために、自らも何かしらの才を持ちたいと始めたいと思っての事であった。
しかし養祖父たちの様に、師兄姉の様に出来るようにと完璧さを求めたために、彼女自身が越えられぬ壁の前に立つと諦めてしまう。
次こそは次こそはと、越えられぬ壁を見上げては諦め。別の何かに興味を持っては、同じ挫折を何度も味わう。
そうしたことで何事も中途半端になってしまう少女が出来上がってしまった。
そんな自分に嫌気が差してきた頃、調べもののために入った書簡庫での事。(許可の無い者は入室出来ない。ディータは許可が貰えない為に無許可で忍び込んでいる)そこで見た聖地に関する資料。
そこに書かれていたのは聖地内に在る異界の門の内部でさ迷った資源隊(資源調達部隊)の報告書。
何処とも知れぬ場所にさ迷った彼らは、巨大な獣が封印されていたと。
これに興味を持ったディータは聖地に行くことにする。だが祖父達に知られれば止められると思ったディータは、自分がまだ国にいると裏工作した後。外へと飛び出していく。
その際裏工作をすることに夢中になり、自分自身の仕度を忘れ。聖地に行く前に近くに住んでいるとされる神獣の地でさ迷い歩くことになる。
その後は紆余曲折ありなんとかその土地に住んでいた神獣から加護を貰い。存在が確認されているなかでも、最大規模を誇る聖地に向けて飛び立ったが。この後も何も考えずに飛びだった彼女は、その聖地に着くまでに三日も掛かるとは思わず、ひもじい思いをする。
なんとか聖地に着いた彼女は、その聖地にいた聖人の手助けを借り。異界の門の探索に向かうのだが。そこで不足の事態が起きる。
探索中はぐれた彼女は異界の門のモンスター達に襲われる。
それ事態もなんとか窮地を脱出するも、彼女を助けに来た聖人が瀕死の重症を負い。死亡する。
その事に自分自身の中途半端な事で起きたことだと。自分と同じ年で自分より才能を持っていた聖人に興味を持っていた彼女は、現実逃避をするようにいつもと同じように聖人に対して興味を失っていく。
そんな時に死亡した聖人を助けたのが、聖地を流浪する賢獣であり薬師でもあるメェメェである。
メェメェが現れたとき彼女は死んだ人間が生き返ることは無いと、無駄なことはするなと言い放つ。
それは彼女にとって越えられない壁と同意語だったのだ。
しかしメェメェは諦めなかった。
自分の持てる技術を知識を総動員させて聖人を救う。
その姿に、その行為に、彼女の中にあった固定概念にひびが入る。
越えられない壁はないと。今まで越えられなかったのは自分が最後まで諦めずにやりとげなかったからだと。
その後、彼女は聖地を後にし国へ帰る。
今度はキチンと保護者である養祖父達に許可を貰ってまた来ると。
「ほらトウカ。こっちの字はさっきの字と同じだけれども全く別の意味になるの。これは前の文と後ろの文の組み合わせで違ってくるのよ」
「うにゅ……にゅ…」
頭を悩ませるトウカにゆっくりで良いから覚えなさいと言うディータ。すると外から統一郎達の言い争いが聞こえてくる。
「やりやがったな!」
「そちらが先であろう!」
珍しく統一郎が声を上げていたので何をしているのだろうとテラスから川原を見ると。統一郎と海人族の男性が何故か殴り合いをしていた。
「………何してるのあいつは!?」
止めに行こうと走り出そうとするところに、羊の賢獣メェメェが止めに入る。
「やめるですよ。あれは放っておいて良いですよ。男同士の殴り合いですよ」
「殴り合いって……。何で殴る必要があるのよ!?」
「そう言うことも必要なときがあるですよ」
メェメェの言葉に理解できないと言う表情をする。
「あれがわかる様になるには、あなたはまだまだ男を知らなすぎるですよ」
何となくその言い方に別の意味も含まれているようにも聞こえたディータ。
だがメェメェにはあまり強く言えない。彼女の生き方を変えてくれた一人である。例え今目の前にいるメェメェがあの時のメェメェでなくともだ。
因みにもう一人の人生観を変えてくれた方には平気で言えるのだが。
だからディータはメェメェが行くなと言う以上は、川原で殴り合っている者達をやきもきしながら眺める事しか出来ないかった。
「どうしたのお姉さま? あれ? トウイチロウ鍛練してるの?」
「違うわよ。何を思ってあんなことしてるんだか理解に苦しむわ」
馬鹿じゃないのと、川原に居る者に向けるように言うと。
「トウイチロウなんか必死だね。相手の人になにか伝えたいみたいに殴ってるよ」
トウカの言葉にもう一度彼らを見る。しかしトウカの言うような感じにはディータには見れなかった。
「よくわかるわね。トウカは本当にトウイチロウが好きなのね」
「うん! トウイチロウ好き! あ、もちろんお姉さまも好きだし。虎丸も好きだよ。おさるさん達もそうだし」
トウカは指折りして自分の好きな人達をあげていく。
好きの意味合いが違うが、トウカの照れることも否定することもしないその態度に羨ましいと思うディータ。
「あなたも素直になった方が楽ですよ」
そうな風に思っているとメェメェが「良いお薬あるですよ。飲むですよ」と、にじり寄ってくるメェメェ。
メェメェの事は尊敬できる人物であると思っているが、こう言う風に人に怪しげな薬を奨めるのはどうかとも思っている。
暫くすると統一郎達の殴り合いは終わったようだ。両者が倒れ動けなくなっていた。
「終わったようですよ メェメェ治療に行ってくるですよ ヒャッホーイですよ」
スキップしながら倒れている彼らに近寄っていくメェメェ。
メェメェの存在に気がついた統一郎が這いずりながら逃げようとしてるが、メェメェに捕まり治療をさせられている。
「あれはまた変な薬を使ってるわね」
段々とトウイチロウには容赦なく使ってるわねと、眺めていても止めに入ることはないディータ。
暫く動けなかった統一郎は起き上がると海人族の男性と何かを話した後。
「これからシズエさんのところに行ってくる。食事は悪いがそっちで何とかしてくれ」
そう言って再び蒸気車を出す。
「トウイチロウおばちゃんのところにお出掛け? トウカも行くー!」
統一郎が行くところは付いて行きたがるトウカを止める。
「なんでダメなの?」
「さっきトウカが言ったでしょう。彼が何かを伝えたくてしてるって。きっとそこへ行くのも何か理由があっていくのよ。一緒に行こうと言われない限りはやめときなさい」
ディータにそう言われるとトウカはつまらないと言う表情をしながらも渋々承諾する。
「その代わり私がもう少し文字を教えてあげるから」
「うにゅ~。トウカもうお勉強疲れた。牛若先生のところで鍛練したい」
文字の勉強が飽きたトウカ。体を動かしたいと言う。ディータは帰ってきたメェメェに牛若のところにトウカを行かせて良いかと聞くと。
「うーんですよ。今日のお出掛けはそろそろ控えてもらった方が体にはいいですよ。彼ならその内ここに寄ると思うですよ。その時に頼むといいですよ」
メェメェはトウカを軽く診察してからそう結論する。
そう言われるとトウカは更に不貞腐れた顔をした。
「ブー。トウカつまんない!」
「少しの辛抱よ。それまでは私たちといましょう」
そう言ってやっとトウカの機嫌が少し直る。
「お姉さんも大変ですよ」
「好きでやってることよ。こればかりは絶対に中途半端にしない自信が在るわよ」
「変なところで自信があるですよ」
そう言って笑い合う二人。
そして暫くすると一階の方から「ウモー」と言う声が聞こえてくる。
「あっ! 牛若先生だ! トウカ行ってくる!」
「にゃん? にゃーん」
トウカはそう言って駆けていく。それを追うように虎丸も付いていった。
ディータは師兄姉が多くいたが弟妹と呼べる者達はいなかった。
その為同世代や年上の場合、敬意を払う相手にはそれ相応の対応はするが、そうでない相手の場合はかなり雑に扱う。
しかしどんな人物であれ、年下の相手の場合にはかなり対応が甘くなる。
それに加え『姉』と呼ばれようものなら、下手をすれば人格が可笑しくなっているのでは疑いたくなるくらいに変貌する。
特に彼女と姉妹の契りを交わした義妹トウカには孫を可愛がる祖母のようになる。
この辺りの可愛がり様は、彼女を構うときの養祖父と同じだと指摘するが、彼女自身がそれを否定した。
自分はあそこまで孫バカな対応はしていないと。
しかし周りの人間は同じだと言う。
まあその辺の事は差して変わりがないものだからこの話はもう良いだろう。
さて、彼女は霊族連合国の民であるが、その殆どを国で過ごさず聖地で過ごす。
その理由が彼女が聖地へと行く際に加護を得た相手、神獣に問題があった。
いや実際にその加護を与えた神獣に問題があったのではなく。神獣から加護を得たと言うのが問題視されたのだ。
神獣は聖地に住む賢獣を守護している存在。
その存在は物語などで出てくる特別な賢獣として名が残ったいたが、そんな存在がいたと言うことに関して多くの者達は知ってはいなかった。
しかし神獣の事を知っていた少数の人間、特に彼女の養祖父が彼女を国に居るのはよした方がいいと言い。信頼の置ける聖人がいた聖地に住むように言う。
本人もそれを望んでいたために了承する。
以降彼女は多くの時間を聖地で過ごすこととなるが、彼女の養祖父達が会いたい。国に帰ってこいと言う手紙がくると彼女は溜め息を吐きながらも国へ帰るが。聖地に戻ってくる度に彼女は「もう二度と帰ってやるもんですか!」と、憤慨する。
しかし彼らの手紙がくると帰る辺り、言葉半分と言ったところがあるのだろう。
そうそう彼女がなぜそんなに怒って帰ってくるのか、一度聞いたことがあるが答えてはくれなかった。
そこで聖人が作った空を移動する乗り物で共に行った事のある、義妹トウカに聞いてみたところ。
「うーんとね。トウカね。お姉さまとお歌の上手なお姉さんと一緒に、みんなの前でお歌歌ったり踊ったりしてきたよ」
どうやら彼女は国に居れば『導き者』と呼ばれる役職にさせられるから聖地に居た筈なのに。その国に帰れば、強制的にその役職をする者の手伝いをさせられていたようだった。
そしてその後彼女は聖人との間に子供を儲ける。
その知らせが届いた後の彼女の養祖父達は鬼の形相で聖地に来ることになるのだが、その話はここでは止めておこう。あれは思い出すことも躊躇われるほどの壮絶な戦いだった……一方的な……。
そうだ。彼女についてもうひとつ。
彼女はよく自分の二つ名を口にする。それは他者からの称賛であり。自身の誇りでもある。
彼女は国へ戻り多くの人達に『導き者』ではないが、それに近い行動をしてきた。無論彼女はそれ以外でも活躍をした。そのお陰で彼女は多くの二つ名を他者から贈られる。
しかし彼女はそのどの二つ名も自身が口にすることはなかった。彼女が決まって口にする二つ名は。
『未完の大器』
多くの人達は何故こんな二つ名を、と疑問の声をあげ、もっと良き名を使ったらと奨めるが。彼女は生涯この二つ名を使い続ける。
自分自身が未熟であった時の事を忘れないためと、何にでも取り組む事が出来るような向上心を忘れないためだと、彼女は言う。
その言葉通りに彼女は多くの専門分野に取り組んでは、数多くの功績を残していく。
彼女は言う。多くの事を成し遂げたとしても自分はまだ道半ばも来ていない半端者だと。だから進むのだと。諦めずに前を向き。歩き続ける為にと、彼女は言うのだ。
「ウキキ。ウキ?」
トウカと一緒に文字の勉強をしていた賢獣がディータの側に寄り持っていた紙を見せる。
「え? なに? もしかしてこれであってるかってことかしら?」
「ウキ」
「そうみたいですよ。合ってるか確認して欲しいそうですよ」
「もう文字を覚えて文に出来るなんて、あなた頭良いわね」
「ウッキッキッ♪ ウッキィ~」
「そう言う風に誉められるのは二度目だと言ってるですよ」
そう言うことならと紙を受け取り、そこに書かれている文字を読む。
「…………あってるわ。でも私に頼むのはやめときなさいね。いくら『未完の大器・ディータ』でもあっても、それはしてあげられないは、前にこりてるから」
「ウキ~……」
「あと今はトウカもやめときなさいね。いま言ったら、不機嫌だけじゃすまされないから」
ディータに文字はあっているが、頼み事は他の人にしなさいと言われると、落胆した表情をする。
「何を頼んだんですよ?」
「これよ。メェメェ、あなたならやってあげられる?」
ディータから手渡される紙を読むメェメェ。
しかしそこに書かれいるものはわからなかったので、結局ディータに聞く事になる。
「あーですよ。さすがにこれはメェメェも彼らを満足させられるのは無理ですよ」
「ウキ……」
メェメェは首を振って猿の賢獣に紙を返すと、賢獣はお腹を押さえ寂しそうな顔をする。
そして賢獣は紙をみんなに見せるように掲げる回るが。他の賢獣達はその文字を勉強しなかった為に誰もその文字を理解できなかった。
猿の賢獣は統一郎が帰ってくるまで、その紙を寂しげに掲げていた。その紙に書かれていた文字は。
『ハラヘッタ。メシ、クイタイ。ダレカ、ツクッテ』




