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No.304





 No.304




 「ウキッ! ウキィー!」(おら! はよぅ許可ださんかい!)

 「ウキウキ、ウッキキィー」(メシ食わせんのやったら、お前を食っちゃるけんのぅ)

 「じゅるり。ウィキィー」(じゅるり。ワシャどちらでも構わんけん)

 「ひぃいいいいい!? 悪魔を、悪魔を近付けないでほしいのさあ!!」


 ピンクサル達があとから来たメェメェを全面に押し出しキザ蛇を脅している。

 おまえらー。弱いものイジメはほどほどにしとけよー。


 「何て説得力の無い言葉だけの言葉ですよ」


 だって相手すんの面倒臭くなってきたし、この方が手っ取り早いしね。

 それで何であいつはあそこまで怯えているんだ。

 まあ確かにメェメェが黒いのは今更なことだけど。一応命を救う側の人だから、そこまで酷いことはしないだろう。


 「散々な言われようですよ」


 今までの自分の行動を鑑みてください。一体あなたは治療と称して何回自分を実験台にしましたか?


 「医療の発展には付き物ですよ」


 このやろう。悪びもなく言い切りやがったよ。


 「こんにちはですよ。この地区を担当するメェメェですよ。あなたが臨時専属を求めていた人ですよ?」


 そうだよ。こんにちは。

 ピンクサル達に押し出されていたメェメェがこちらに来る。そうするとキザ蛇がホッとしたような表情を見せているが、ピンクサル達が早く許可しないと、また連れてくると脅している。


 「わかったのさあ! 食べれば良いのさあ! 許可するのさあ!」

 「「「「ウッキキッーーー!!」」」」(食い放題だーーー!!)


 あーあ、ついに許可出したか。しかもやけくそ気味に。

 そんでピンクサル達は許可が出たことで、ところ構わず色々なところを食い漁っていってるよ。無惨な食い方だなおい。食べるならさっきみたいにきちっと食いきれよ。何で頭だけとか。両腕だけ食べていく? そこが旨いところなのか? なんだか余計に何かの美術品に見えてくるな。


 「そんな体質があるですよ。なぜ教えてくれなかったですよ」

 「もしあなただったら教えるですよ?」

 「ムリですよ。独り占めですよ」

 「わかってるじゃないですよ。だからこの事は二人だけの……ですよ」

 「ですよ」


 こっちはなんか黒い話をしとるなぁ。まあ自分の事じゃないからいいやぁ。放っておこう。


 「ああ………ああぁ、ボクの、ボクの美しい作品がさあ……」


 こっちはこっちで涙を流して嘆いとるな。ピンクサル達に問答無用で食われてるからな。自分の提案を飲んでれば作品には手を出させなかったのに。


 「ああぁぁ………素晴らしいのさあ!」


 なんだって?


 「元々完璧だったボクの作品が、一部がなくなることで、その無くなった部分の完璧だったさまを想像させるのさあ!」


 ………転んでもタダで起きない奴だったか。まあ

本人が良ければいいか。

 しかしここにはお菓子しかないのか? ショートケーキの花? 花の部分がケーキになっとる、食えるのかこれ?


 「ウモモ?」(暫く居るか?)


 自分が辺りを見回しているとランボが話しかけてきた。


 「え? ああそうですね。うちの奴らが食い飽きるまでは要るようになるんじゃないですか。見回りですか?」

 「ウモ。ウモゥ」(そうだ。少し行ってくる)

 「わかりました。ここに居なければ先ほどの叡智の図書館に居ますので」

 「ウモッ」(わかった)


 ランボが影を残さないほどのスピードで走っていくのを見送り。自分はここで昼を取ってから叡智の図書館に戻るとみんなに伝える。

 厄介そうな奴が出てきたから一波乱あると覚悟していたけど何事もなく終わりそうでよかったよかった。

 今回は何事もなく終わりそうだよ。

 まあ色々と他と違ったこの環境に疑問が出てくるが、そこはもうファンタジーだからで済ませよう。その方が面倒臭くないしね。

 キザ蛇には会えたし。調達に来るか分からないけど、新しい場所も見つけた。あとはディータを迎えに行って帰るだけだ。

 何事もないって素晴らしい!




 ☆★☆★☆




 一方その叡智の図書館では。



 「ーーー黒き獣。ーーー混沌を呼ぶモノ。ーーー封じられし厄神。………色々言葉は出てくるけど、これって昔のモンスターの呼び方なのよね」


 いくつかの本を読み漁り得た情報はあったが、自分が欲しかった情報ではなかった。


 「賢獣の情報は差ほど変わらないし。神獣に至っては少なすぎて予想が絞れない………ハァ……」


 ずっと本とにらめっこをしていたから疲れてきた。

 目を解して、固まった肩の凝りを解す。


 「どうぞ……もさ」


 セバスと言っていたねずみの賢獣が、中身の入った竹のコップを差し出してきた。


 「ありがとう。飲食の提供はしないんじゃなかったの?」

 「こちらはお連れの方からのお預かりものです……もさ」

 「トウイチロウね、まったくこう言う細かなことは気が利く男ね」

 「とても良い旦那さまでいらっしゃいます……もさ」

 「ーーーッブハッ!?」

 「おっと……もさ」


 セバスの突然の言葉に思わず飲んでいたものを吹いてしまった。

 危うく本にかかるところをセバスが素早い動きで本を片付ける。


 「ゲホッ! ゲホッ! ちが、な、なに言ってんの!?」

 「おや? 違いましたか……もさ」

 「……違うわよ。あれは、何だろう。そうね、恩人みたいなものよ」


 適切な言葉が出てこなかった私はそう答えるしかなかった。

 だけどその言葉を信じていなそうに要る。

 なんか腹立つわね。

 だから私はセバスを追い払うように次の資料がないかと催促する。


 「ああちょっと待って。精霊や霊獣が宿る武具についての資料と。その精霊や霊獣達と対話、契約の仕方についての資料が在ったら、それも持ってきてちょうだい」

 「わかりました……もさ」


 そう言って今度こそセバスは本を探しにいく。

 ………まったくこれは違うからね。聖地に関してや賢獣や神獣の事が分からないから、別のところから探してみようって思っただけだから。あいつの為を思ってとかじゃないんだから。


 「息抜きよ、要は」


 自分でも訳のわからない言い訳をしながら、何となく火照った顔を手で扇ぎ冷ましていった。


















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