No.199
No.199
「トウカ大丈夫かッ!?」
ドロップアイテム回収中、幸いにもモンスターは出てこなかったので。全てのアイテムを回収して門の外に出て、トウカ達の下に駆け急いだ。
門を出て洞窟を抜けると、ピンクサル達にトラさん。メェメェに土竜が、トウカ様に作った空白地帯の近くに寄り集まっていた。
「ですよ? ああ、あなたが薬剤調合に新たな可能性を教えてくれた人ですよ。感謝するですよ」
わたあめの様な薄い紫色のモコモコのメェメェが、自分の存在に気付き頭を下げた。
どうやらこのメェメェはこの辺りを担当するメェメェのようだ。
どこか行く度に同じ職種で同じ顔をして出てくる。モンスターを仲間にする、某有名ゲームのサブキャラクターみたいな人だな。
おっとそんなことよりトウカの方は。
「彼女なら心配ないですよ。今はちょっと貧血を起こしていたので寝かせているですよ。体に問題はないですよ」
「じゃあ体に何か異常が有る訳ではないんですね?」
「ですよ。彼女は女性特有の症状が出てきただけですよ」
女性特有の症状? それって……。
「知らないですよ? 生理、月の物 、 下り物 、 月事、月経と色々呼び名があるですよ。ある一定年齢の女性がなる特有の症状で「いや意味合いは知ってるんで結構です!」ですよ? ならなんですよ?」
トウカは十歳、そんなもんでなるの、あいや。肉体年齢はもっと上だろうから有りうるのか。
くそッ。ボインボインの体でも精神の幼さで、その辺の事を考えてなかった。ああだからと言って自分に女性に関することで何か出来るわけはないし。どうしたらいいんだ!?
「落ち着くですよ。彼女は今のところ症状が落ち着いているですよ。でも問題がない訳ではないですよ」
「何かあるんですか!?」
今さっき問題ないと言ったのに何か問題があるのか!?
「直ぐどうこう為るようなものじゃないですよ。ただ少しずつ彼女を蝕んでいるのは確かですよ」
病気!? トウカ何か病気になってるの!? 蝕んでるってことは、癌かッ!?
「ぐがぁっ!」
あわてふためいている自分に土竜が尻尾で自分の頭を叩いてきた。
痛みで踞っている自分を他所に、土竜はメェメェに話の続きをと催促する。
「彼女が霊魂分けに失敗して、今のような状態になっているのは聞いたですよ。それでその失敗が原因で、いま彼女の心と体の調整が可笑しくなってるですよ」
ど、ど言うことでしょうか?
「彼女の場合、体は大人で心は子供ですよ」
コ〇ンくんの逆ですね、わかります。
「……聞く気あるですよ?」
有ります。有りますので続きをどうぞ。
メェメェはジト目で自分を見てくるが話の続きをと言うと、話し始める。
「本来心と体は時間を掛けて成長していくですよ。でも彼女の場合体だけ一気に成長した、もしくは心が退行したような状態に為ってるですよ。自衛の為にいまの状態に為ったと言うならまだ話が楽ですよ。でも彼女の場合術の失敗か何かが原因ですよ。それでも直ぐに治療をして元に戻っているなら問題はなかったですよ」
その話し方では今は問題が出てきているってことですよね。
前回ブタくんの時に会ったメェメェにも、トウカの事は相談したが。今は無理にする方が問題だから時間に任せて大丈夫みたいなことを言っていたから放っておいたんだが。
「ですよ……。なるほどですよ。その時はまだ症状が出てきてなくて気付かなかったですよ。だけどここに来て調整を崩す何かがあったですよ」
何か? ブタくんの時から有ったと言えば、あの三人に会ったぐらいだが。そんな分けないしな。あと有るとするとランボとの訓練ぐらいか。ブタくんが来た辺りからやっていたのは、そんのぐらい思い付かないな。
だけどメェメェは何か思い当たるのか、ランボとの訓練はどんなものか聞いてきた。
そこで自分より詳しいトラさんに説明してもらった。
メェメェはトラさんの話しに仕切りに頷き。また時には思案するような顔をして、ついに結論が出たのか。自分達に自分の考えを話し出した。
「決め手となるかは分からないですよ。こうとしか判断できないので話すですよ」
「構いません。話してください」
「ですよ。牛若さんの所で彼女が訓練して身に付けた技は、身体活性化に近いモノだと思うですよ」
活性化と言うよりあれを見ると強化だと思うが、まあこの際良いだろう。
「彼女の体は心の幼さに合わせ、体の成長を止めようとしていたですよ。そのお陰で心と体の調整は微妙なところで保たれていたですよ。だけどここに来て、身体活性化の技を使い始めたせいで。その止めていた体が動き出してしまったと思うですよ」
なるほど、何となく分かる。しかし活性化をしなくても時間と共に狂いが生じてくると思うが。人の体は少しずつ成長していくんだし。
「そうですよ。だけどその狂いはうんと先だったですよ。その間に治療の準備をしようと、そこの担当のメェメェは考えていたと思うですよ」
トウカが無理をしなければ猶予はかなり有ったと。
「どれくらい時間が在ったかは分からないですよ。彼女は幼い彼女と大人の彼女が心の内に同居していると聞いてるですよ。その内の大人の方の彼女は心奥底に沈み込んで、幼い彼女との絆を断ち切って要ると聞くですよ」
はい。以前は幼いトウカも大人のトウカさんを知っているようでしたが。ある日を境に幼いトウカは、大人のトウカさんを覚えていないと言う風になりました。
「霊魂分けは互いを認識することの出来る術ですよ。その術の性質で片方が消えても、もう片方に記憶と経験が引き継がれ統合することの可能な術ですよ」
まんま多重〇分身だな。じゃあ今は互いの認識が消えているからトウカかトウカさんが消えた場合は。
「引き継がれることなく片方だけが残るですよ。こんな言い方はしたくないですよ。でもそれでも言うですよ。大人の方の彼女が残れば、まだ心と体の調整を崩すことなく生きる事は可能ですよ。でもこのまま幼い方の彼女を残れば、それすら不可能になるですよ」
更にメェメェは例え幼いトウカの方を残り生き残れたとしても、精神が壊れ廃人となる可能性もあると言う。
今出ているのは幼いトウカ……。心と体のバランスが既におかしく為り掛けている。そして術としては不完全な状態……。残せるのは一人だけ……………………。
「…………メェメェさん。幼いトウカも救う方法はありますか?」
「無茶を言うですよ!?」
メェメェは自分の言葉に狼狽するが、直ぐ様何か方法がないか考え始める。
そして待つこと数分。
メェメェはひとつの決断をするように、考え付いた方法を話し出した。
「ひとつ。治療を行うまでの引き延ばしと言う方法なら、可能性があるですよ」
「有るんですね!?」
メェメェは短い手をモコモコの中に戻し。何かを探し出すようにしてからひとつの袋を取り出した。
袋を開けそこから取り出したのは、なんかヨボヨボでショボーンとした鳥? の姿をしたキノコみたいなやつだった。
「それは……」
「これは『老取りダケ』と言う茸ですよ。これを処方して飲ませると、その飲ませた人の体が若返るですよ。ただし肉体が若返るだけで寿命が延びるわけじゃないですよ」
え? なにそのファンタジーアイテム。寿命が延びないだけでもかなりの物だと思うけど。
しかしメェメェはこの薬にも問題があると言う。
「これを飲ませる相手の年齢をキチンと把握しないとダメですよ。この薬の処方は微妙な調整が必要ですよ。なのでほんのちょっとした分量違いで、一気に赤ん坊より若返らせてしまうですよ」
そいつは危険なものなのでは?
「ですよ。でも今は両方の彼女を救うにはこれしかないですよ。それじゃあ彼女の年齢を教えてほしいですよ」
「え?」
メェメェからトウカの年齢を聞かれたが、自分はトウカのきちんとした実年齢を知ってはいなかった。




