No.197
No.197
採掘場にある門にまで今日はやって参りました。
目の前には総石作の扉があります。
相変わらず背景に『ズッゴゴゴゴゴゴォォオオオ!!!!』とか、効果音が出てそうな重厚感ある扉だ。
帰りてぇ……。門のところに来ると果てしなく嫌な予感しかしないんだよな。何故なんだろう?
「ウキキッ?」
「行きますよ。行きますが、心の準備と言うものがだね……」
自分が扉の前で躊躇していると。
「ウキ~!」「ウキキ!」 「ウキッ!」
次々と門の中へ入っていくピンクサル達。
「こら!? お前ら待て! 中がどうなってるか分からないのに!? 仕方ないトウカ!虎丸! 自分達も行くぞ!」
「にゃーん」
トラさんは元気に答えるが、いつもならすぐ答えてくれるトウカの返事がなかった。
「トウカ?」
「ふぇ!? なにトウイチロウ?」
「いや返事がなかったから、具合でも悪いのか?」
心なしかトウカの顔色が悪いような気がする。大事を取って帰らせるか?
「トウカ平気だよ! 今度はちゃんとお手伝いするよ!」
トウカはそう張り切りながら扉を潜っていく。
自分はそれを見つめながら。
「虎丸何かあったらよろしくな」
「にゃーん」
自分の方も気を付けて様子を見ておくか。トウカは言い出したら聞かないし。
それにカツヲからは無理をしないで良いと言われてるから、前回みたいなことは早々起きないだろう。ある程度集めたら早めに切り上げれば良いや。
そう思い自分も門の中へと入っていくのだった。
「……ッ」
門のを潜り抜けると、そこは荒野があった。
風が吹き。砂を巻き上げ。所々には草木と岩が見受けられた。
トンネルを抜けたら雪国とかあるが、まさか荒野とは……。
「門の中って言うのはそこの場所と同じ様な作りじゃないのか?」
自分が予想していたのは洞窟の中か、もしくは採掘場のような場所に出ると持っていたんだが。
「まあ見晴らしが良ければそれに越したことはないか。おーいお前ら! 一旦集まれー!」
門を出てからピンクサル達は、各々その辺を見て回っていたのたので、今のところ危険がないとは言え。集まって行動した方が良いから集合させたんだが。
「ウキキ?」「ウッキィー」「ウキウキ!」
と、相変わらずブレ無い返事を返してくる。
「少し待て。今調べてみるから。それまで勝手な行動はするなよ。食事抜きじゃ済まさないからな!」
「「「「ウキッー! ウキキッ!」」」」
自分が少し強く言うと見事な敬礼を取り。そして整列をして待機した。
ほんとこいつらは食事関係を出すと言うこと聞くよな。
さて、こいつらが暴れださない内この辺一体を調べるか。
【地図記録】を使い周囲に敵性体が居ないかどうかだけを調べる。前回みたいに少し歩いたら敵に囲まれてましたなんて言うのは避けたい。
青い光点が集まってるところが自分達。それ以外に赤い光点が………………ん? おかしい? 範囲内に見当たらない? ユニ子のところの門ではウジャウジャ出てきたのに? もう少し範囲を広げてみるか。
「やっぱりおかしい!? なんだここ!? モンスターが一匹もいない!?」
範囲を広げられるだけ広げてみたが、モンスターのモの字もなかった。
いったいなんだここは!? 荒野が存在するだけでモンスターがいない!? いやそれならそれで平和な場所なんだが。聞いた話じゃ門の中は聖地の外と違い侵食の影響は受けないが。魔獣とはまた違った存在、モンスターが常に存在しているって聞いたぞ!?
誰かが来て狩り尽くした? いやそれはないな。もし誰か来たのならそれらしい戦闘跡がある筈た。それがないってことはーーー。
「ウキー。ウキキ?」
「もうちょい待て、今考えをまとめーーーッ!?」
ピンクサルからまだ掛かるのかと催促をされ、もう少しだけ待てと言おうとしたその瞬間。地面が大きく揺れ。地響きを立てながら、地面から巨大な何かが出現した。
「な、なんだぁぁあああ!?」
ーーーGIAAAAAAAA!!ーーー
巨大な柱のようなモノが現れたと思ったら。その上の方から唸り声のようなものが聞こえてきた。
その声がする方に頭を向けると。掘削機のような口をした、でかい何かだと言うのだけは分かった。
「ウキ~。ウキキ?」
いやそんなん自分が聞きたいわ!? ってかそんなことより。あの口ぽいのがこっちを捉えてるんだ! ここは一旦ーーー。
「全員退避!!」
自分の言葉に従い門へと駆け出すピンクサル達。
しかしそんな中、一緒に付いてこなかった者がいた。
「トウカ何やってる!? 一旦逃げるぞ!」
トウカは自分の言葉に耳を傾けず、ただ息を整え。
「はあぁぁ……」
息吹の声を上げ。全身に魔力を満たしていくと。朱色の髪から光が溢れ出す。
そしてキッと、でかいモンスターに顔を向けてから体を沈め。体のバネを利用して一気に跳躍した。
でかいモンスターの口辺りまで飛び上がると。両手の方に魔力を込めたらしく。そこから朱色の光が溢れる。
その溢れ出た朱色に光輝く拳を握りしめ。
「やあぁぁああああああああああ!!」
でかいモンスターに向かって拳を一発打ち込んだと思ったら、拳の弾幕を打ち放ち続ける。
ズッバァン! ズッガァガァガァガァガァガァガァガァガァガァガァガァガァガァガァガァガァガァガァガァガァガァガァガァガァガァガァガァガァガァガァガァガァガァガァガァガァガァガァガァガァガァガァガァガァガァガァガァガァガァガァガァガァガァガァガァガァガァガァガァガァガァガァガァガァガァガァガァガァガァガァガァガァガァガァガァガァガァガァガァガァガァガァガァガァガァガァガァガァガァガァガァガァガァガァガァガァガァガァガァガァガァガァガァ!!!!
その拳の連打は千手観音の様に手が幾つにも見える。あえて言うなら。
「ウキウキ?」「ウキキウキウキ?」「ウィキィウッキキィー?」
何でもいいが、まあそんな感じにトウカはモンスターに連打を打ち続けている。
ハッキリ言って何処のバトル漫画でしょうか? 自分は出演する場所を間違えている気がします。
「うにゃにゃーん」
あれがいつもなんだ……。トウカ、ランボといつもどんな特訓してるんだ!? 自分にはあんな世界ついていけない……。付いていこうとも思わないけど。
しばらくすると不動の柱の様に立っていたモンスターはヨロヨロとふらつきだし。轟音を立て倒れた。
そして空中に滞空する様にいたトウカもシュタッと地上に降りてきて。
「何か呆気なかったね、トウイチロウ」
そう言って何か物足りなさそうなことを言っています。
トウカさん。普通ああ言う大討伐レベルの物は一人で倒すことすら難しいと思うのですが、君はどこの強い奴に会いに行くになろうとしているんだい?
そんな物足りなさそうにしているトウカに、ピンクサル達は「スゲェ!? ねぇさんスゲェ! マジ最強!!」とか持て囃していた。
「あ、ああそうか……。ありがとうトウカ。体は平気か?」
「うん! 平気だよ!」
力瘤を作るようにして大丈夫だとアピールするトウカ。
秒殺だったし、問題……は無さそうか。
じゃあ光となってアイテムに変わろうとしている、あのモンスターのドロップアイテムを拾いに行きますか。何だか色々と釈然としないけど。




