No.184
No.184
『バカですの!? いいえ貴方はバカですわね!!』
のっけから罵倒で自分を罵っているのは一月ぶりに出てきたドリルのお方。
『だから私を掘削機扱いするのは止しなさい! 『エヴァ』と言う名前を告げたでしょうに!』
『いやぁ~兄ちゃん。姉さんに罵られて羨ましいな。姉さん後で俺っちも罵ってください!』
エヴァと一緒に出てきたエロ猿ことハルシオン。こいつは出てきた途端、トウカにル〇ンダイブをかました。
それを見過ごさなかった自分とエヴァで術を使い応戦。
自分は煌めけ光弾でハルシオンの体をぶち抜き。倒れたところをエヴァが草木を使い縛り上げた。
エヴァは前回みたいにハルシオンの上に乗って押さえようとはしなかった。前回よほど気持ち悪い思いをしたのだろう。今だって蔓草を何重にも巻き上げるだけで、近寄るどころか会話すらしようとはしていない。
最もハルシオンは『これはこれでご褒美です』とか言ってる。
駄目だ。自分にはあいつの事が理解できん。顔はイケメンなのに、何故あそこまで人として駄目になれるんだろう?
『ちょっと聞いてますの? 私は確かに貴方に力を示しなさいと言いましたが、腕を無くしなさいとは言ってませんわよ!』
そんで何故エヴァに怒られているのかと言うと。たまたま自分が義手の交換をして要るときに、力が溜まったのか。二人が出てきて。ハルシオンをしばいた後。何で腕がないと聞かれたから、正直に答えたらこうなった。
自分だって無くしたくて腕を無くした分けじゃないんだが、結果を見たらそうなっただけで……。
『黙りない! まったく貴方といい、あの子といい、言い訳の仕方が何故同じようになるんですの!?』
知りませんそんなことは。きっと『あの子』と言うのが自分の真似をしてるんでしょう。
『ぶっ、ウキャキャキャ! 兄ちゃんそれ絶対あいつも同じ事言うぞ。ウキャキャキャ!』
『ハァ、頭痛がしますわ……』
ハルシオンは自分が言った言葉に何か思い出したようにバカ笑いしている。
エヴァはそんな自分達を見てこめかみをほぐしていた。
因みにもう一人居るティグリスだが、あいつは出てこなかった。きっとあの寝太郎さんの事だ。眠いとか面倒臭いとかの理由で出てこないのだろう。
まあ呼べば出てくるだろうけど、わざわざ呼ぶ理由はないからそのまま放置でいいや。
「あのねあのね、トウイチロウね。この間も腕無くすような事したんだよ! トウカが止めなかったら大変だったんだから!」
トウカはこの間ブタくんの最終確認の日に行った時の話をエヴァに話す。その話す内容はかなり盛っているが、事実なので黙っている。
『そうですの。それは良く止めましたわトウカ。良いですか。こう言ったバカなことをする子は、それが出来れば幾度も同じ事をしますわ。ですから貴女が側にいて、いつでも止めることの出来るようにするんですわよ』
トウカはエヴァの言葉に何度も頷いている。
自分も馬鹿じゃないんで二度同じ事はしませんよ。
『出来ると言うのが問題ですわ! 貴方たちは平気でそれを行うでしょうに! その上あれはこの間のモノとは違うとか言って、やり方が違うだけで危険なことには代わりがないと言うのに。こちらがやきもきする気持ちも考えなさい!』
むぅ『あの子』さんのせいで何やら自分も怒られてしまっている、理不尽な。
『…………ハァ、どうせ何を言ってもすぐ忘れて同じ事を繰り返すでしょうから、これ以上言いませんわ』
そう言ってトウカに『何かあったら息の根を止めてでも阻止するんですのよ』とか言ってる。
息の根止めたらダメじゃねぇ。
『貴方たちのような人は命を奪ってでも止めないと止まりませんわ!』
ゼェハ、ゼェハと息を乱して怒鳴るエヴァ。
鬱憤たまってるならハルシオンにしてくれませんか? きっと喜んで受けてくれるから。
そう言うとまた『があぁー!』と吠えられた。
「…………やっと解放された」
自分が何か一言言う度に『あの子』さんと同じだのやれなんのと、かなり長引いて怒られた。
「トウイチロウが怒らせるようなことばっかり言うからだよ」
そう言うつもりはないんだがな……? それよりこいつら出てきたら何か聞きたいことがあったんだけど、何だったけ? エヴァの怒鳴り声を聞いてて忘れた。
『人のせいにするんじゃありませんわよ! まったく。そちらに用が無いのでしたら、こちらの用を済ませてもよろしいですか? ここに居れば長く留まれるとは言え時間は有限ですから』
別にいいぞ。思い出せんと言うことはどうでも良いことだろうし。
エヴァはまたもこめかみをほぐしてからこちらに向き、身を正し。
『貴方は私が題した試練を越えましたわ。それ故に貴方は私の加護を受ける権利があります。どうされます「ああ! それか!」か? はい!?』
エヴァが話している途中で自分が聞きたかったことを思い出した。
「加護だ、加護! 神獣からの加護を貰うと姿が違うように見えるのはどう言うことだ!」
ティータはフクロウで自分はサルだぞ! サルが嫌いって訳じゃないが、自分から見る姿と他人から見る姿で違うのはどうしてだ! 自分が見える獣の耳を付けてるぐらいなら設定として分かりやすいが、顔まで変わるとは一体どう言う事だ!
『あーそれな……』
『……それですか』
自分が質問したことに何やら言い淀む二人。
何だ。なんかまずいことなのか、聞くことは? 前聞いた自分の本当の名前は契約条件になるとかなんとかなのか?
『いや……名前のとは違うな。これはなんて言うか』
ハルシオンはエヴァの方に目を向け、どうする? みたいなアイコンタクトをしていた。
それからエヴァは深い、本ぉ当に深いため息を吐いて。
『私達の加護を与える力は、精霊が他者に力を分け与える力を模して創られた術ですわ』
『模してるって言っても、その加護の力は精霊より俺っち達の方が何倍も強いんだが。まあこの術を創ったのが、時たま俺っち達の話に出てくる『あいつ』が創ったんだけど』
『まったくあの子は、何が『獣の加護を与えるなら獣の耳と姿は当たり前だよね。でもどっちかしか選べないのはやだから両方にしよう』とか言って、術式をいじくりまわして。自分の目には獣の耳を、他人の目には獣の姿に見えるように創り変えてしまったんですわ』
あ、あ、アホかぁあああああ!!!
自分が訳知り顔であの時、自然の摂理とか語ったのがアホらしく思えるわ!
あとその口調、やっぱあいつか!
自分は徐にその辺の石を手に取り、【万物の瞳】を発動させる。
【石ころ】:何の変哲もない石。バレちった。てへぺろ(・ω<) あのときのドヤ顔、バッチリ録画しておきました(@^▽゜@)ゞもち永久保存版デース♪
「うがぁああああ!!」
説明文を見た瞬間、思わず石を投げつけた。
投げた石は魔力が籠っていたらしく。投げつけた先にいたハルシオンの顔面にジャストミートした。
『うぎゃあー!?』
『きゃあ!? な、何しますの!?』
「すまん。件の『あの子』さんにおちょくられてな、思わず」
エヴァは自分にも心当たりあるのか同情するような目で。
『あの子は人の神経を逆撫でにするのも得意でしたから、ご愁傷さまですわ』
それからエヴァは改めて自分に加護をどうするか聞いてくる。
「貰ってもな。サル顔からウマ面に変わるくらいだろう。うーんやっぱ要らん」
『馬面って、確かに私が加護を与えれば馬系の姿になりますけど。断り方が可笑しくはありませんの?」
だからと言って貰う理由もないしな。なんか特典みたいなの在るのか?
『特典と言われると分かりませんが、私の加護の力は樹木を操りますわ。更に生命の力を宿していますから病気や怪我等は直ぐに治りますわよ』
ふーん。そう言えばハルシオンの加護はどんなんだ? 光って言うのは分かるんだが?
『俺っちの? 今兄ちゃんが言ったように光を操る力と、力を増幅する力を持ってるぞ』
力の増幅? どんな風にだ?
『ひとつの術の力を増幅かな。俺っちが良く使っていたのはそんな感じだった』
ふたつは出来ないのか?
『出来なくはないな。でも上手く制御しないと術同士で打ち消し合うぞ』
ほうこんな感じにか。
そう言って自分は義手を外し偽りし光の義腕を発動させてから、その腕で煌めけ光弾を作り出す。
そうすると互いの術は存在が不安定になり消失していく。
『おお、そんな感じそんな感じ。兄ちゃん器用に二つの術が使えるのか、俺っちは出来ないけど』
「だけど途中で消えるから意味がないだろう、これ。それと一時だけど、二つの術が使えた時が有ったんだが、それはどう言うわけだ?」
『それって兄ちゃんが腕を無くしたって言うやつか。うーん俺っち専門じゃないからなんとも言えないけど。そん時の兄ちゃんは瀕死の上に、集中力がバカ高かったお陰で術が保てたんじゃないかな? 同じ状況下で出来たら多分そうだぞ』
もう一度やれと言われてもやりたくは無いなそれは。
『当たり前ですわ! そう何度も同じ事をされたら周りの者が迷惑しますわよ!』
「そうだよトウイチロウ! やっちゃメッだよ!」
トウカとエヴァがハルシオンの言葉に自分がやるのではないかと思い、やるなと念押しをしてくる。
「ウキキ~、ウキキ~ウキッー」
ネタ振りじゃない。そんなこと言うとエヴァ辺りに叱られるぞ。
『悪いことをして無いのにそんなことしませんわよ。それでどうしますの? 受けますの? 受けませんの?』
貰っておいても邪魔には為らないと思うんだけど、厄介事が増えそうな気がするんだよな。さてどうするかな?




