No.175
No.175
時はブタくんが起きる少し前に遡る。
「やっぱり漫画を参考にするのは良くないな、うん」
「ウキキィ、ウキッ!」
言うなよ、反省してるんだから。あとなに、そのネットのような返答のしかた。だから指差して笑うなよ。
ブタくんは青白い顔をして眠っている。
そして自分はと言うとブタくんが起きたときに、何か食べられるものをと、豆のスープを作っている。
本当は今日の夕方辺りに炒り豆を作って「これが貴様の夕食だ」とか、やるつもりだったけど。急遽変更した。
「ウキ、ウキキィウキウキ?」
豆のスープを作りなからピンクサルが聞いてくる。
トウカに大量に食料を持ってきて貰ったから、お前らの分もあるぞ。
そう伝えるとピンクサル達は大いに喜ぶ。
ブタくんの方をもう一度見る。
倒れないようにブタくんを見ていたが、自分が思った以上に体力が無かったようだ。
青白い顔して寝ているブタくんは、今だ回復する気配がない。少々心配になってくる。
「ウキウキウキッー!」
ピンクサルが南無南無とブタくんを拝む。
縁起でもないことをするなよ!
しかしどうするかな。医療に関しては素人だし、このままで良いもんなんだろうか?
「ウキィ、キィキィ?」
「呼ぶ? 誰を?」
自分が疑問に思っていると、ピンクサル達は何やら寸劇を始めた。
「ウキ~。ウキ~」
「ウキキィ!?」
「ウキィ~、ウィキィ~」
「嘘つけよ。お前ら底無しだろう。最近じゃ腹痛すら起こさないだろうが」
余りの事に突っ込みを要れると。
「ウキッ! ウキキィ! ウキキィウィキィー! ウキウキキキィー! ウッキキィー!!」
そう突っ込みどころのある寸劇の最中、大きな声で助けを呼ぶピンクサル。すると。
あなたの心の声、確かに聞き届けました。
何処からともなく女性の声が聞こえる。
「「「「ウキッ!」」」」
騒ぎだすピンクサル達。
メェ~ディカル。ケミカル。メェ~ディック。
心の叫びを聞き届けたなら。必ずあなたの下へ駆けつけましょう。
草原を跳び跳ねるように薄い紫色をした何かがやって来る。
そして自分達の前にピタリと着地すると。
「お待たせいたしましたですよ。聖なる地の流離いの薬師『メェメェ』到着ですよ」
毛玉のような体から手足が飛び出てて、その場でくるりんと一回転をしてポーズを決める。
「ああ! この人が話に聞いてたメェメェさんか、なるほど羊か。みんな毛玉、毛玉言うから分からなかった。メェメェさん、先日は自分が大変お世話になりました」
自分がそう言うとメェメェは。
「おや、ですよ? メェメェを知ってるってことは、前に他のメェメェと会ったことがあるですよ?」
「他の……メェメェ? あなたじゃなくて?」
「ですよ。メェメェはこの辺りを担当しているメェメェで、メェメェとは初対面ですよ」
どう言うこと? メェメェが複数人要るってこと? それとも分裂…………ぷっ、いまあのモコモコから小さなメェメェが出てくる想像をしてしまった。まあ分裂はあり得ないだろうか、『メェメェ』と言うのは名称、役職のような呼び名だろう。
「それでですよ。患者さんはどこですよ? メェメェ診るですよ」
その辺は後で聞くことにしよう。
「こっちです。この子を見てもらえますか?」
ブタくんのところに案内する。メェメェは直ぐ様ブタくんを触診し始め。
「脈が少し乱れてるですよ。それと極度の緊張から来る寝不足、空腹と軽い脱水症状も起こしているですよ。むむむ、何をしたかは分からないですが無理はダメですよ」
ぐふっ!? 寝不足と空腹はともかく。脱水症状には気を付けていたつもりだったのに。
「…………すいません。彼を鍛えるつもりで訓練を課せたんですが、自分の監督不行き届きで……」
「ですよ。鍛えるのは良いですよ。でも無理をさせるのは禁物ですよ。ところで何をさせたですよ? 寝不足は仕方無しにしても空腹はおかしいですよ?」
えっ!? いや~それは…………。
「「「「ウキッウキキィムキィー!」」」」
自分が言い淀んでいるとピンクサル達が言い放つ。
しかも「自分達なら絶対やらねー」「飯食わせねぇとか信じらんねぇー」「人の皮を被った悪魔でした」と好き放題言ってくれてる。
そしてそれを聞いたメェメェは、ぎぎぎきと音が立つんじゃないかと言うくらいゆっくりとこちらを向き。
「………………………………ですよ」
ほの暗い笑顔で小さくポツリと呟く。
その後、メェメェから正座をさせられ。くどくどと体調管理の大切さと。根性論で訓練を行うことなど馬鹿げていると説教され。仕舞いには自分が先日無茶をして腕を無くしたことでも叱られる羽目になった。
「何でそんなに無茶するですよ! 聞いてるですよ!!」
「聞いてます聞いてます!」
「なら何で無茶させるですよ! 分からず屋なら、このメェメェでも『ちょっと使うのが躊躇われる』お薬を使って反省させるですよ!!」
「してます! マジスンマセン! だからそのやばげな薬はしまってください!」
土下座して許しを乞っている間にブタくんが目を覚ました。
「…………ええっと、どう言う状況ですか?」




