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No.155





 No.155




 ーーー翌日。


 聖地の朝は早い。

 日が登り始める頃には、もう動く者達がいる。

 しかしそんな中、いまだに寝ている者もいた。


 「……くぴー………………くぴー」


 空白地帯で有ると言うことを差し引いてもよく寝ていられる。

 いや緊張していた分が解け、一気に疲労が出てて来たのであろう。

 だが昨日も言ったが、今日からの十二日間はブタくんにとってーーー。


 「「「「ウキッ(デッド)ウキッ(オア)ウキッー(アライブ)!」」」」


 諸君。このいまだに惰眠を貪るブタくんを叩き起こせ!


 「「「「ウキッー(サー)ウィキキィー(イエッサー)!」」」」


 ピンクサル達は各々の道具を持ち。ブタくんの周りに立ち並ぶと。それを一斉に使い始めてた。


 ピっーーー! ドンドンドンドン! コンコンコンコンコン! シャカシャカ! シャカシャカ!


 各自、笛を吹き。太鼓を叩き。木の銅鑼を連打し。マラカスを振り鳴らす。すると。


 「ぶひゃぁぁああああ!? えっ!? なに!? 敵襲!?」


 自分の周りで大きな音がしたことで飛び起きたブタくん。

 周りを見て自分達だと言うことで安堵のため息を吐いた。


 「はあ~……び、びっくりしました。ええっと、な、何ですか? ……と言うか、何ですか…………その格好?」


 安心したブタくん自分達の着ているものに興味を持ったようだ。

 確かに昨日のTシャツにジーンズの姿とは違っているからな無理もない。

 まあ最初だけのサービスだ。特別に答えよう。

 昨日帰ってから軍服を作ろうとして、軍服ってどんな感じだったけ? と悩み。仕方なしに次に迷彩服を作ろとしたが、色合いが難しく断念して。最後に落ち着いたのがジャージだった。

 そう由緒正しき運動着のジャージをいま着ているのだ! チャックが作れず一繋ぎにしているが、間違いなくジャージだ! 色は黒だ! 三本線もあるぞ!

 あ、因みにピンクサル達も同じようなのを作ってやって着ている。


 「…………あの、それでこんな朝早く、なんでしょう?」


 ブタくんよ。貴様はもう忘れているようだな。貴様は性格改善を望んだと言うのに。

 まあ忘れていようがこちらは構わない。一度受けた依頼だ。どんな事があろうと十二日間はキッチリと、ガッツリと、どっぷりと自分の訓練を受けてもらう。

 さあ立て! 時間は有限であり。貴様の訓練は最早始まっているのだ!


 「あ、あのいまから(バシュン!)……ぶひぃい!? 光撃術!? な、何を!?」


 ブタくんの顔すれすれに光弾を撃ち込んでやった。

 言ったぞ。貴様の訓練はもう始まっていると。立たねば、次は貴様に当てる。嫌なら立て! グズグズするな!


 「ぶひぃぃいいい!? は、はいぃいい!?」


 ハイではない! 返事は『サーイエッサー』だ!


 「ぶひぃい! さ、さーいえっさー?」


 疑問文をで答えるな! バシュン! バシュン!


 「サーイエッサー!」


 ブタくんは跳び跳ねるように直立不動に立つ。

 よし立ったな。ではこれより貴様に訓練を与える。喜びの涙を流し励むが良い。


 「あ、はい。あ、ありがとうございます?」


 誰が発言を許して良いと言った! バシュン!


 「ぶひぃい!? ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!」


 ふん! これからは質問がある時は『サー質問があります。サー』と言え。気分次第では答えてやる。

 さて貴様との無駄なお喋りで時間を浪費してしまった。

 ではこれより訓練を開始する。最初の訓練は『走れ』だ。


 「えっ? 走r(バシュン!)すいませんすいません! サー質問があります。サー」


 何だ。もう訓練は始まっていると言っているだろう。貴様は言われたことを淡々とこなせば良いのだ!


 「あ、いや、でも、どこまで……?」


 貴様は馬鹿か! 自分が止めろと言うまでは走り続けるに決まっているだろうが!

 さあ分かったなら走れ! 走れ! 走れ! バシュン! バシュン! バシュン!


 「ぶひぃぃいいい!? さ、サーイエッサァァアアアーーー!!」


 やっと走っていったか。さてこちらも一緒に走らなきゃいけないのが面倒だな。ハア、でも仕方ない。請け負った以上はやらなきゃな。


 「ウキキ(これに乗れば)?」


 ピンクサルがブタくんの乗ってきた角竜(クルセル)を指差す。

 いや大人しいって聞いたけど乗馬の経験すらないんだが。


 「ウキウキ(イケるイケる)ウキィ~(見てろぅ)ウーキーキー(のーせーてー)


 ピンクサルが角竜(クルセル)に近寄り、幼稚園児か小学生のノリのように頼み込むと。角竜(クルセル)は一瞥だけすると。その巨体を動かし。ピンクサルを載せるような仕草をする。

 マジで!? お前ら話通じなかったんじゃないの?


 「ウキッ(誠意)!」


 今のどの辺に誠意があった!? まあ乗せてくれるんならありがたいが。操作とかどうするんだ?


 「ウキィ(真心)!」


 いやほんと意味分かんないし……。

 角竜(クルセル)の背に有る鞍に自分とピンクサル達が乗り込むと。こちらの意思を汲み取るようにブタくんを追いかけ始めた。

 おおっ!? 自動(オートマ)!? 自動(オートマ)なのかこれ!? すげぇ!

 のしのし走る角竜(クルセル)に驚きながら、ブタくんの走りを見守る。


 「ウキキ(なあなあ)ウキウキ(こんなんで)ウィキィー(変わるのか)?」


 ノリの良いピンクサル達は一緒になって手伝ってくれてるが。どうやらこんな方法でブタくんの性格が改善されるのかと心配しているようだ。

 あ、そうだ。因みにトウカとトラさんは今回の訓練には参加しない。トウカがブタくんとの会話が全く出来ないからだ。

 ブタくんの方もディータのように複数の言語が喋れるタイプではないみたいだからな。

 ちょこっとなら話せるみたいだけど、殆ど自分が通訳しなくちゃならんかった。

 そんなわけでトウカには別の任務を与えある。


 「ウキ(聞いてるか)?」


 おう聞いてる聞いてる。ブタくんの性格改善な。ぶちゃけ分からん。この方法も昔本で読んだやり方だからな。最初はバンジージャンプとかさせて度胸をつけさせようとしてたんだけど。こっちの方が良さそうだと変えたんだ。


 「|ウキィ(大丈夫なのか)ウキ(そんなんで)?」


 さあなでもその本では、心優しきスポーツマン達が勝負に勝つために、戦場帰りの少年に鍛え上げられ。虫も殺せないほど穏やかだった彼らが、見事殺人集団へと変貌する話だったんだが……。あの話面白かったな。


 「ウキ(それ)ウキィー(ダメじゃねえ)?」


 さすがに自分もそこまで買えるつもりはないから大丈夫だ。

 ブタくんの場合は話を聞く限り。ブタくんは生来の気弱さはあるが、あの自信の無さは多分。最後までやり遂げられなかった部分が大きいじゃないだろうか。

 家族の期待があると思い。家のため、家族のために奮闘してきたのに。その奮闘して積み上げてきた自信を、信頼していた家族によって潰されたんだ。自分では想像ぐらいしか出来ないが、相当ショックだったろう。

 だからこの訓練はまずブタくんを追い込む。

 ブタくんは追い込まれると覚悟を決めるタイプのようだしな。常にその状態にして緊張状態を保ち。この訓練をやり遂げさせる。そして自信をつけさせる。


 「ウキィ(上手くいか)ウィキィー(なかったら)?」


 「……………………さあ?」

 「ウキッー(おい)! ウィキィー(良いのかそれで)!」


 仕方ないじゃないか。こっちもこんな訓練初めてだし。憎まれ役なんて言う慣れないキャラまで作ってやってんだぞ。上手くいくかどうかなんて分からん。あとはブタくんの頑張り次第だ。


 「キキィ(それにしては)ウキキ(ノリノリだった)


 お前達を騙せてるんなら上々だよ。初対面のブタくんはさらに混乱して騙せる。自分としては心苦しんだ。

 そして歩き始めたブタくんに再び光弾を撃ち込む。


 「何を歩いている! 自分は走れと言ったぞ!」バシュン! バシュン!

 「ぶひぃぃいいい!? さ、サーイエッサー!」

 「ウキキ(楽しそう)ウィキィ(に見えるけど)?」


 いやいや、本当に心苦しんだよ。


 「止まるな! 貴様は走ることも満足にできんのか!」バシュン! バシュン!

 「ぶひぃぃいいい!」

 「ウキ(やっぱ)ウキー(楽しそうだよ)


 うはははは! 悪役と言うのは辛いなぁ! 自分の良心が痛むよ。















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