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No.149





 No.149




 「おーしぃ、そっちにー木ぃー倒すぞー!」

 「ウキキー!(ばっちこい)

 「ちげぇよ! 危ないから避けろって話だよ!」


 今日はトラさんの本来の住みか。大木が立ち並ぶ森へと来ていていた。

 もう三日も過ぎればオルテガさんが来るので、約束の品の準備に追い込みを掛けて要るところだ。

 本当ならもうちょっと早く終わったんだが。ピンクサル達(あいつら)が、時たまこうやって遊ぶから若干遅れてた。


 「ハア、まったくあいつらは。じゃあ虎丸、頼んだ」

 「にゃーん!(えーい)


 切れ目を入れてあった大木にトラさんの前足()一閃。

 それがだめ押しとなり。メキメキと音を立てながら大木がドスンと倒れていく。

 土煙が上がるなか周りに声をかける。


 「おおーい! みんなケガ無いか!」

 「にゃーん(平気~)

 「「「「ウキッキキィ!(もういっちょ来い)」」」」

 「だからそう言うのじゃないって……」


 周りに被害がない事を確認したら今度は自分の出番。

 【抽出加工】で余分な水分を取りだし。疑似乾燥をさせる。

 その後【木材加工】で均等な大きさに切り分け。木材運搬用に作った大八車に、切り分けた木を運ぶ。


 「運び終わるまで虎丸は少し休んでいてくれ。お前達運ぶぞ!」

 「「「「ウキッー!(ウースッ)」」」」

 「にゃーん(わかったのー)


 ねじり鉢巻をしたピンクサル達が何人も集まり、一本の木材を運んでいく。

 トラさんはその場で伏せるかと思ったら。自分の頭の上で休憩し始める。

 できれば他で願いたいんですが……。


 「うにゃーん(ここがいいのー)


 ……さいですか。ハア、んじゃこっちも運びますか。

 そうして同じように十本分の木材を切り分け。トウカさんが住んでいた空白地帯へと、木材が載った大八車を運んでいく。


 「これだけあると重すぎる……。ってかお前ら荷台に乗るなよ! 押せとは言わんが降りろよ!」

 「「「「ウッキィ~(え~やだ~)」」」」


 ったくこいつらは。

 ええっと、十本分の木材(一本分の長さ約十メートル太さ約三十センチ)はこれで良し。岩塩、箱(縦五十×横五十)を十箱、これも良し。米、麦を両方を十石(約一、五トン)、問題ないな。猿酒、樽四斗サイズを二十樽(七二〇リットル)。あるな。晶石、小玉サイズを五十個。

 サイズの指定とか無かったけど、こっちで決めちゃって大丈夫だよな。駄目なら駄目で今回は許してもらおう。

 あとは野菜と果物だけど、前日の方が良いよな。さすがに当日は厳しいから。


 「まだ足りないのもあるが、一応約束の品は揃ったな」


 予想外の事もあったから、期日までに揃えられるかちょっと心配だったからな。よかったよかった。


 「ウキ(もうする)ウキ?(事無いのか)

 「ある事はあるが今日する必要はないからな。終わりで良いな」


 そう言うとピンクサル達は「じゃあなにする?」「飯食うか?」「だったら旨いもんが食いたいぞ!」「おう、さんせいー!」と騒ぎ始めた。

 相変わらず食い気優先な奴らだ。


 「「「「ウィキィー(と言う訳で)ウキィー!(何か作って)」」」」


 土下座で頼むのはどうかと思うが、お前らの気持ちはわかった。たがな。


 「そろそろトウカを迎えに行かなきゃ行けないから。旨いもの(それ)はあとだ」

 「「「「ウッキィ……(ねぇさんを……)キキィ!(わかった) ウキキ!(我慢しよう)」」」」


 うーん大分トウカを上に置くようになったな。

 まあ当たり前か。トウカは少食だから残すことが結構ある。その残ったのをピンクサル達に分けてやってるから、奴らにとっては恵みの神様と言ったところか。

 それでその件のトウカだけど。現在ランボのところで強化術を教えて貰っている。

 最初は約束通り自分が教えていたんだけど。もちろんイメージで現象を起こせる魔法じゃなく。ディータに教えてもらった術文。ディータの国の霊術を。


 「ええっと『かめたしにゎるーー』」

 「まてまてまて! なんだその亀がどうたらって!?」

 「え? だって今トウイチロウがそう言ったよ?」

 「はあ? そんなことーーーあっ!」


 ここでトウカとディータが会ったときに、トウカはディータの言葉を理解していなかったことを思い出した。


 「なるほど、だからそんな言葉に。一応短い文を作ってみるから唱えてみるか?」

 「うんお願い、トウイチロウ」


 で、短い術文を作ってトウカに唱えさせてみたんだが。これがどう言うわけか、まったく何も起きなかった。

 自分が唱えれば術が起きてるから、術のイメージや文の意味。それ以外の要素が関係してるんじゃないかと踏んだ。

 それで今の段階だと自分がトウカに術を教えるのは無理だと判断したところに。定期的にミルクを持ってくると約束したランボが来て。ランボが使っていた強化術を思いだした。

 それをトウカに教えることが出来ないかと相談したら、一発OKだった。


 「自分みたいにチート能力がある訳じゃないから。トウカもそう一朝一夕にはーーー」


 迎えにいった丘陵地には、激しい打撃音と雄叫びが響き渡っていた。


 「はぁぁあああああ!!」

 「ウモォォオオ!!(うおぉぉおお)


 そこでは(トウカ)(ランボ)接近戦(インファイト)で殴りあっている。

 トウカが右拳(ストレート)を振るえば、ランボは体を最小限に動かし。躱しながら(ボディ)へと打ち込もうとすが。途中でトウカが反対の手で叩き落とす。

 それすら予想の範疇と言うように叩き落とされた勢いに乗り、回し蹴りを放つ。

 それを素早く戻した腕で回し蹴りをガードするトウカ。

 そして直ぐ様ランボの足を掴み地面へと叩きつけようとするが。ランボも叩きつけられたくないため。掴まれた腕を蹴り無理矢理脱出する。

 互いに距離が空くが、再び近寄り殴り合いを始める。


 「…………………………なにこれ? どこのバトルマンガ?」

 「ウキッー(現実を見ろよ)


 いやいやいやいや、可笑しいでしょう! ほんとうになにあれ!? 世界観違ってくるから止めようよ! 何であの二人は術の鍛練の筈なのにバトルマンガさながらの殴り合いをしてるんだよ! 


 「ウキ……(強いな……)ウキィ(何かワクワク)キキィー!(してきたよ)


 どこの超戦士のセリフだよ!? ああもう! 何でこんな突っ込みをしなくちゃいけないんだよ!




















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