No.139
死なないよ(ヾノ・ω・`)主人公居なくなったら話続かないし。
「ウッキキッー!」
いや無理だからね。
No.139
「おおっ、やっぱ死んでたか! あっはっはっ!」
「笑い事じゃないわよ! あの時あの『メェメェ』って言う賢獣が来てくれなかったら。私は一生物のトラウマを持ったところよ!!」
目の前で今だ青白い顔をして要る男は、他人事のように笑い続けている。
「はあ、はあ、あー苦しい。それにしても腹いてな。あっ腹に穴空いたからか? はッはッはッ」
「嫌味なのあなた!」
痛みで苦しんでいるのか、笑いで苦しんでいるのか分からない。絶対安静と言われてなければぶっ飛ばしたいところだ。
「んで、その『メェメェ』さんが来た後どうなったんだ?」
本当に他人事みたいに。死んでこの人の性格、少し可笑しくなったんじゃないの? それとも元からこんなんだったかかしら?
☆★☆★☆
「患者さんはそちらの方ですよ? メェメェが見ますですよ」
綿毛? と言うか毛玉に手足を生やした賢獣は、モコモコと自分の毛玉に再度手を入れると。小箱を取り出した。しかもそれが一つ二つじゃない。幾つもの小箱を地面に置いていった。明らかに体の大きさの割りには、数が不自然な程に出てきていた。
「な、言葉を!? あなたは『神獣』なの?」
しかし私はそんな事より言葉を、会話を出来ることの方に驚いていた。
「いえいえ。メェメェが『神獣』さまなんて畏れ多いですよ。メェメェはただ、メェメェが作ったお薬でお話し出来るようになっただけの賢獣ですよ。さあその方を診察しますですよ。場所を開けてくださいですよ」
語尾に『ですよ』と言いながら、メェメェと言った賢獣はトウイチロウに近寄り素早く触診していく。
私はそれを見て手際が良いと、やり慣れた者の作業だと思った。
「背中とお腹の傷が酷いですよ、それよりも特に右腕の方が厄介ですよ。これは死んで当たり前ですよ。でも遣り甲斐があるですよ」
触診し終わるとメェメェがそんな言葉を言った。
「何を言ってるの!? トウイチロウは死んだのよ! 生き返るわけーー」
「メェメェのモットーは『死んでなければ死人でさえ、無理やり生き返らせる』ですよ」
いやそれは無理でしょう。第一死んでなければ死人も生き返らせるって意味分かんないわよ!
トウカは私達のやり取りに付いて行けずポッカンとしていて。
猿の賢獣達はなぜか皆、手を横に振り。何かを叩くような動作をしていた。
「黙ってるですよ。事は一刻を争うですよ。まだこの方は死んでから間もないですよ。十分蘇生可能ですよ。これとこの薬で、先ずお腹と背中の傷を治すですよ」
メェメェその体からは想像もつかないようなスピードで薬を調合していく。
「さあこのお薬を塗って傷を治すですよ。その後こっちのお薬で失った血を少しでも取り戻すですよ」
「うそ!? 今の作業で同時に二つの薬を作ったと言うの!?」
「二つじゃないですよ。六つですよ。それを混ぜて合わせて作ったから二つに思えただけですよ」
速すぎる……。普通あんなに作業を早くやれば、薬なんかまともに精製できない。
「慣れもあるですよ。でもそれ以上にメェメェはこれしか出来ないですよ。だからメェメェは治療に頑張れるだけ頑張るですよ」
私が驚いている間も、メェメェは手を止めることなく。作業を続けていく。
私はそれを見ていて。
たった一つのことに集中して極めていく。この賢獣はダァーファ達と同じタイプの人だ。私とは真逆の……。
「ぬぬぬ、ですよ」
今まで淀み無く作業していたメェメェの手が止まる。
「どうしたの!? メェメェさん! トウイチロウ治ったの!?」
今まで黙っていたトウカ乗り出すように聞く。
「まだですよ。でも不味いですよ。このままじゃあせっかくの治療が無駄になるですよ」
「何が不味いのよ」
「メェメェの薬は患者さんの命があって初めて傷を治したりは出来るですよ。でも患者さんの失っていく命をメェメェはどうする事も出来ないですよ。お陰で次の治療に移れないですよ。もう少しなのにですよ」
今まで淀み無くしていたのにおろおろと困ったようにするメェメェ。
だけど手は止めているけど「何か手はないですよ? 考えるですよ!」と、必死に考えていた。
「メェメェあなた回復系の術は使えないの? そうすれば体力を補填することがーー」
「無理ですよ……。メェメェは薬を作って治療することは出来るですよ。それだけに力を注いできたですよ。だから使えないですよ」
項垂れるように言うメェメェ。
一つの事だけを極めたせいで他が全く出来ない。
何でここまで来て。
私も考える。
私の色属性『木』なら回復系統があるから回復術は使える。でも、ダァーファから教えてもらった術式は幾らかの攻撃術と防御術だけだ……。
即席で術文を作るにしてもちゃんと効果があるか分からないし……。
駄目なの……。結局諦めるしか方法がないの……。
中途半端でも極めた人でも救えないの……。
諦めたくないって思い始めた矢先に。
「………………メェメェさん。回復術が使える人がほしいんだね」
私がまた諦め掛けていた所に、トウカの切迫したような声が聞こえた。
「そうですよ。出来れば体力を回復ができる力の持ち主がいいですよ」
「わかった。がんばってみる」
「ちょっと待ちなさい! トウカあなた術は使えないって言ってたでしょう! どうするつもりよ!?」
トウカはこちらを真っ直ぐ見て。
「トウカ。トウイチロウやお姉さま、虎丸やおさるさん達のように出来ない。出来ることがないの。だからね。トウカは何も出来ないトウカにじゃなく。出来るトウカにお願いするんだよ」
「……何を言ってるの……? いえ違うわ。あなた何をしようとしてるの!?」




