No.133
トウイチロウ視点に戻って。
No.133
「はあ、はあ、はあ、しんどい。まったく何が悲しくて、こんな道無き道を走らなきゃならんのだろうな」
トウカ達を見送った後。ディータの周辺にはモンスターらしき光点が幾つも点在していた。
一応本人に動きが見えないことから、迷子であると自覚していんだと推測した。下手に動き回られるよりは良いんだが。
「一キロってこんな遠かったか? 距離長いなあ、コンチキョー!」
その上自分が派手に動いているせいか。カエルモドキがひっきりなしに襲ってくる。
「くそッ。トウカに言われて鑑定したいのに、それすらやってる暇がない!」
襲ってくる奴等は幾つも光の玉を作り当てているが、殆ど効果がない。
そりゃあデコピンで死んだら浮かばれんしな。
しかし襲ってくる数が少ないとは言え、こうもひっきりなしにだと相手もしてられない。
EXPのポイントを使って敏捷か、魔力値を上げるか。
でもこれってどれだけ上げたら効果があるのか分からないのが問題なんだよな。
今のところEXPのポイントはレベルの数で貰えるみたいなんだよな。レベル二なら二ポイント。レベル三なら三ポイントって具合に。
そういった意味じゃ基本値の上がりが悪い分、こっちで調整が効きそうだから有りがたいんだけど。
このレベルも最大値が九九やそれ以上とは限らないしな。
今のところ二十までは確実に在るとは思うんだけど。
一五で最大になったら、どう振ろうかものすごい悩むと思う。いや、めっちゃ悩む。確実に悩む。いまだってこうして悩んでるんだから。
GAAAAAA!
「ああ! 鬱陶しんだよ! いっそうレベルを上げて物理で殴れを体現するか! そっちの方が良さそうな気もしないんだけど」
せっかくのファンタジー。魔法が使えるのにそれを伸ばさないのはもったいない気もするんだよな。
「せめて最大値でも分かればやり用はあるのに」
GURAAAAAA!
「だから鬱陶しって言ってるだろうが!」
光の玉を投げつけながら自分でも殴りに行く。
本当はあのブヨッとした触感に触りたくないんだが。少しずつ個体のデカさが増してる気がする。
お陰で光の玉一発で撃退していたのが段々と難しくなってきていた。
ッチ! 手数が足りなくなってきたな。悩んでいてもしょうがない。この際魔力値に二十ポイントぶちこんで殲滅力を上げるか。
走りながらステータス画面を操作して、EXPポイントから魔力値へポイントを割り振る。
一気に三十台まではね上がり。作り出す光の玉の光量も増した。
GOAAAA!
「明るくはなったが、攻撃力も上がったかだよな。問題、は!」
襲ってくるカエルモドキに早速作り出した光の玉をぶつける。
ボンッ! と、圧縮玉を使ったときのように鈍い音がカエルモドキから聞こえると。そのままのカエルモドキは一撃で消え去っていった。
「おおっ……すげぇ! 効果あるじゃん! よし! こうなりゃあ魔力値に全振りだ!」
残っていたEXPポイントを全て魔力値に振る。
魔力値が八八に上がり。光の玉も眩いばかりに輝き。今まで手で投げつけた方が速いんじゃないかと言うほどの速さだった光の玉も、『光弾』の名に相応しいほどの速さでカエルモドキに襲いかかる。
「はやッ! これの速さってピンクサル達が異次元羽子板やってたときと同じぐらいじゃないか!?」
しかも光弾はただ速いだけでなく。さっきまでであれば、カエルモドキに当たれば役目が終えたとばかりに消えていたのに。今ではそのままのカエルモドキを貫き、他のカエルモドキに当てることも出来るようになっていた。
「すごいな、八十台……。一気に楽になったぞ」
今だ消えない光弾は、衛星のように自分の周りを回り続け。近寄ってくるカエルモドキを殲滅し続けていた。
「おっとそうだ、余裕がある今のうちにカエルモドキ見てみるか」
【落ちた獣の成の果て】
????によりその姿を変えられ、元に戻ることは出来ず、死ぬことすら出来ない存在に成り果てた。
この存在に意思はなく。たださ迷い歩くき、自らと同質の生物を襲い。同じ存在へと変化させようとする。
また倒しても時間が経てば再び出現して、????が倒されるその時まで、永遠と存在し続ける。
「『落ちた獣の成の果て』? もしかして以前土竜が言っていた悪しき獣ってこいつらの事か」
リアル版リポップモンスターだな完全に。
しかもたち悪い性質を持ってるみたいだな。下手にこいつらに取り込まれたら同じに存在のなるか。ゾンビじゃねんだぞ、まったく。
しかしそうなると下手にこいつを素手で殴ったりしない方がいいな。取り込まれたら厄介だ。
魔力に全振りして良かった。物理で殴れじゃヤバかったかもしれない。
「こんな厄介そうな相手だとはな。ディータが心配だ。今の位置は……!?」
ディータは動いてはいなかったがカエルモドキ、いや落ちた獣の成の果て。なんか言いにくいな。やっぱ戻そ。
カエルモドキがディータへと迫りつつあった。
「くそッ【地図記録】じゃ行ってない場所は詳しく表示されないから、どうなっているかが分からん。おい頼むから無事でいろよ!」
さらにスピードをあげる。ディータのところへ急ぐために。
「と言うわけだ。急ぐ理由が出来んでな。ここは押し通らせてもらうぞ!」
光の玉を幾つも作りだし、それを直線に撃ち出す。
光の玉は螺旋を描き光線の様になり。進路上のモンスターを根こそぎ消し去っていく。
そして光線が消えたあと。地面はディータへと続く道のように、道標が出来上がっていた。
「直ぐ行くからな! もうちょっとだけ待ってろよ!」
その道を駆け。ディータの下へ急ぐのだった。




