表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
127/376

No.127





 No.127




 「遅いわよ! 何してるの!」


 フクロウ姿のディータが少し腹を立てながら、大八車の前で待っていた。


 「ここの管理をしてるユニ子()に挨拶をして来るって言ったろ。それにそんなに待たせてもないだろうが」

 「管理? ここの聖地ってどこの国も管理してなかった筈よ?」

 「国の管理じゃない。この土地に元々住んでる賢獣が、それぞれの土地に別れて管理をしてるんだ。ピンクサルやトラさん(そこの二匹達)もそうだぞ。最もきちっと管理してるかは知らんけどな」

 「へえーそうなんだ。聖地に住める者ぐらいにしか認識してなかったわ。それで、管理って何やってるの?」

 「さあな。その辺は自分も良く分からん。ただ居るだけって言うのもあるし。庭いじり(ああやって)自分の好きなことをしているだけ、って言うのもあるみたいだけどな」

 「あなた本当に便利ね。賢獣の生態なんて殆ど知らされていないのに。でも今日はそっちの知識を深めるのはあとよ。それでどこに門があるのかしら」


 そわそわとしながらあちこちに顔を向け、門を探す。

 遠足を前にした子供かお前は。一応注意はしておくかな。まったく自分は引率の先生か。


 「門に入る前に全員に言っておくが。門の中での勝手な行動や、門の中にある物に無闇に触らない。危険な物や事があったらすぐさま知らせる。良いか必ず守れよ、分かったか」


 トウカやトラさんは素直に「はーい」と、返事をして。

 ピンクサル達は「飯があっても手を出しちゃダメか?」と聞かれたから、自分の判断を仰いだ後なら構わないと伝えた。

 そして一番注意をしなきゃいけない人物はと言うと。


 「あなたの指示にしたがってたら、好きに調査できないじゃない!」


 主にお前に言ってんだよ。

 護衛対象があちこち行かれたら大変だろうが。

 大体お前は門の中が危険な場所だって理解してるのか? 

 幾らこの間自分が相手した、カエルモドキが弱いと言っても。数で来られたら対処の仕様がなくなるんだよ。

 だから来る前に個人の能力と多人数相手に、どう動けるかを判断していたんだが。そこの超~足手まといさんは、自分で対処できると言うんですか? 多人数を相手できますか?


 「くぎゅ……じゃあどうやって調査したら良いのよ」


 脅威となる敵の排除をしながら周囲の安全確認。調査に関してはその範囲内で行い。対処不能な状況に陥ったら、即座に撤退。その場合、その時に手に入れた物などは全て破棄。安全第一が最優先だ。それが出来なきゃ帰るぞ。


 「…………少しでも調査はできるのよね」

 「ああ、問題無ければ範囲を広げても良い。その辺は融通利かせてやる」

 「なら良いわ……言うこと聞く」


 渋々と言った感じにしているな。

 目の前にご馳走があってそれを食べれないなんて事になったら、ピンクサル達なら暴動を起こすレベルで言っているんだからな。それを渋々でも了承しただけまだましかな。一応は目を離さないでしておくか。


 「それじゃあ各自、自分達の装備が問題ないか、最終確認したら出発するぞ」


 「おーう」とそれぞれ声をあげ、互いの装備を確認しあう。

 さて自分も支度をするか。


 「トウイチロウ、確認し終わったよ」

 「にゃーん(終わったの~)

 「「「「ウキッー!(準備完了)  ウィキィー(作戦は)ウキキィー(飯は大事にで)ウッキキー!(行くぞー)」」」」

 「終わったわよ」

 「もう少し待ってくれ。こっちもすぐ終わる」


 やっぱり向こうの方が確認だけだから早いな。

 一部変なのが混じってけど。……対処出来る範囲で頼むぞ。

 さて待たせるのも悪い。こっちも確認してしまうか。

 木のヘルメット(ヘルム)、OK。木の軽装鎧(アーマー類)、OK。バックパック各種中身、OK。ウェポン、石槍(メイン)石斧(サブ一)、′弓と矢×二十本(サブ二)石のナイフ×十本(サブ三)木の丸盾(シールド)全部OK。


 「よし、準備完了」

 「随分と重装備ね」


 準備の様子を見ていたのか、そんな事を言ってきた。

 自分の思い通りに動けないせいもあるのだろう。少々膨れっ面のディータの頭に手を置き。


 「護衛として約束したからな。守ると決めた以上はそうする。だからお前も無茶な行動は控えてくれよ」

 「……わかってるわよ」


 下を向き頷くディータ。

 おっ? あれだけ言ったから少し落ち着いたかな。

 熱が上がりっぱなしで行動されるよりは、良くはなったか。


 「それじゃあ『異界の門』へ、行ってみようか」




 自分の案内の下、何の植物かは知らないが。互いに絡み付いて出来たアーチ型の門の前に来た。


 「ここがそうだ。自分が先頭で入るから。その後虎丸。トウカ。ディータ。そしてピンクサル達(お前達)の順で入ってくれ」


 全員頷いたあと、ピンクサル達に最後尾を頼むと言うと。

 「後ろ(ケツ)は任せろ!」「ああ必ずお前の後ろ(ケツ)を守ってやる!」「だから後ろ(ケツ)の心配はするな」と、お前ら『後ろ(ケツ)』、『後ろ(ケツ)』と連呼するなよ。別の事に聞こえてくるだろうが。

 ピンクサル達に言われた訳ではないが、何となく尻を押さえながら門を潜る。

 その後も言われた通りの順番で潜ってくる。

 そしてしばらく歩くと。


 「ここが、異界の門の中……なのよね?」

 「お外とあまり変わらないね」


 二人は門の中に入ったわりには、景色の変わらなさにがっかりした様子だが。しかしピンクサル達やトラさんの様子がおかしかった。


 「うにゃにゃーん(いっぱいいるのー)

 「ウキッ。(ヤベぜぇ)ウィキィ(最初っから)ィイイ……(デットラインだぜ)

 「ウッキキッー(そっちがその気なら)ウキキッー!(やってやんよー)

 「ウィキィー(今こそ見せてやる)ウィイ(こん棒最強伝説)キィイイ!!(をなぁああああ)


 それぞれが威嚇するように周りを見ている。自分も慌てて【地図記録】(マップログ)を開き確認する。


 「これは……!?」

 「なに、どうかしたの?」

 「どうしたの? トウイチロウ」


 絶句する自分に二人が走ってこちらに近づいてくるが、それを止めた。


 「二人とも下手に動くな。そして全員、ゆっくりと密集する様に集まれ」


 自分の言葉に素直に全員従い集まる。


 「賢獣達の様子がおかしいから周りを調べたら、この辺一帯モンスターだらけになってやがる……」

 「モンスターだらけって……至って静かな森って感じだけど」


 確かに見た目はな。何処かに隠れているのか。擬態してまちかまえているのか。それとも様子を伺っているのか。どれにしても【地図記録】(マップログ)で確認できる範囲だけでも百は下らない数がいる。

 さていきなりトラブルだぞ。この状況じゃあ撤退したいんだが。

 チラリとディータを見る。


 「帰るなんて言わないでしょうね」


 そう言ってくるディータ。

 ……だよな、入って直ぐこれじゃあ無理だよな。それなら対処するしかないんだが。


 「トウカとディータは攻撃用の術が使えるか?」

 「ううん、トウカ教えてもらってないからムリだよ」

 「私は少しは使えるけど……」

 「単発型(単体)か? 範囲型(複数)か?」

 「……あえて言うなら設置型ね。上手くすれば複数いけるわよ。それより本当にモンスターがいるの?」


 相手が見えないせいで半信半疑なディータ。

 自分の能力で分かると言っても、理解されなきゃ意味がない。さてどうするかと悩むと、トウカがディータを説得した。


 「お姉さま、トウイチロウが言ってることは本当だと思うよ。虎丸やおさるさん達もみんな周りを気にしてるよ」


 トウカにそう言われ賢獣達を見るディータ。

 それぞれが頻りに顔を動かし、周りを警戒しているのを見て。初めて言っている事が本当だと理解したみたいだ。自分の言葉はそんなに信用できないか?

 それからディータはこちらに詰めより。


 「ちょっとどうするつもり!? ここまで来て何もせずに帰るなんて嫌よ私!」


 わかってるよ。こっちはそれを必死に考えてんだかな。本当は帰りたいんだぞ、こっちは。


 「虎丸が風の魔法を使えるのは知ってるが、ピンクサル達(お前達)はどうなんだ?」

 「ウキキィー(物を強くするのは得意)

 「付与か。虎丸は範囲攻撃って出来るか?」

 「うにゃにゃ~ん(前にしかできないの~)


 直線型か。

 そうなると自分以外は範囲攻撃が出来る者が居ないってこと!? マジで! 自分が頑張るしかないってことじゃないですか! あー本格的に帰りたくなってきた。

 すいませーん。頭痛が痛いので帰っていいですか?


 「ウキウキ?(言葉おかしくねぇ?)


 分かってるよ。わざと言ってるんだよ。それぐらい帰りたいってことだ。



















評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ