No.116
No.116
「すごいわね、ここ……」
「えへへ、これがね。竈だよ」
【陣地作成】で空白地帯と化した川原の一部を見て回るディータ、それを案内するトウカ。
縦横五十メートル程の敷地に、自分が使いやすいようにと、色々な道具等があちこちに設置してある。
外の文化レベルは分からないが。ここは電化製品がないだけで、それなりの物は揃っている。
下手をすれば地球に居たときの自分の部屋より、良い暮らしをしてるかもしれない。
「ちょっ、ちょっとなんなのよここは!?」
トウカの案内が終わったのか、血相を変えながらディータはこちらにやって来た。
「だから言ったろ。ここは空白地帯で、自分が住んでる場所だって。くっ、キャラメルっぽくなるのに固形にならない。これが今の自分に出来るかと言っていた理由か……」
【抽出加工】で取り出したサトウキビの汁を、石鍋で煮詰めなから砂糖作りをしていたが。これがなかなか難航している。
舐めれば煮詰めたお陰で白砂糖より黒砂糖のそっち系の味がするので。まあこれはこれで成功かなとは思ってはいる。
しかし習得技には何も習得していないので、これではダメだと言うことかもしれない。
「ちょっと聞きなさいよ。それからさっきからなに作ってるのよ?」
「聞いてるだろ。それとこれは調味料で、豆から作った醤油が出来始めたからな。砂糖醤油でも作って食べようかとーー」
「「「「ウキ!?、ウキキッ!?」」」」
お前ら反応良いな。食べ物に関しては。
ピンクサル達が自分が新しいなにかを作ってると聞くと、何を作ってるんだと聞きにやって来る。
「さっきのだんごだよ。まだ完成してないって言ったろ。これはそのだんごに付けて食べるように作ってるんだよ」
それを聞くとピンクサル達は「また変わった味が楽しめるのか」と納得していた。
だがお前達は、お前達用のだんごをつまみ食いした数が数だ。お前達が砂糖醤油でだんごを食べられるかどうかは、自分は知らんぞ。
「あ、あなた……賢獣と話せるの……なんで?」
ディータが自分とピンクサル達のやり取りを見て、自分が賢獣と意思疏通できる人間だと気づいたみたいだ。
面倒臭いことになったぞ。どうやって誤魔化すか。
「すごいよね~トウイチロウ♪ おさるさん達だけでなく虎丸ともお話しできるんだよ。ねえ虎丸~」
「にゃーん」
自分がどうやって誤魔化そうか悩む前に、トウカが暴露してくれた。
いやこの場合トウカを怒っても仕方がない。口止めしとかなかった自分の落ち度だ。
「何で話せるのよ!? そんなこと、誰も出来たことがないって聞くわよ!?」
ディータが掴み掛かるように自分に詰め寄る。
こっちは火の側なんだ、余り近寄るな。
自分が片手でディータの顔を押し返すようにすると。「ぐきき、話なさいよ、このッ!」と、百年の恋も一気に冷めるような潰れ顔で、さらにこちらに詰め寄ってきた。
お前なぁ、【麗しの美貌】と言う二つ名が泣くぞ。
さて、どうすっかな。
「ぐぬぬ、話す気がないのね。いいわだったらトウカに聞くもの。トウカなにか知ってる?」
「うーん、トウカはトウイチロウがおさるさん達とお話しできるってぐらいと。色々なものが作れたりするってぐらいかな。お姉さま」
自分が話さないものだからトウカへと聞き出すディータ。
トウカも昨日知り合ったばかりだから、そんなには知らない。まあそれは良い。だがちょっと待て。お前さっきまでトウカに対して、途切れ途切れな話し方をしていなかったか? それになんだその『お姉さま』って言うのは。どう考えても、背格好からお前の方がそう呼ぶ方だろうが。
それに対してディータに聞くと。
「さっきまでは言葉を思い出しながら喋っていたからそうだっただけよ。思い出せばこの『言の葉の使い手ディータ』には、何て事はないわ。お姉さまって呼ばせてる件? そんなの簡単よ。聞けばトウカは年が十だって言うじゃない。私は十五よ。なら私の方がお姉さん、そう呼ばれるのは当然ね。……だけどトウカが十才とは。他種族のところには発育が良い種族もあるって聞いたことがあるけど。良すぎでしょう! 少し私に寄越しなさいよ、まったく!」
まあ相変わらず長々と語ってくれた。聞いてるとこっちが疲れてくる。
トウカの年齢に関しては、幼児化して記憶も逆行しているようだから。本当の年齢はもっと上だと思うが。
それにしてもこいつ、今の自分と同い年なのか。見えんな。どんなに上に見ても中学生に成り立ての女子と言ったところだろう。日本に居ればロリコンさん達が、大挙して押し寄せて来てくれる事だろう。「Yesロリータ! Noタッチ!」とか言いながら。




