No.113
No.113
「トウイチロウ遅いね……」
「にゃ~ん」
おさるさん達は帰ってきたのにトウイチロウ何してるんだろう?
「ねえねえ、おさるさん達。ええっと猿太郎」
「ウキ?」
自分達で持ってきたトウモロコシを食べきり、食休みしていたピンクサル達に話しかけるトウカ。その中で名前をつけたサルを呼びつけ訪ねる。
「トウイチロウが何してたか知ってる?」
猿太郎と呼ばれたサルはトウカの前に行き。「ウキウキ」とジェスチャーをするが、統一郎ではないためトウカには伝わらない。
それでも最後に手で大きな丸を作り。笑顔で何かを伝えようとしているのが分かったので、統一郎は大丈夫なんだろうと言うことだけは分かった。
「もうすぐしたら帰ってくるかな?」
「ウキ!」「にゃーん!」
二匹はトウカの言葉に元気よく答える。そんなトウカも笑顔になると、食休みをしていた他のピンクサル達が騒ぎ出す。
トウカはどうしたんだろうとそちらを見ると。畑の方から統一郎が帰ってきたのが見えた。
ただしその後ろには見知らぬ、鳥の獣人族の女性を連れて歩いて。
「…………誰だろうあの人」
その女性と一緒に歩く統一郎を見て、チクリと胸に痛みが走るが。その胸の痛みをまだ理解できない自分がいた。
☆★☆★☆
「だから服を引っ張るなっての!」
「そんなこと言って、あなた何かにつけて私から逃げようとしてるでしょう。もう騙されないんだからね!」
あの後も再三逃げようとしたのだが。途中で気づき、逃げるタイミングを失った。
この鳥女と一緒にいると「ろくなことが起きないから逃げろ!」と、自分の勘が猛烈な勢いで言ってしょうがない。
あれだ。この勘の囁きは、前に土竜のところで門とこの土地の話を聞いたときに感じたものに近い。
と言うことはこの鳥女は、メインストリートに行かせようとするキャラと言うことになる。
オルテガさんとの約束がある手前。門へは行かなきゃなと思っていたんだが。新キャラで進めさせようとするとは。人には人のペースがあるんだぞ、まったく!
「「「「ウキ~」」」」
世の理不尽さを感じていると、トウカ達のところまで戻ってきたようだ。お出迎えにピンクサル達の流暢な声が聞こえて………………? 可笑しい。あいつらあんなに流暢に喋れたか? なんかこんなやり取りもつい昨日有ったような。
「ウキキ?」
一匹のピンクサルが近寄ってきて食い物をねだるが、持ってきてないと言うと。
「ウキィ~」
何て言ってくる。うん。やっぱり流暢に聞こえるな。
どうせ自分の知らないうちに【セフィリア言語】のレベルが上がったんだろうと見たら。案の定上がってました。
昨日確認したときはLv:5だったのに、今じゃLv:8まで行ってる。
Lv:5からLv:6でさえ上がりづらいのに。一気にLv:8……。何があった、とは言えないな。どうせ鳥女との会話で上がったんだろう。
しかし今一つ、レベルの上がり方が分からんな。
「……トウイチロウお帰りなさい」
トウカがトラさんを抱き抱え、自分のところにやって来た。しかしその目は、後ろのディータが気になるようで。おずおずと言った感じの挨拶になってしまっている。
「ああ、後ろのはさっき空から落っこちてきた鳥、じゃなくて、なんの種族だっけ?」
「木霊人族よ! 木霊人族! あなたまた私の事を鳥って言ったわね。そうだわ、その事でまだあなたの事ぶっ飛ばしてなかったわ! ちょうど良いから今から三発分ぶっ飛ばされなさい!」
シュッシュッシュッ、と背中に拳を打ち付けるが。実際には、ボスンッボスンッと羽毛で殴られたような感触があっただけだった。
しかしそれを見たトウカが。
「あー! 何でトウイチロウを殴るの!? トウイチロウなにもしてないでしょう!」
と自分を背中に隠し、ディータを威嚇する。
「ちょっ、なにこの人いきなり? それにその喋り方って……」
いけねえ、トウカの事説明してなかったな。
トウカは大人の体に子供っぽい喋りだから、違和感を持たれる事を懸念し忘れた。
しかしーー
「ーーその喋り方って、東方の鬼の国、【鬼皇国】の出身者ね」
ディータはそんなことを気にするようなたまではなかったようだがーーー。
「ねえ、トウイチロウ。このお姉さん何て言ってるの?」
「……はい?」
トウカの謎の質問に困惑を隠せない自分がいた。




