No.110
No.110
「姿? あんたの?」
こいつ何言ってんだと言った顔をしているが、こっちとしては結構重要ことを聞いてる。
「お前の主観で構わないから話してくれ」
「そうぉ。えーとっ、まず目につくのがやたらと着心地が良さそうな服ね。私も欲しいから持っていたらちょうだい」
いきなり服か? いや服は大事だな。服は良い文明だ。自分だってこの世界に真っ裸で来たんだ。うん服は重要だ。だが今はそこじゃない。
「そこは後で考慮してやるから、自分が聞いているのは姿だ。髪や顔、それ以外でお前が知る人と、何処か違う場所があるかどうかを聞いてるんだ」
「わ、わかってるわよ。ちょっと目についただけじゃない。ええっと、あなたの姿はーー」
さっき自分がしたように若干溜めが入り。自分の今の姿が語られる。
「金色、これはどちらかと言えば、黄色かしら? の体毛をしているわね。」
「はあ?」
ちょっと待て。今いきなり可笑しな事を言わなかったか? 色はまあいい。いや良くないが、体毛? ツルツルとまでいかなくとも。そこまで毛深いつもりはないぞ。
「もさもさじゃないけど、ふさふさはしてそうね、あなた。それに獣人族特有の獣の耳が頭にあるわ。それからーー」
自分が混乱する間にも鳥女の話は進んでいき、ついに。
「あなたの顔は、サルね。獣のサル。この辺は獣人族の中でも獣頭人族の一族の人よね、あなた」
「それだー!」
「キャッ、えっ!? なによ、大きな声出して!?」
自分の中で何かが可笑しいと感じていたモノの正体が分かった。それは当たって欲しくない事柄でもあった。
自分は普段の姿に、金髪に猿の尻尾が生えてる程度の変化だと認識して、いや実際触ったりしてみてもそうなんだが。どうやら相手からすれば、完全なる獣化した姿に見えるようだ。
「ちょっと、何か分かったんなら教えなさいよ」
以前カツヲが言っていたときは体の一部が変化すると言っていた気が、あ、いや、見ればすぐに分かるとも言っていたか。
「ちょっとぉ~無視しないでよ」
膨れっ面をさらし分かったことを説明しろと言う。
鳥女を見てもう一度考える。
「……なによ?」
自分の本来の姿を知っているのはピンクサル達やトラさん、トウカ、カツヲの四人だけ。
この中でもピンクサル達とトラさんは除外だな。姿が変わってもいなくても見分けがつくようだから。
トウカはどうだろうか。姿が変わっても驚きも指摘もしなかったからこっちも同じか。
となるとカツヲだけが姿が変わったときに指摘しただけになるな。
あの時カツヲから詳しく確認しなかったのは自分の落ち度だな…………はあ、今後は新しく入った情報とかは詳しく聞くことにしよう。
自分の中で情報を整理し納得できた部分もあるので。最終確認も兼ねて鳥女に聞くことにした。
「……お前は今の自分の姿を見て、普段の自分の姿と違うところが認識できるか?」
「むぅ、なによ。無視したと思ったらまた質問?」
自分が「いいから答えろ」と少し強く言うと、ビックとする。
そして「怒んないでよ~」と、少し涙目になりながら言ってくる。
もしかしてこの鳥女もトウカと同じように人見知りとかか? でも高圧的な態度もあることだし。どちらかと言うと怒られ慣れていないのか?
「怒ってはいない。自分の中で答えは出るんだが、確認のために聞いているんだ」
「そう、……怒っていないのね。……そうよね、そうよね! 私を怒るのなんか『ダァーファ』だけだもんね!」
……後者か。そして今の発言でこいつがやんごとなき身分の可能性が出てきたな。
その後自分の容姿についてよくまあ、そこまで自画自賛でるなあと、感心するぐらい自分を褒め称えていた。最もこっちも聞いちゃいなかったが。右から左にスルーだ。
「ああ分かった分かった。自分大好きなのは分かったから」
「なによぉ、あなたが私の容姿を語れって言ったんでしょう」
「語れとは言っていない。違うところはないかと言ったんだ。それで今自分の普段違うところは腕に羽があるってことだけなんだな?」
鳥女はくるくると自分の容姿を見て。
「そうね、それぐらいしか見当たらないわ」
「やっぱりか……」と深いため息をついた。
そして自分は意を決して鳥女に告げる。
「自分達の認識確認が取れた処で、残念なお知らせだ」
「……なに?」
自分の真剣な言葉に耳は傾けるがなぜか臨戦態勢をとる鳥女。
何か勘違いしてるみたいだが、お前みたいなのを襲うとかしないから安心しろ。
「…………今の自分達の姿は他人から見たら、お前が言った獣人族って種族になるみたいだぞ。しかも獣頭人族だったか、の方のな」
「…………………………へっ?」
真実を告げた自分の言葉に、間抜け顔をさらした鳥女がそこにはいた。




