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No.109





 No.109




 「この鳥人間、どうするかな……」


 空から落ちてきた女の子を、このままここに置いておいた方がいいか悩んでいた。


 「空から女の子か……。これが美少女とかだったら、とか考えるけど、鳥人間じゃな……」

 「……さっきから聞いてれば鳥人間って誰のことよ……。もし私のことだったら、ぶっ飛ばすわよ……」


 鳥人間の女の子が意識を取り戻し。弱々しくも自分に悪態を吐いてきた。


 「おっ、起きたか。助けたくれた人がいなかったら怪我じゃすまなかったぞ、お前。何で空から落ちてきた? やっぱあれか、聖地の力に呑み込まれたってやつか?」

 「そう、ここが聖地で間違いないのね。途中から変な違和感を感じてたから。もしかしたらあれが話に聞く、『混濁』なのかなって思っていたけど」


 自分の中で何か納得できることが出来たのだろう。仕切りに何度も頷いている。

 それはいいのだが、この鳥人間。人の話を全く聞いてないな。あれか、都合の良いこと以外は耳に入らないタイプか?

 鳥人間の女の子はグッと握りこぶしを作り、空に打ち上げるように突きだし。


 「私は、私はついに聖地に来たぞー!」


 そして大きな声を張り上げると。


 ぐぎゅるるるるる~


 と盛大に腹の音も鳴った。


 「大声出したらお腹が……そこのあなた。聖地に要るってことは、資源隊か何かでしょう。何か食べ物くれない」

 「食べ物ったて今は持ってないぞ。それに食べられるものだったら、そこらにいっぱい有る。ってかお前空から落ちてきたのは、腹が空きすぎて落ちてきたからなのか?」


 鳥人間の女の子は仏頂面をさらし。


 「こんなに掛かるとは思わなかったから。三日ぐらい前に食べたっきり食べてなかったのよ。あと食べられるものがどれか分かるわけないでしょう。食べられるものを持ってきなさいよ。気が利かないわね。あ~ほんとお腹減ったわ……」


 ああなんとなくわかった。この子人の話を聞かないタイプの上に、アホの子なんだ。とても行き倒れの態度とは思えない。

 自分は仕方ないと頭を掻きながら。トウモロコシ畑が少し先にあったので、そこまで行き。一本手折って持ってくる事にした。


 「早く持ってきなさいよ~」

 「何処かのお姫さまか何かか、あいつは?」


 やれやれと言いながら、トウモロコシ畑まで来て。一本手折ろうとしたら。その横から誰かにトウモロコシを持っていかれた。


 「なっ!? ってお前らか、こんな所で食ってたのか?」


 いつの間にいたのか。そこには口いっぱいにトウモロコシを頬張った、ピンクサル達がいた。


 「モキュキュ(ほぐぐった)?」

 「いや何言ってんのかわからんし。口の中のものを飲み込んでから言えよ」


 ピンクサル達は飲み込んで話すどころか、さらに食の手を進めた。


 「話さないのかよ! はあ、まいいや。一本もらっていくぞ。それと知らん奴が向こうに居るから、皆のところに戻ってろよ」


 ピンクサル達は手を上げ、「了解~」と言った感じにすると。両手と四本の尻尾に持てるだけのトウモロコシを持って、トウカ達の方へ向かっていった。


 「こっちも戻るか」


 トウモロコシを一本だけ採り。先程の、ああもう鳥人間の女の子とか面倒臭い。鳥女でいいや。鳥女のところまで戻った。


 「遅いわよ。なにしてんの」

 「それが人に採ってきて貰った態度かよ。ほらよ」


 悪態が吐きたいのはこっちの方だと言うが、鳥女は何のその。全く堪える様子がない。

 そして放り投げるように手渡されたトウモロコシを見て。


 「何? この黄色くて粒々がいっぱいなのは、何となく気持ち悪いわね」


 胡乱(うろん)げな表情でそう言った。


 「トウモロコシって言う食べ物だ。本来は煮るか焼くかの方が良いんだが。腹減ってるんだろう? 生でも食えるものと思って持ってきてやったんだから、ありがたく思えよ」

 「ふーん、そう。ありがと」


 言われたから言いました、と言った感じで言われても、ありがたみも何にもないぞ。

 鳥女はしげしげと見たあと、意を決したようにしてからトウモロコシを食べた。


 「もぐもぐ、かたいわね。でも甘いわ」


 そう言って手を差し出してきて、クックッと手招きをして、もう一本寄越せと示唆してきた。


 「無いよ。欲しければ自分で採ってこい。あそこに生えてるから」


 指で指し示してやるが、鳥女はがっかりしたように肩をすくめ。


 「使えないサルねぇ。お腹減ってるって言ったでしょう」

 「誰が猿だ。自分は人間だ。お前の方こそ鳥女だろうが」

 「私は木霊人族(エルフ)よ。見てわからないの? それよりあなたが人間族(ヒューム)!? 何処がよ。どっからどう見ても獣人族(ワイルド)じゃない。っ言うか、やっぱり鳥って、私のことだったわね。ぶっ飛ばすわ!」


 捲し立てるように言い放つと。トウモロコシを片手に握りこぶしを作り。それをシャドーボクシングをするように何度も打ち出す。

 ちょっと待て? 猿顔とかなら間違えるかも知れないが種族すら間違えるか?

 それにこの鳥女、自分をエルフって言ったぞ? あのファンタジーでお馴染みの()()エルフだよな? 何処がだ? 


 「おいちょっと待て」

 「なによ? 今さら泣いて謝って土下座をして命乞いしても、あなたをぶっ飛ばすのはやめないわ!」


 そこまでしたのならやめろよ。


 「……少し確認させろ、鳥女」

 「あーまた言ったわね! 二発ね。二回ぶっ飛ばすわ!」

 「話が進まないだろ! いいから聞け!」


 自分が強く言うとビックとして、打ち出していた手を止め。怯みながら虚勢を張る。


 「……な、なによ。凄んだって怖くないんだからね。わ、私は神獣の試練だって越えた女よ。凄んだって怖くないんだからね。ホントなんだから」


 そんな姿を見てこの鳥女は、人の話を聞かないタイプで自己中でアホな子だけど。心は素直な子のようだと感じた。


 「はあ、確認だけさせろ。これは事によってはお前にも関係することだ」

 「……な、なに?」


 ごくりと喉をならし身構える鳥女。

 少々溜めを作り、自分でも有って欲しくは無いと願いながら。




 「…………今お前から見て、自分はどんな姿をしている?」


 そう聞いたのだった。


















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