表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
106/376

No.106





 No.106




 「ふぅ、結構刈り取ったか。トウカー疲れてないか?」


 一時間位経った頃だろうか。

 近くで作業して要る筈のトウカに声をかけると。トウカは作業をしておらず、何やら空を見ていた。

 何か有ったのかと思い、トウカに近寄り聞くと。


 「あのねトウイチロウ。あそこにね、大きな鳥さんが要るの」


 トウカが指差した方角を見ると、フラフラと鳥(?)ぽいのが飛んでいた。


 「なんだ、ありゃあ?」


 少しずつ近付くにつれ。その輪郭がハッキリしてくると。鳥と言うより翼の生えた人間のように見えた。


 「あーなんだろう。なんか厄介事が来たような気がする」


 おいおい。昨日の今日だぞ。立て続けすぎないか?

 もう少しのんびりさせろよ。


 「トウカ、虎丸。作業一旦中止。ピンクサル達(あいつら)にも集まるように言わなきゃなーーー」


 危険がある相手だとは思いたくないが、用事に越したことはないからな。

 そう思ってピンクサル達の方へ行こうとすると。


 「あっ!? トウイチロウ! 鳥さんが落ち始めた!」

 「ーーーなに!?」


 慌ててそちらの方を見る。

 鳥人間はフラフラ飛んでいた筈が、意識を失ったのか。まっ逆さまに落ちてきた。


 「くっ! ここからじゃ間に合わん! 虎丸!」

 「にゃーん(むりー)


 ここん所万能を見せてくれたトラさん(虎丸)からの否定の声。


 「落ちちゃうよ~トウイチロウ~」


 トウカの焦る声。

 分かっては要るが、実質距離がありすぎる。到着した頃には潰れたトマトを見ることにな。

 それに例え間に合ったとしても救出手段がーー。

 そんな自分でさえ見ていることしかできない状況のなかで。

 聖地の守護者。

 穀倉地帯の救世主が砂塵を巻き上げ。雄叫びを上げながら現れた。




 「ブモォォオオオオ(うおぉぉおおおお)!!」




 白と黒のツートンカラーの体に銀の魔力を纏い。落ちてくる鳥人間に向かい。懸命に走り続ける穀倉地帯の見張り番、ランボ。

 その走りの勢いを殺すこと無く、鳥人間に向かい大ジャンプをする。

 その人形のような体躯で、人間サイズの鳥人間を見事空中キャッチ。

 着地も無事成功し、両名とも無事の様だ。


 「おおぉぉ!!」


 奇跡の救出劇を目の辺りにして、思わず拍手が出た。


 「おっと感心してる場合じゃなかった。自分は行ってくるから、トウカは虎丸と一緒にいるんだ」


 トウカは一瞬来たそうにしていたが、自分が強く言ったためその場に残った。

 相手が危険人物かまだわからないからな。

 それがわかったのか。トラさん(虎丸)はトウカの頭にかけ登ると。一声鳴き、「まかせてー」と言っていた。

 自分はそれを聞き頷くと、直ぐ様ランボの所へ走り出した。

 ランボの所まで走りより。落ちてきた人(?)を見れば、やはり人の姿をした鳥の様だ


 「お見事でした。自分も気づきはしたのですが……」

 「ウモ(きにするな)


 ランボは手を振り、これが仕事だと言わんばかりの態度だった。

 言葉が分からなかった時も感じていたが。こうして言葉が分かるようになると、より一層ストイックさが伝わるな。

 ランボは鳥人間を地面にゆっくりと置き、怪我が無いか確かめていた。

 自分もランボの邪魔をしないよう鳥人間を観察する。

 身長は百三十ぐらいか? 羽毛があったりするから、もしかしたらそれ以下かも知れないが。

 それからその羽の色だが、全体的に薄緑色をしている。

 顔の部分には人の顔ではなく鳥の顔があり。なんかフクロウのような顔つきをしてる。

 翼は背中にあるタイプではなく。両腕が翼のようになっていて、それで羽ばたくタイプのようだ。

 服装は軽装。と言うより布巻いた程度の服とも呼べない物だ。

 きっと飛行するのに出来るだけ軽くした結果が、これだったのだろう。

 そしてその服装から分かることだが、どうやらこの鳥人間。女性のようだ。


 「他は手荷物らしいものも無しか……。()()も見当たらないな」

 「ウモモ(いじょうはないな)


 ランボの触診も終わったようだ。


 「お疲れ様です。すいません、自分からは見えなかったのですが。その方が腕輪の様な物をしていませんでしたか?」

 「ウモ(うでわ)? ウモッ(ないが)


 やっぱり持ってないか。

 となると、知らずに聖地に突っ込んできた馬鹿か。加護者と呼ばれる者のどちらだけど。前者はあり得ないな。苦しんでる様子も見られないし。

 取り合えずランボに聖地で倒れている者が要る場合、知り合い以外はどうしているのか聞くと。通常命がある場合は、聖地の外へ持っていき、そこへ置いてくるそうだ。

 そして命が無い者の無い場合は、あの巨大な大穴へと放り込む(埋葬する)そうだ。

 そうだよな何でも消え去るって事は、手間要らずって事だしな。墓なんかいちいち作ってたら大変だ。


 「ウモウモ(ではじぶんはいく)ウモッ!(あとはまかせた)


 うーん、どう考えても厄介事案件な気がするし。このままランボに任せて、自分達は家に帰るかな。って、えっ!? 帰っちゃうの!?

 ランボは「まだ見回りがある」と言って行ってしまった。そんなストイックさは今は要らないよ。カムバックー! ランボさーん!

 走り去っていくランボを見送ったあと、鳥人間の方を見て。


 「……このまま置いて帰ったら、味悪いよな、やっぱり……」


 知らない人間とはいえ、それはないよな。

 聖地の外ってどの辺だろう?
















評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ