賽は投げられた
「おい、分隊11番の奴らが向かったんじゃねぇのか?そんなあっさりと…」
「ノームさんも…ラピスさんも歯が立たない状態で…分隊も壊滅です」
テッペイが苛立ったように告げた質問に対し、焦ったように哨戒兵が答える。
「やむを得ん。恭弥、行けるか?」
「あぁ、いつでも大丈夫だよ」
アリスが転移魔法の準備をしているらしく、客間の床に半透明の魔法陣が広がる。
「よし、全員…行くぞっ!」
客間に白い光が満たされ、意識が飛びそうになる。
アリスの右手が、俺の手を優しく握っていた。
××××
「…ひでぇな」
テッペイがそう漏らす。
賑わっていたはずの町並みは黒煙を上げ激しく燃え、人の気配もない。
そしてその炎の中に佇む上級悪魔。かなり人型に近いような見た目だ。
「ラピス!ノーム!」
アリスが軽い悲鳴のような声で部下の名を呼ぶ。しかし気を失っているのだろう、返事はない。
「随分遅いんですね、人間さん」
スーツを着た礼儀正しそうな悪魔は顔に付着した血液を拭い、こちらを伺う。
「ゴミみたいな魔力で…止められると思っていたんでしょうか。滑稽ですね」
嘲笑する悪魔。それを見たティアは激昂したらしく、悪魔に向かって歩み寄る。
「おい、ティア!てめぇ十三人目の地獄を…」
そう、十三人目の地獄は彼女のもう一つの人格。ティアとは正反対の人格だ。
「わっちは大丈夫だから。」
しかしティアの声は落ち着いていた。
そして次の瞬間、左眼だけ…正確に言うならば左半身だけが紅い魔力に包まれた。
「おぉ、ついに私を認めたのかい?」
「悔しいけど、あんたの力が必要なの。」
「暴れる理由ができて嬉しいわ」
彼女は十三人目の地獄を受け入れ、和解し、コントロールできるまでになっていた。
「ティア…」
「ロイ、大丈夫よ。もう十三人目の地獄は二度と地獄なんて生み出さないから」
「…ほぉ、人間にしてはなかなかですね」
「減らず口を…使い魔【ケルベロス】ッ!」
無詠唱で放たれる高度な魔法。
戦いの火蓋は今切って落とされたのだ。




