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PSY-001《目が覚めたら、身体の大半が機械になっていた》

連載版!!不定期です!!

この第1話は変わらずです!第2話から新ストーリーです!


連載版から第1話をPSY-001としました!

PSYはサイボーグのサイですPSY!SAY!

 目が覚めた。


 見慣れた天井だった。


 白い壁。

 カーテンの隙間から差し込む朝日。

 枕元には昨夜飲んだペットボトル。


 間違いなく、俺の部屋だ。


「……あれ、何かすんなり目が覚めたな?」


 そう呟きながら、右手で目をこすろうとした。


 ――カシャ。

 聞き慣れない音がした。


「…………ん?」


 右手を見る。

 銀色だった。


 いや。

 銀色の手袋をしているとか、そういう話ではない。


 関節部分には細かな機構が見え、五本の指が俺の意思に合わせて滑らかに動いている。


 試しに手を握る。

 ウィン、と小さな駆動音。


「…………」


 左手を見る。


 こっちも機械。

 布団を跳ね飛ばす。


 両脚も機械。

 慌ててシャツをめくる。

 腹も。

 胸も。


「身体の大半が機械になってるぅぅぅぅぅぅ!?」


 朝っぱらから絶叫した。

 その瞬間。

 頭の奥で、昨日までの出来事が一気に蘇ってきた。


◆


 そうだ。


 俺は死んだんだった。


 仕事を終えて家に帰る途中。

 横断歩道を渡っていた俺の視界いっぱいに、突然トラックが現れた。


「え?」


 それが、人生最後の言葉だったと思う。


 次に気がついた時、俺は真っ白な空間に立っていた。

 目の前には、いかにも神様ですと言わんばかりの白い服を着た男。


『あなたは死亡しました』


「知ってます」


『ずいぶん冷静ですね』


「トラックに真正面から轢かれましたからね」


 あれで生きていたら、その方が怖い。


 神様らしき男は咳払いすると、申し訳なさそうに言った。


『あなたには異世界へ転生していただきます』


「出たよ」


『え?』


「いえ、こっちの話です」


 まさか自分の人生で本当に異世界転生イベントが発生するとは思わなかった。


 しかも説明によると、転生特典としていくつか願いを叶えてくれるらしい。


 俺は考えた。


 異世界。

 魔物。

 病気。

 戦争。

 衛生環境も現代日本より悪いだろう。

 だったら一番必要なのは――。


「病気にならない身体が欲しいです」


『なるほど』


「あとは簡単に死なない身体」


『はい』


「できれば頑丈で、怪我もしにくくて、毒とかにも強くて」


『ふむふむ』


「疲れにくい身体だったら最高ですね」


『承知しました』


 神様が微笑んだ。


『それでは、あなたの希望をすべて叶えましょう』


「え? 本当に全部?」


『もちろんです』


 その時の俺は思った。


 なんて気前のいい神様なんだ、と。


 五分後。

 俺は草原の真ん中に立っていた。


「おお……!」


 青い空。

 広大な草原。

 遠くには中世ヨーロッパ風の街。

 剣と魔法の世界。


「本当に異世界だ!」


 興奮して一歩踏み出す。

 ガシャン。


「…………ん?」


 もう一歩。

 ガシャン。


「…………」


 恐る恐る自分の手を見る。

 銀色。

 脚を見る。

 銀色。

 胸を叩く。

 コンコン。

 金属音。


「おい神ぃぃぃぃぃぃ!!」


 俺の身体はサイボーグになっていた。

 確かに病気にはならない。

 確かに頑丈だ。

 毒も効かなそうだ。

 怪我もしにくい。

 疲れもしない。


「そういう意味じゃねえだろ!!」


 空に向かって叫んだが返事はなかった。


◆


 ところが。

 この機械の身体。

 使ってみると、とんでもなく強かった。


 最初に襲ってきた狼型の魔物。

 殴ったら飛んでいった。


 森で遭遇した巨大な熊。

 殴ったら飛んでいった。


 盗賊十人。

 殴ったら全員飛んでいった。


 剣で斬られても、

 キン!


「いてっ」


 で終わる。


 矢を受けても、

 カン!


「危ないな」


 で終わる。


 毒を飲まされても、


「これ結構うまいな」


 普通に飲めた。


 炎の魔法を受けても、表面温度が少し上昇した程度。


 しかも俺の視界には、なぜか敵との距離や移動速度まで表示される。


 走れば馬より速い。

 岩も持ち上げられる。

 暗闇でも普通に見える。


「……これ、チート能力よりひどくない?」


 転生して三日目。

 近くの街へ向かっていた俺は、大勢の兵士が走り回っているのを見つけた。


「何かあったんですか?」


「大変だ!」


 兵士の一人が青ざめた顔で叫ぶ。


「魔王が召喚された!」


「魔王?」


「北方の魔王城に、ついに魔王が降臨したんだ! このままでは世界が滅ぼされる!」


 来た。

 異世界転生テンプレ。


 ここから仲間を集める。

 剣士。

 魔法使い。

 僧侶。

 もしかしたら美少女エルフなんかも仲間になるかもしれない。


 各地を巡ってレベルを上げ、伝説の装備を集め、幾多の試練を乗り越えて――。


「魔王城ってどこです?」


「あの山の向こうだが……」


「了解です」


 俺は走った。

 三時間後。


「ここか」


 魔王城に着いた。


「早すぎるだろ」


 自分でもそう思った。


 門を蹴った。

 吹き飛んだ。


 魔物が百匹くらい出てきた。

 全部殴った。

 吹き飛んだ。


 巨大なドラゴンが現れた。

 殴った。

 吹き飛んだ。


 そして最上階。

 巨大な玉座に座る男がいた。


『よく来たな、人間よ』


「どうも」


『我こそは魔王ヴァル――』


「すみません」


『なんだ?』


「今日中に宿を取りたいんで、巻いてもらっていいですか?」


『…………』


 魔王は怒った。


 世界を闇に包むとか、人間を滅ぼすとか、神々に復讐するとか色々言っていた。

 そして巨大な黒い魔法を放った。


 俺は右拳を握った。

 全力で殴った。


 ドゴォォォォォン!!


 魔王が玉座ごと壁を突き破って消えた。


 俺はしばらく待った。

 戻ってこなかった。


「……終わり?」


 異世界生活四日目。


 魔王を倒した。


 仲間、ゼロ。

 伝説の武器、ゼロ。

 冒険、ほぼゼロ。


 その日の夜。

 頭の中に神様の声が響いた。


『世界を救っていただき、ありがとうございました』


「早すぎない?」


『こちらとしても予想外でした』


「でしょうね」


『役目を終えましたので、希望されるのであれば元の世界へ帰還できます』


 俺は固まった。


「帰れるんですか?」


『はい』


「元の生活に?」


『はい』


「じゃあ帰ります」


 即答した。


 異世界も悪くなかった。


 でも四日だ。

 ホームシックになる暇すらない。


 俺の部屋もある。

 パソコンもある。

 ゲームもある。

 コンビニもある。

 風呂もある。


「帰してください!」


『承知しました』


 光に包まれた。


◆


 そして俺は、現代日本へ戻ってきた。


「帰ってきたぁ!」


 自分の部屋。

 見慣れた机。

 パソコン。

 ゲーム機。

 全部そのままだった。


「いやー、やっぱり自分の部屋が一番――」


 そこで気づいた。

 机に置いてあったスマートフォンを取ろうとする。

 銀色の手。


「…………」


 脚を見る。

 機械。

 胸を見る。

 機械。


「この身体のまま帰すなよ!!」


 完全に忘れていた。


 異世界では鎧姿の人間なんて珍しくない。

 多少機械っぽくても、珍しい魔道具とかゴーレムとかで誤魔化せた。


 でもここは日本だ。


「どうすんだよ、これ……」


 会社。

 絶対無理。


 健康診断。

 もっと無理。


 病院。

 何科に行けばいい。


 外を歩くだけでも目立つ。


 空港の金属探知機なんて一生突破できる気がしない。


「……人生終わった」


 魔王を倒した俺が、現代日本の社会生活に敗北していた。

 考えても答えは出ない。


「……もういいや」


 俺はパソコンの電源を入れた。


 こんな時はゲームだ。

 いつも遊んでいたオンラインFPSを起動する。

 久しぶりのログイン。

 マウスを握る。


「この手で操作できるのかな」


 カチッ。

 普通に動いた。

 試合開始。


 敵が曲がり角から姿を見せた。


 ――瞬間。

 俺の視界に敵の位置がくっきりと映った。


 距離。

 移動方向。

 速度。


 俺の指が勝手に動く。


 パンッ!

 ヘッドショット。


「……え?」


 次の敵。


 パンッ!

 ヘッドショット。


 さらに次。


 パンッ!

 またヘッドショット。


「ちょっと待て」


 自分でも引くくらい敵の動きが見える。

 というより、遅い。


 人間がマウスを動かす速度より、俺の機械の指の方が圧倒的に速い。


 敵が撃つ。

 避ける。

 撃ち返す。

 ヘッドショット。


 十キル。

 二十キル。

 三十キル。


 試合終了。

 圧勝。


「…………」


 もう一試合。

 圧勝。


 さらに一試合。

 圧勝。


 気がつけば、今まで何ヶ月もかけても届かなかったランクをあっさり突破していた。


「……これ」


 俺は自分の手を見る。


 サイボーグになったせいで、反応速度も、動体視力も、指先の精度も、人間の限界を完全に超えている。


 魔王相手には強すぎてつまらなかった能力。


 だけどFPSでは――。


「めちゃくちゃ使えるじゃん」


 しばらく夢中になって遊んだ。

 時計を見る。

 もう深夜だった。


「……眠い」


 サイボーグなのに眠くなるんだな。

 そんなことを考えながらベッドに入った。

 そして――。


◆


「……そうだ」


 朝。

 俺はベッドの上で呟いた。


「全部、昨日の話だった」


 トラックに轢かれた。


 異世界へ行った。


 サイボーグになった。


 魔王を倒した。


 日本へ帰ってきた。


 FPSをやった。


 そして寝た。


 俺は改めて機械の右手を見る。

 これからどうやって生きていくのか。


 会社には戻れるのか。

 この身体をどう説明するのか。


 そもそも戸籍上、死んだことになっていないのか。

 問題は山ほどある。


「…………」


 俺は机の上のパソコンを見る。


 昨夜の戦績が画面に残っていた。


 異常なキル数。

 異常な命中率。

 異常な勝率。


 俺は少しだけ考えた。

 どうせ普通の人生には戻れそうもない。

 だったら、この身体を使ってできることをやればいい。


 FPSなら得意だ。


 いや。


 今の俺なら、得意なんてレベルじゃない。

 ゲームをしながら金を稼げる仕事。


 動画。

 配信。

 実況。


 そういえば、昔ちょっと憧れていた。

 俺は機械の指でマウスを握った。


「……ユーチューバーでもやるか」      

本日8時に第二話

8時10分に第三話投稿します!


星とかフォローとかいいねとか沢山ください!

沢山くれたら続き書く元気になるぞ!

オラに元気を分けてくれー!!

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