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その男、名探偵につき  作者: 小高まあな
第四章 弁護士の場合
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07

 うつらうつらと夢を見る。

 あの、最終電車での光景。

 大学生になり、付き合いで行った合コンで慎吾と再会した。あの日の、帰り道、最終電車。

 座った私と、その前に立つ慎吾。

「あ、次で降りますね」

 そう言った私に、慎吾はそっかと笑った。

 慎吾は笑ったけど、彼がとった行動は、またねと手を振ることじゃなかった。

 電車が駅のホームに滑り込み、私が立ち上がろうとしたタイミングで、

「茗ちゃん」

 私の名前を呼び、ゆっくりと身を屈めた。

 近づいてくる顔に、あの時に私は、何を考えたのか素直に目を閉じた。それなりに人が乗った電車で何をしていたのか。今思い返すと呆れてしまう。

 ちょうどドアが閉まり、電車が動きだしたころ、慎吾は唇を離した。そして、

「終電、なくなっちゃったね」

 そう言って、いたずらっぽく笑う。

 もしも、人生の分岐点で選択肢を間違えたのだとしたら、あの最終電車でのことだったと思う。

 あのとき、いきなりキスしてきた慎吾を殴って強引に電車を降りるとか、そうじゃなくても次の駅で降りてタクシーで自宅に帰るのでもよかった。

 なんであれ、あの時慎吾の家までついていかなければ、今こんなことにならなかっただろう。

 私は名探偵なんていう人種にかかわることなく生きていけただろうし、もしかしたら慎吾も名探偵になんかならなかったかもしれない。

 でも、もしも、今またあの電車の中に放り込まれても、私は最寄り駅では降りないだろう。

 そんな気がしている。


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