プロローグ
王宮の大広間には、名だたる貴族たちが集まっていた。
その中で、特に注目を集めている男がひとりいる。
「これは、レオン・アシュフォード男爵。いや、次期ベルモント公爵とお呼びした方がよろしいのかな」
男は振り返った。隣には、最近結婚したばかりの美しい妻が微笑んでいる。ベルモント公爵家の令嬢、セリーナ・ベルモントだ。
「いやいや、まだ先の話ですよ。セリーナが当主になって爵位を継ぐまでは、婿入りした私は男爵のままですから」
「レオン様、ご謙遜なさらないで。私の両親は、すでにあなたをベルモント家の跡取りと認めておりますわ」
「ふふっ……よさないか、セリーナ」
レオンがセリーナの腰を抱き寄せて囁く。
「新婚は仲睦まじくて、羨ましいことですな」
「ははっ、お恥ずかしい」
そんな新婚カップルを、貴族たちは遠巻きに見ていた。
ーーアシュフォード男爵の噂、お聞きになって?
ーーええ。許嫁と婚約破棄をして、ベルモント公爵令嬢に乗り換えたそうよ。
ーー地位と魔力、どちらも手に入れるためですって。
レオンは噂話には耳も貸さず、前のめりになって、防衛大臣に握手を求めた。
「妻のセリーナは、強大な魔力を持っております。今後もぜひ、お引き立てを」
「こちらこそ。国防のために協力を頼むよ」
二人が握手を交わすと、舞台を覆っていたベルベットのカーテンが左右に引き上げられた。大広間がしんと静まり返る。しばらくすると、壇上にひとりの青年が現れた。
「皆様、今夜はお集まりいただき感謝する」
クロード・サンクレール。
銀髪に碧眼が麗しい美貌の青年は、病気で床に臥せている現国王に代わって、プラトニア王国の国政を執っている若き王太子だ。今夜のパーティーは、王太子から重大発表があるということで、開催されたのだった。
一体、どんな発表だろう。一同が固唾を呑んで見守っていると、クロードは舞台袖から誰かを手招きした。
「早速だが、私から紹介したい人がいる。さあ、こちらへ」
「はい……!」
レオンは口を開いたまま、硬直した。舞台に現れたのは、レオンの元婚約者の少女だったのだ。
「アリア・ヴィオレッタ。私の婚約者だ」




