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第十三話 ぶとうか

~6年後~


シノブは熊狩りに挑んでいる。


少年期からのラジオ体操と四股に加え、

新体操、ヨガ、リンボーダンスを増やして

総合的な体術を習得したシノブは

熊の攻撃を小さく不思議な動きで躱しながら

小振りな反撃を熊の腹部へと重ね続ける。


わずかなダメージを少しずつ与え

『今度こそ当てる!』

と熊を苛立たせることで

攻撃はより雑になり、逃走の選択肢を心理的に奪う。


熊に疲労と焦りが見えてきたころ

毛皮の奥にある急所を狙いすました刺突で、致命傷を与えた。



「カヅチ、倒したぞ。礼を言う」

「やれやれ、かすり傷くらいで終わるとは」

「模擬戦のおかげだ」

「お役に立てて光栄だよ」


熊の掌部を加工した手袋【熊手】を装着したカヅチは

模擬戦と称した立ち合い訓練を手伝ってくれていた。

熊とは体格が異なるものの、思った以上に効果があったようだ。


「初見の熊に体術回避は効果てきめんだったな」

「お前の避け方が特殊すぎるんだよ」

「うむ、思いのほかリンボーダンスが役に立つ」

「おかしなやつだ」


前世記憶の産業知識は役に立たせるための環境がないが

それでも価値ある宝物は眠っていた。


映像記録の記憶である。

特に体操系は『人体の可動域』の常識を超えている。


朧気な記憶を元に自ら体得し、実践してみせる過程で

体幹は鍛えられ、重心は安定感を増していった。


カヅチは『せんし』

カエデは『かりうど』

シノブは『ぶとうか』


新たな戦闘型でも熊を倒せることを示せたのは

今後とても重要な価値を持つはずだ。


結果だけみれば簡単に倒したようでいても、

シノブの戦闘型が最強だとは言い難い。


敵の動きや弱点について、

既知であった部分が非常に大きい。


未知の敵と戦う際や、協力して連携するときは

筋力重視の『せんし』が必要になる可能性は高いと思われる。


消えたように見える回避体術も、慣れられてしまうと効果が薄れるのは

カヅチとの組手で判明している。


「さぁ、解体して帰ろう」

「あぁ」


「子どもたちの顔がみたい」

「そういやイツキが言っていたな、舞うように戦う舞踏家だとか」

「武闘家は違うものだぞ」

「観ていると本当に踊っているようだがな」


なおシノブは『けんぽうか』と自認している。

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