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死神の猫  作者: 十三番目
第二招 Second Voice 真実は裏返る
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ep.15 死神王の使い


 上司を見る女性の顔には、どう考えても好意的とは言い難い感情が浮かんでいる。


「おや、この件で私が出向く必要はなかったはずですが」


「今回の件でなくとも、王からの呼び出しには応えるべきです。幹部ともあろう者がそんな──」


()()、をお忘れですよ」


 上司の漆黒が、女性の方へと向けられる。

 闇を詰め込んだかのような瞳に、女性の表情が硬さを増した。


「無礼な……。この死界において、王は絶対的なお方です。まさかそれを、忘れたわけではありませんよね?」


「そうですねぇ。死界と天界における王とは、創造主であり、唯一神を指す言葉ですから」


 女性の顔が忌々しげに歪んでいく。


 今の発言が、何か気に障ったのだろうか。

 むしろ、王を褒めるような言葉にも聞こえたが、女性にとってはそれさえも気に入らなかったようだ。


「とにかく、今すぐ部屋を移ってください。これ以上、王をお待たせすることのないように」


 それだけ言うと、女性は(きびす)を返して去っていく。

 部屋を出る時、一瞬だけ向けられた女性の視線。


 交差する視線の先で見えたその顔は、隠しきれない憎悪に満ちていた。




 ◆ ◆ ◆ ◆




「あいつ、よくもあんな目で……!」


 女性が出ていったドアを、もの凄い剣幕で(にら)んでいる美火は、まるで毛が逆立った猫のようだ。

 シャーシャー言わんばかりに怒る美火を見て、何だか気持ちが和んでしまう。


 いつのまにか近くに移動していた霜月は、ぴたりと隣に張り付き、冷たい目で入口の方を見ている。


「仕方ないですね。少し席を外します」


 やれやれと言わんばかりに立ち上がると、上司は美火たちに指示を出していく。


「留守を頼みましたよ、美火。ナツメグは変わらず、今の仕事を続けておくように」


「分かりました」


「……はい」

 

 ナツメグは先ほどと同じ場所で、静かに佇んでいる。

 あまり話さず、反応もしないナツメグは、女性が入ってきた時も微動だにしなかった。


 あの女性は誰なのか。

 死神のデータベースにアクセスしてもヒットしない。

 おそらく、立場上の制限がかかっているのだろう。


 ──死神王について検索。


 【死神王】

 死界の最高権力者。

 圧倒的な力を持つ神であり、死神にとって絶対的な主でもある。

 

 人物検索ではなく、辞書ならどうかと試してみたが、書いてあるのは普通のことばかりだ。

 死神王とは、いったいどんな存在なのだろう。


「睦月。警備課へ行った後、もう一度ここに戻って来てください。話しておく事があります」


 上司の言葉に了承を返す。


「霜月、警備課には一緒に行くように。ああそれと、──ついでに拾ってきてください」


「分かった」


 拾うって、いったい何を?

 主語の抜けた会話が成立している不思議。

 首を傾げる私をよそに、上司は霜月の返事を聞くと部屋を出ていった。


 

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― 新着の感想 ―
[良い点] 相変わらず伏線らしきものがそこかしこから伸びているお話で、いったいどう回収されていくのだろうと考えると続きが楽しみになりますね。 [気になる点] > 主語の抜けた会話に、思わず突っ込みそう…
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