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14◇それぞれ思い出しませんかぁ?その7◇




「っじゃあさあ、その話は終わりってことでっ!

ねえ、さっそくこれに魔法付与して見せてよ♪」


さっきまでの室内の空気感をバッサリ無視したような明るい声でヒューバードさんが室内の隅にひとまず置いてた箱を再度私の目にドカッと置いてきた。

緊張した空気は、ヒューバードさんの明るい声に霧散した。

ヒューバードさんは、見目がきれいな中性的な美人さんで声と喉仏を確認するまでは女性と思っていた。つやつやとして絹糸のようなライトグリーンの髪色なんてなかなかお目にかかれない。近くの村に行った時もそんな人見なかったもん。っていうよりも、村の人って茶色が明るいか暗いかくらいの色味の髪色しかいなかった。こんなにアニメやゲームでしか見ないようなカラフルな髪色のほうが珍しいのかな?


どうしようかとクレイさんの顔を伺えば無表情の更に無表情で変わらない。止められないということはいいということですね?

ちょっとクレイさんのことがわかり始めたといっても、もう少しわかりやすいほうがいいなぁ。


ふうっと息を吐いて、にっこり笑ってヒューバードさんを見る。

笑顔は人付き合いの基本ですものね。

これからこの世界で暮らしていく私は、新たな人との付き合いを作らないといけなくなる。

この4人はクレイさん以外で初めてのこの世界の人。

クレイさんしかサンプルがないからわからないけど、この世界の価値観が私の知るものと同じだといいな。

笑顔は人と人をつなげると思ってる・・・マス。


笑いかけたはずのヒューバードさんの眉がぴくッと動いただけで変化がない。ワクワクしているような笑顔が張り付けたように見える。

なんだ?

異世界の人は感情がわかりにくいのがデフォルトなのか?


反応がないことに気まずさがあるけど仕方がない。

この世界は、私の分からないことばかりだし、悪い心証を与えないように言動は気を付けよう。


ヒューバードさんから視線を外して、箱の中から乳白色のつるんとした石を手に取った。

私のその行動に、私の後ろに立って肩越しに手元を見ていたヒューバードさんはもちろんだけど、アシュトンさんもジェフさんも身を乗り出してきた。

フィオナさんは座ったまま体ごとこちらを向いている。


石を両手でふわりと卵を持つように優しく包み込むように持つ。

包んだ両手を胸元に寄せてお祈りをするような姿になる。

一息、呼吸を整える。


『体の悪いところが治りますように』


病気や怪我が治るイメージを頭に描く、そうすると手がじんわり温かくなっていく。これが魔力だってクレイさんが教えてくれた。

それを石の中に閉じ込める。

最初は『入って!』って言うような曖昧な思いでしたんだけど、勿論クレイさんの烈火のお説教がありましたが一度問題なくできてしまうとその後は息をするように付与ができ、クレイさんもなにも言わなくなった。

魔法付与は、お兄ちゃんが持っていたファンタジー小説でよく見たもの。私のアイデアはそんな小説や漫画、ゲームが下地になっている。


小屋の中で乱雑に放置されていた魔石を見つけた時に興奮して、この石にどんな効果があるのかと聞いてみたら余程強い魔物魔獣からとれるものしか魔力効果はないと言われてがっかりした。

こんなのは屑魔石、雑魚魔石と言われて何の価値もない。たまに庶民の間でアクセサリーに使われるがもとは魔物からだから忌諱されているという。

もったいないなぁ。

捨ておけないからこんな風に溜まっていく一方だったって言われて、ゲーム感覚でついついクレイさんの前で魔法付与しちゃったのよね。

赤い石に薪の代わりに熱を発してほしいなぁって・・・

そしたら上手にできて・・・もうあと10個ぐらい同じことを赤い石にして・・・家に帰って竈の薪をどかして・・・コンロを思い浮かべて円状に並べた。

それにクレイさんがチョンっと魔力をわずかに流すと赤々と炎のように熱を持ち出した。

水を張った鍋を乗せると早い段階で沸騰してお湯になった。

これにはクレイさんも目を見張って驚いて、いくつかの制約付きで魔石に魔法を付与することを許して貰たのだ。

何度か試したけど、1度に1個づつしか付与できない。

同じ内容だからと何個か手にして付与しようとしたら石が粉々に崩れてしまった。

横着はできないらしい。

だから、丁寧に魔法を1個づつ付与する。


今回、この治りますようには初めてだけど、ヒールを付与してみた。

どうせならお近づきの印になればと思う。

それに元々は、この人たちが集めたものだし還元するのが一番だよね。

役に立てばいいなぁ


手の中で僅かにキラッと光って魔力が完全に定着した証拠。

それを確認して掌を開くとはじめと変わらずつるんとして表面の乳白色の魔石がそこにあった。


「できました、あっ」


広げた手のひらから長く白い女性のものにしては太いが、きれいな指がそれをつまんで持ち上げられた。

指の主は、ヒューバードさん。

手に取った乳白色の小さな魔石を指でつまんで光に透かすように頭よりも高い位置に掲げてじーっと見ている。


「・・・へえ、『ヒール』を入れたの?でもこの魔術『ヒール』にしては・・・術式が変わってるよね。う~ん、これ傷だけじゃないのかなぁ?うわぁ、これってもしかして毒にも効く?なにそれ!?」


?????


何言ってるかわかりません。

私こそ何それです。

私は確かにいつも通り『ヒール』のつもりで付与したんですが?

失敗したってことでしょうか?でも毒にも効くって?


「すごいね。はいこれ」


「あっ、返さなくていいです。差しあげます。もともと皆さんが集めたものですし」


私に目を輝かせて魔石を返そうとしてきたヒューバードさんだけど、もともと還元しようと思っていたわけだから・・・


「よかったら使ってください」


掌を縦にして向けられたヒューバードさんの手をさえぎる。

私の言葉に笑顔で驚いてるのはヒューバードさんで


「くれるの!!!!!」


喜色が強くそのまま出た笑顔で、私の手を取られてブンブン振られて喜ばれた。

明るい人だなぁと、女性のような顔を見ていると手を振りながら若草色の長い髪も振り乱して体全体で喜びを表しだした。髪を振り乱した拍子に長い

耳がチラッとみえる。

うはっ!

あのとんがり耳をみると指輪が題材の物語を思い出して興奮しそう。

でも、いまは無理かな?

ヒューバードさんのアクションが大きすぎ!

腕の振りがだんだん大きくなっていく。それにつれて私の腕も一緒に振られていたくなってくる。いや、はっきり痛いです。見た目はいくら女性の様に細くてきれいでもやっぱり男性なんだなぁ。手をぎゅぅぅぅぅぅって握られてさらに容赦なく振り回されて結構痛い。


「もうやめろ」


「いでっ!!!」


いつの間にやら傍に来ていたアシュトンさんがヒューバードさんの手に手刀を落とした。アシュトンさんによって私の腕はやっとヒューバードさんから解放された。

思わず帰ってきた腕を擦っていると、その様子をチラッとみたアシュトンさんの目が鋭くなってヒューバードさんを睨みつけた。


「ヒュー!女性に怪我させちゃダメじゃないか!」


「え~、そんなことしてないよぉ」


厳しい顔をしているアシュトンさんに対してヒューバードさんは、ニコニコして返事を返すがアシュトンさんは納得してない。まあ、そうですよね。

でも、そんなに怒るほどの事じゃないですよ。我慢できないほどの痛みではないし、あとでこっそりヒールを自分にかけておこう。


「あの、私は大じょ」


「ほ~ら、彼女は大丈夫って言ってるじゃん。アシュは大げさだなぁ。僕が可愛い女の子に危害を加えるわけないじゃん」


私が大丈夫と言おうとしているのを待たずに言っちゃった。

ヒューバードさん、まだ私は大丈夫って言いきってないですよ。『大丈夫じゃない』って言ってたらどうするつもりなんだろ。言わないけど・・・

それにしてもそんな綺麗な顔でヒューバードさんってなんかチャラいのかな?


「・・・・・・我慢しなくていいんだよ?言いづらいかもしれないけどきちんと言ったほうがいい。腕が痛いんじゃない?ほら、見せてごらん?あっ!」


「・・・『ヒール』」


私が大丈夫と言っていても、アシュトンさんは腕が痛い事に気が付いてくれていたみたい。こっちをむいて碧い双眸に心配そうな色をうかべて優しい声で訪ねてくれる。知り合ったばかりだっていうのにこんなに親身になってくれるなんて嬉しいなぁ。


でもその優しさもとてもうれしかったけど、それよりもまだ私に蟠りがあったであろうフィオナさんが痛む腕に治療をしてくれたことが心から嬉しかった。

アシュトンさんが私の腕をみる前に、フィオナさんが横から手を伸ばして私の腕を取りサッと『ヒール』をかけてくれた。


「ほら、これでもう大丈夫。ヒュー馬鹿みたいに興奮しないで、アシュもこれでいいでしょ」


表情はとてもではないが友好的とは言えないけどフィオナさんが私を心配してくれた。

それがとても、とっても、とっっってもうれしい。


この世界での知り合いはクレイさん以外にはいない。

でも私はこれからこの世界でこの国で知り合いを増やして生活基盤を築かないといけない。

できれば早急にどうにかしたいと思っていたし、初めての同性!

私が一番欲しいと思っていた同性のお知り合い。

クレイさんの孫さんが女性だと聞いたときから、この世界で一番に友達になってほしいと思っていた。出会いは突然すぎてびっくりしてしまった。

ううん、違う。

正直かなりショックを受けた。

怖かったけど、あんなに怒る気持ちもわかる。

だって久しぶりに会った身内のもとに、身元不明の世間一般的に見れば不審者としか言いようのない人がいきなり家に入り込んで暮らしているなんて警戒するに決まってる。

私だって滅多に会うことはなかったけど、田舎のおじいちゃんとおばあちゃんの年寄り住まいに知らぬ間に居候がいて、この人は何者かわかりませんなんて言われたら、ちょっとどころではなくかなり怖い。正直警察に通報しちゃうレベルの話。

だから昨日のようなことを言われて、ショックではあったけど、一晩考えれば私のほうからきちんと説明しないといけないと思った。

自分を証明できないことがとても悲しくて涙が出てしまったけれどそれは決してフィオナさんが怒鳴ったからじゃない。

明確に納得できるような説明をできない自分が悔しかっただけ。


元々、怒鳴られることは慣れてた。

ここ最近は穏やかすぎて忘れていたけど、働いていた工場にはいろんな人がいて現場の人たちはなかなか癖の強い人が多かった。

工場長は予定通りに作業が進んでないとすぐ怒鳴る熱血漢な人だし、往年の技術者は偏屈なのが多い、事務の先輩たちは社長の奥さんとか親戚連中が多くて結構いびられてたし・・・私、その中ですべて笑顔でスルーして働いてたもんね。

私の心は鋼かっ!っていうくらい強い気がする。

その甲斐あっていやがらせもなくなって、怒鳴られても味方ができたりした。

ここでも辛抱強くやれば、いずれ時間がかかっても何とかなるかもしれない。

違う!

私の居場所を作らないと!!!


そうしないとこれからのことが何にもできない。守る為に攻めないといけないんだ!


強くならないと・・・こんなことで泣くなんて私らしくない。

もっと辛いことはたくさんある。

平気

優しくされて心が熱くなるけど、うれしいからだもん。


鼻の奥がツーンとして、目が潤んでくるけど泣かない。

頑張らないと。

この世界で生きていくために、

大切な守るものを迎えるために・・・



「あ、ありがとうございます!フィオナさん!!!アシュトンさん!!!」


あげた声は思いの外上ずっていた。




大丈夫、私はまだ頑張れる!














次は元の時間軸に戻ります

過去編はまたちょこちょこ入ります。


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