試練
「澪、あの。」
「どうしました?聖女様。」
「あの、あのね。その。」
「お前は本当にあのクズか?」
「屑とは?皆様がおっしゃるのが聖女様と同じ時に異世界から来たものとおっしゃるのならば、そうですが。」
「でも、澪はあんな巨大な魔術を倒せるなんて。」
怖々と私を見る菫がとても面白い。
改めて見たらこんなにも菫って私に対して上から目線だったんだね。
本当に気づかないなんてアホだわ。
どんだけ菫に依存してたのか。
「レイ様はいつも私達を助けてくださっていましたよ。」
「村長。」
「聖女様がレイ様をこちらに向かわせて下さったおかげで、私共は無事です。本当にありがとうございました。」
村長が丁寧に頭を下げてくれたことで、菫達はそれ以上何も言わなくなった。
良かった。
説明するのも面倒臭い。
村長に促されて、聖女一行は村から出る。
「あの、澪、その。」
「聖女様、早く行きましょう。」
さっさと行きたい私は菫達の話を聞くことはしない。
どうだっていいもの。
それに今のわからない状況ならば、アイツらは暴力も奮ってこない。
なんだかんだで騎士様が見てて話しただろうから、巨大魔獣をいい所まで倒したのは私だって知ってるだろうから。
何故、どうやってかは分からないでしょうけども。
それでも、そんな力があるかもしれないという私に対して以前のように暴力を振るおうなんて思う馬鹿はいないみたい。
だから、結構スムーズに進めている。
あの穴まではあともう少し。
あと少しでこの夢も覚める。
覚めたらきっと始まるのよね。
無理矢理の覚醒が。
宝玉の乙女となるための。
「なれるかしら。」
「えっ?」
「なんでもないです。」
無意識に呟いていたようで、近くにいた騎士様が反応する。
もう、なんでコイツがそばに居るのかしら。
いや、見張りのためとは分かっているけども。
コイツは菫のお気に入りの1人だったはずなのだけどな。
まぁ、1番のお気に入りは勇者とかも言われている第1王子だけども。
今だってイチャついているし。
それに他の奴らが反応しているという馬鹿な光景が広がっている。
だから、なかなか進まないのよ。
この旅。
しかし、いつもはその馬鹿な光景にいる騎士様が私の近くにいるなんて、それだけ私が警戒対象ってことね。
たまたま居合わせてしまったから、監視する役になったのね。
なんともまぁ、可哀想なことで。
まぁ、それでもどうでもいいこと。
こんな息苦しいのも後数時間。
そう、あと数時間で。
「あっ、見えた。」
「えっ。」
見えた、見えた。
あの場所。
あの場所があのトラップの場所だ。
思わず走り出す。
嗚呼、嗚呼早く目覚めないと。
そして。
「レイ。」
あの馬鹿な王子様を助ける力を。
「さようなら、クソッタレな世界。」
後ろも振り返らずドロリとした黒い穴へと私は落ちた。




