試練
「心配かけてごめんなさい。でもね、これでしばらくは大丈夫だと思うよ。それに、きっとあれだけ大きな魔獣がいたと知ったら国だってもっと動いてくれると思うからきっと大丈夫だよ!」
「レイ。もう、ここにはいてくれないんだね。」
「ムーアさん。」
「分かってはいたさ。俺達の娘はあの聖女様達がやって来るまでしか居ないって。」
「ダントさん。」
「けど!あんな様子を見て、簡単に引き渡せないわよ!あんな!あんな!レイに対して、私の可愛い可愛い娘に対して!!あんな!本当にあれが聖女様達?ありえないわ!!」
「ムーアさん!?」
そんなこと言って!
今は聖女様達一行様がいないからいいけども、これが聞かれたらヤバい!
「それはワシらもそう思ったのじゃ。レイ、どうだ?あの聖女一行に着いていかずここで、暮らすのわ?」
「村長。」
「レイ、辛い思いしてまであんな奴らと一緒に行かなくていいのよ。私達と暮らしましょう?」
とても嬉しい言葉だけども、でも、私は行かなくちゃいけない。
だから首を無言で振るしかない。
「レイ。」
「私はやらなくちゃいけない事があるから。だから聖女様一行について行くわ。ごめんなさい、村長、ムーアさん。」
「でも。」
「やめろ、ムーア。」
「ダントさん。」
ダントさんがムーアさんを止めてくれる。
ムーアさんの言葉はとても嬉しい。
でも、これは夢だもの。
あの真っ暗の穴に飛び込めば、この優しい人達は消えてしまうの。
それはとても悲しいと思えてしまうぐらいこの夢は優しい夢だったわ。
でも、でもね。
「私は何を犠牲にしても達成しなくちゃいけないことがあるんです。」
「そうか。なら止めはしない。でもな、レイ。お前は俺達の大事な娘で、この村の子だ。辛くなったらいつでも帰っておいで。匿ってやることぐらいは俺達でも出来るからな。」
「ダントさん。」
優しい言葉に思わず泣きそうになるが、泣けばきっと止まらなくなる。
だからぐっと我慢する。
「そうよ、そうよね。離れていても私達はあなたを大事に思っているからね。」
「ムーアさん。」
「レイの達成したいことが出来るよう、祈っているわ。でも、でもね、もしその達成したいことが達成した後にはまたこの場所に戻ってきてもいい、あなたの帰る場所があるってことは覚えていてね。」
笑顔を浮かべるムーアさんに思わず抱きつく。
嗚呼、あの時こんなことを言われていたら私は頷いただろう。
しかし、頷くことはできない。
だって、これは夢なのだから。
都合の良い夢なのだ。
できない約束は、夢でもしない。
裏切られる辛さは知っているから。
「さぁ、そろそろ、聖女一行が帰ってくるわね。私達は奴らに殴り掛かるかも知れないから、村長だけ残して家に戻るわ。」
ムーアさんのその声で村の人々は家へと戻る。
残ったのは私と村長だけ。
村の人々が家へと戻った頃に聖女一行が戻ってきた。
信じられないという表情を浮かべて。




