エピソード25
1階に下りて、店舗に入って行くと、スランタニア語で捲し立てている、男の人がいました。
目の前にいるコレットは固まっています。
パティが言った通り、可愛い女の子を賞賛するような内容の様です。
陽気なナンパと言ったところですがコレットにしてみれば内容が分からない分怖いでしょうね。
相手は厳つい男ではなく、どちらかと言えば優男なんだけれど、背が高いからコレットにはかなりの威圧感があるんじゃないかしら?
直ぐにテッドが声を掛けて、上手く説得して、お帰り頂きました。
彼はスランタニア語がペラペラな上にロタ語やシューグリア語も喋れるみたい。
私も貴族令嬢として、母国語以外にスランタニア語とシューグリア語は勉強したけど、テッドほど巧みに操れません。
そう言う意味でもテッドは私の師匠なのです。
「コレット、大丈夫?」
私の声で我に返ったコレット。
「お嬢様、あの人何て言ってたんですか?
あたし自分の耳が変になったのかと思いました」
「あなたの事可愛いって誉めてたのよ。
あなたの耳が変になったんじゃなくて、違う国の言葉を話してたの」
「外国の人ですか…」
コレットはやっと事態が飲み込めたようです。
普段なら、ペリーヌとケティがいるから、こんな事にはならなかったと思いますが、今日に限って2人には各々届け物とお使いを頼んでいて、外へ出ていたのです。
その為に留守番のコレットだけでは心配だから、パティも一緒に付いててくれていたのですが…
やれやれ。
結局、また結婚の話をすることができませんでした。
※
「お嬢様、旦那様からお手紙ですよ」
とパティが部屋にやって来た。
「あら?」
テオバルト様からまた手紙が来たのかしら?
この前、苗のお礼とテオバルト様の提案を受けてラピポードの生産に乗り出した事を報告したばかりです。
変ね…返事が来るには随分と早い気がするのだけど。
そんな事を思いながらも、嬉しくてウキウキとしている自分がいました。
しかし宛名を確認すると、テオバルト様ではなく、お父様からでした。
「なんだ、お父様からじゃない」
「そうですよ、だから旦那様からって言ったじゃないですか~」
とパティが不思議そうに言います。
旦那様と言う言葉を聞いて、勝手にテオバルト様だと思い込んでしまった自分が恥ずかしいです。
もう、パティったら紛らわしいんだから!
私のウキウキを返して欲しいわ。
心の中で、パティに八つ当たりしてしまいました。
よく考えれば、パティにはテオバルト様との結婚の話は口止めしていたのだから、他の人の目のあるマルクスで彼女がそんな事を言うわけなかったのよね。
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