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はじめまして、顔も知らない旦那さま「顔も知らない旦那さま改定版」  作者: 井波裕子


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エピソード15

北部の事で手一杯だった頃だから、あまり覚えていない。

何せ私とお母様で領主代行を行っていても、やる事が多すぎた。

出来ること優先だったしね。



「そうだったのね。

でもとてもいい案ね」

私は町の人達のアイデアを誉めました。


「ただ、もうそこも一杯です。

仕事は港の雑用や船が着いた時の荷運びの日雇いなどを出来るだけ回していますが、施設を出でこの町で生計をたてられるような仕事にありつけているのは極々稀だと思います」


「そう、でも寝る場所を提供して、はい終わりって訳にはいかないわよね?

もっと根本的な解決策を考えなければいけないわ。

さっき町長に明日ゆっくり時間を取って欲しいと頼まれたのだけれど…

多分この事よね?」


「町長は明日お嬢様を宿泊施設に連れていくと思いますよ。

それもあってお嬢様が戻って来るのを首を長くして、待っていましたからね」


テッドも捕捉の説明をしてくれました。


ここまで北部の災害の余波が来ている事に改めて気が付かされました。

これは何とかしなければ…

私は明日から何をすべきか、考え始めました。







夕方、3階の自室で旦那様に手紙を書いています。


無事にお茶会は終わり、

アーサー殿下とも会ったこと。

殿下のお陰で周りに私達の結婚の事で非難されなかったこと等を書いた後、

実はわたしは伯爵家の領地でお店を経営していること。

それが港町マルクスにあって

、今はそのマルクスに来ていて、数ヶ月程こちらに滞在すると書きました。


明日、町長に会いに行く前に手紙を出そう。


ここからなら王都にいる時より、早く手紙は着くはずです。


さっきテッドに教えてもらったけど、ワグナー共和国には船で物資や手紙を送るほうが3倍早いらしい。


馬車で陸地経由だと、山脈を超えてとても厳しい道のりらしく、直線距離は短くても時間が掛かるそう。

海からだと、一見大回りの様に見えても風の吹き具合に因っては、とても早く着くのだとか。


手紙をしまって、窓を開けバルコニーにでるととても綺麗な夕焼けが見えた。

3階の自室からは海を眺める事が出来る。


私はここから見る景色がとても好きだった。


桃色と朱色の空に闇を纏った青い空が徐々に侵食するように広がっていく。

その様子を1人眺めながら、ふと考える。



2年後、ロエベ家に嫁いだら、この店や商会はどうしよう。

ドミニクに引き継いでもらうか、ロエベ商会に吸収してもらうか…


それと、みんなには私が結婚したことをいつ言おうかしら…


もう書類上の手続きは終わっている。

教会や国にも、報告も上げた。


まだ会ってはいないけど…

まだ顔も知らないけど…

正式に私はテオバルド・ロエベ様の妻になったのだ。


私は納得しているし、手紙のやり取りで伺えるテオバルド様はとても好感の持てる方だと分かって、ますます心配もなくなった。


でも、他の人に話す時…特に親しい人達に報告するとなると、少し躊躇してしまう。



「納得してても、私だって変だとお思っちゃうしね」

ため息とともに本音がでる。


出来ることなら、マルクスの人達からは無条件で祝福してもらいたい。


だから、直ぐに言い出せないでいた。



「でも、本当に嫁ぐのは2年後だしね」

そう、それまでには商会をもっと大きくして、このマルクスをどんどん発展させたい。


ロエベ商会とまではいかなくても、それなりには大きく。


この結婚が私にとっても、この商会、この町、領地全体にも良い影響になりますように。


「そうすれば、きっと自然に言えるはず…

まあ、なるようになるわよね?

今回の災害だって何とかなったし」


もう深く考えるのはやめる。

人間、悩んでもどうしようもない時はご飯を食べて、よく寝ること。

これはジャルジェ家の家訓だ。


と、言うことで私は部屋を出てパティに声をかけました。


「パティ~お腹減ったわ!

ご飯にしましょう」





お読み頂きありがとうございます

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