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第四十一話 過去の凡人





 ロドアさんから全速力で逃げて、お姉さんの実家に帰ってきた。

改めて見ると、やっぱりデッカイお屋敷だ。お姉さんのお家が3つは入りそうな……。



「ふぅ……さぁ、ひと仕事終えたし……遊んじゃいましょう!リーシャンちゃん!まずはアタシの両親にご挨拶よ〜!」

「わーい!……でもそれって、最初にやるものじゃ……?」

「……良いのよ、細かいことは気にしないほうが楽なんだから!それに……最初に寝ちゃってたのはリーシャンちゃんでしょう?」

「……たしかに」


 そういえば、前に馬車のなかで眠くなってそのまま寝たのは私であった。

 

 お姉さんに抱っこされて、屋敷の中を進んでいくと、お姉さんの広いお部屋や、ヴァロストロさんのお部屋と同じような扉があった。


「ここが、アタシのお父上の部屋よ」

「……例の、こわーい吸血鬼さん?」

「…………前まではね」


 お姉さんがちょっとだけ俯いた気がするけど、気のせいかな?

扉をガチャっと開けると、中には……!



 銀色の髪を短く切り揃え、丸いメガネをつけたおじちゃん魔族が!


「……その子は?君の娘か?」

「……見れば分かるでしょう?もちろんアタシの娘よ」

「……猫族の耳が生えておるが?」


 ……迷いなく、『娘』って言ってくれた……!?なんというか、すっごい嬉しい!やったぁー!


 ……でも、お母さんとお父さんにも言って欲しかったなぁ……。


 お姉さんは、ちょっと強い言い方でお姉さんのお父さんと話している。……怒ってるのかな?……でも、なにに?


 

「……猫耳なんて、そんなものは誤差よ」 

「……そうかもしれぬな」


 丸メガネおじちゃんも、少し顔を俯けた。こういう癖って、やっぱり親子で似るものなんだね。私にも、両親と同じ癖があったりするのかなぁ?


「ヴァーち。……まだ怒っておるか」

「いつの呼び方してんのよ……」

「ワシには素っ気なかったヴァーちが、妻の旅行には嬉々としてついて行ったあの日。ワシは考え直したんじゃ」


 お姉さんは腕を組みながら、扉のそばの壁に寄りかかった。そしてそのまま、お姉さんは右足を私の方に少しだけ寄らせてきた。なんかの意図があるのかは分からないけど、とりあえずぎゅっと抱きついてみる。


「……その呼び方、まだ続けるのね。あと勘違いしてるようだから言っておくけど、アタシが嫌ってたのはアタシへの『態度』じゃなくて、貴方の『酒癖の悪さ』だから」

「そうじゃ。最近は1本も飲んでおらん」

「——アンタが嫌いだったのよ。『バカだから勉強が大事だ』だの『社会経験が足りない。魔条じゃ埋もれるぞ』だの。ちょっと言い返したら『誰に口を利いてるんだ』とかほざいて、急に癇癪を起こしてアタシに殴るフリして……夜になったら毎晩同じようなことをさんざ……って、え?飲んでない?」



お姉さんの目が、まるでありえないものを見るかのように見開かれていた。……て、いやいやそうじゃなくて、お姉さんのお父さんって思ってたよりもクズ……?うーん……でも、バイトコルの治安と比べたらマシなのかなぁ……?

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