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第三十八話 子猫刺され事件




 お姉さんが扉をくぐるのと一緒についていくと、円形のグレーのテーブルに沿って、椅子が置かれていた。


 ……えーっと、ひとつ、2つ4つ…………12個だ。12個の椅子がある。会議って、思ったより人の数は少ないんだね?


「……テンダーネス家のお嬢様ですね。……あちらの、奥の席に…………っと、その前に……そちらの子供はいったい?」


 銀のちょび髭を生やして、片側だけの変な眼鏡をつけたスーツ姿の執事さんみたいな人が、私を見下ろして話しかけてきた。……いや、私について、お姉さんに聞いてるみたい。


「見ればわかるでしょう?これは私の秘書よ!」

「秘書……ですか……?しかし流石に、子供を連れてくるのは……」

「秘書よ!!」

「は、はぁ……」


 片眼鏡さんは諦めたのか、私とお姉さんを通してくれた。そうだそうだ、私はお姉さんの最強の秘書なんだからね!


 お姉さんが奥の席に座ったから、私は隣に立っていれば良いかなと思っていたけど、どうやらお膝の上に座っていて良いみたいで、ひょいと持ち上げられて座らされた。


 ……なんというか、私ってお姉さんの膝の上にいること多くない……?お姉さんの趣味なのかな……。


 まぁいい匂いするし、なんでも良いけど!


「リーシャンちゃん?いい?そこで座っているだけで良いからね?お話はアタシがするから!」

「わかった!」



 お姉さんの指示を忠実に守ることを心に決めて、数十分後。席が12個全部埋まって、ようやくお話が始まるみたい。もうちょっと早く始められないのかな……。


「……これより、第七十八回。魔条国十二王代会議を開始する。進行は、私……ロドア・ヴァンドが行う」


 ……なんていうか、すっごい重い雰囲気……。いま話してた人は、一番偉い人なのかな?それとも、ただの司会さん……?周りの重厚そうなおじさん魔族たちが姿勢を正し始めた。


 すっごく背が高くて、ガタイも良くて、肩までの銀髪を綺麗に整えていて、凛々しい顔立ちで……えっと……その、すっごい……カッコいい……。肌もツヤツヤでまだ若そうだし……いや、魔族だから私よりは年上なんだけど……!


 声も低くて、でもハキハキしてる……タイプだ!


「……今期の議題は、魔条国のこれからの方針についてだ。我々魔条の民は、周辺の人間族の国との不仲により、たびたび命が失われる事件が起きている。……この問題を解決するために、まず私は——」


 何について話してるのか、あんまり分かんない……。いや、内容は分かるんだけど、言葉遣いが堅くて理解しづらいって言うのかな?


「——この案について、意見のあるものはいるか。……私としては、このまま排除の方向で向かうことが良策であると考えている」


 排除……?あんまり話聞いてなかったけど、排除って……たぶん、さっきの話の流れ的に……人間族を殺すってことだよね……?


「……ダメ!!!…………だと、思う……!」


 考えてたら、話が進んじゃうと思った。言い終わってから、『その人間族たちが、どうしようもない程のろくでなしだから、魔条としては仕方がない判断』だとか、『避けられない、今すぐ解決しないといけない問題』とかの可能性について浮かんできたけど……言い終わっちゃったから取り消せない……。


 やらかしちゃった……

 

「ちょ、リーシャンちゃん!?」


 違う方向を向いていたロドアさんの鋭い眼光が、一瞬で私の顔を刺すように見てくる。……怖い……!


 い、いや……ヴァロストロさんの教えを思い出そう……怖くない、怖くない……怖くない……私は最強……王の……なんだっけ。……あ、家臣にしてくれるってヴァロストロさんは言ってた……大丈夫、大丈夫……!!


 どうにかして不安を落ち着かせようと、モコモコメイド服のスカートの部分をギュッと握りしめてみた。


 ロドアさんが口を開くまでの時間が、異様に長く、そして冷たく感じた。

キャラクタープチステータス:


   ⑫ロドア

   年齢:不明

   身長:192センチ

   種族:魔族

   好み:紅茶


   好きな人:20歳差の妹



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