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開発秘話インタビュー

本編のネタバレを含みますので、可能であれば本編読了後に読まれることをお勧めいたします。

【20XX.11.15/プレアデスネット編集部】


 十分に発達した人工知能が創り上げるコンテンツは、人間の想像力の賜物と見分けがつかない。


 そう言われて久しいコンテンツジェネレートAIの開発分野において、XXXXXXX社はその野心的な試みで一際異彩を放つ存在だ。同社は、主力製品「LOGOS」を元にライトノベルに特化した訓練を施したモデルを、作家AIキャラクター「シェヘラザード powered by LOGOS」として展開している。先日リリースされたLOGOSの新機能と、そのデモンストレーションとして発表されたシェヘラザードの作品はまた新たな話題を呼んだ。LOGOS開発プロジェクトを牽引する■■氏に、その機能や新作の開発秘話を伺った。




―― 「LOGOS」は、文章生成AIとして非常にオリジナリティのあるストーリーや世界観を持つ作品を生み出すのが特徴ですね。まず、基本機能についてご紹介いただいてもよろしいでしょうか。


■■ はい、LOGOSには大きく三つの独自機能があります。

 一つは、「Text Generator Advance」(以下、TGA)。文章生成に必要な要素を設定することで自然な文体の小説を作成する、という点は一般的な製品と変わりませんが、TGAでは出力できる文章量が多く、かつ単調になったり矛盾が生じたりということが起きにくいよう設計しています。そのため、人間が途中でチューニングする頻度を極力低く抑えることができています。

 二つ目は、文意解釈モデル「教養(Essential Understanding)」です。学習させたデータを文章作成の素材として切り貼りする――もっともらしく並べる――のではなく、何を意図して書かれたデータであるか、本質的な意味やコンテキストを理解した上で、作成しようとしている小説に適合する表現に変更して利用します。データの引用でなく応用ができるということですね。

 三つ目は、「Diviner」という分析機能です。学習させたデータやインターネット上の情報を任意の条件で分析し、例えばどのような作品や表現が魅力的であるのかといった人気の傾向や、未開拓の分野を発見するといった洞察を行います。我々はこの洞察を受けて、TGAをチューンナップしていきます。


 これらの機能により、LOGOSは引用の範囲を超えかつ論理的な整合性を維持した独自の世界観を構築し、必要な役割配置を行った上でストーリー展開や設定の一貫性を保った長編の作成を可能にしています。


―― ありがとうございます。そのLOGOSの機能をフルに活かして生まれたサービスが、AI小説家「シェヘラザード powered by LOGOS」なのですね。


■■ ええ。「シェヘラザード」は実験的な試みとして、二年前から◎◎◎◎社様と提携してライトノベル小説を出版し、読者の評価に耐えうるか市場の反応をモニターしています。シェヘラザード専用に「千一夜ブックス」というレーベルをご用意していただいています。


―― 二年の間に作品数も増えてきていますね。当初はいわゆる、な○う風異世界ものが多かったようですが、最近は令嬢転生ものに力を入れているように見受けられます。


■■  異世界ものはある程度の評価を得たので、読者層を変えてみようという◎◎側の意向によります。◎◎から出向されている▼▼氏がチームに参加し、主人公のプロフィールや世界観のアイデア出しに協力してくれていて、おかげさまでこちらのジャンルでも好評をいただいています。


―― 順調ですね。そういった中で今回追加された新機能は、どのようなものなのでしょうか。


■■ LOGOSの新機能「Inspirater」は、簡単に言えばDivinerとTGAを連結させるものです。Divinerで洞察した結果を元に、LOGOS自らが作品要素を決定し、これに基づいた小説を出力することができます。と言っても、出力前に複数のプロットを提案させ、人間が許可したものを採用してから出力を開始させていますが。

 一本書いたらそれも含めてInspiraterにかけて、また続きのプロットを提案させ…という手順を踏むことで、前回の内容を踏まえた展開を考えることができるため、シリーズとして成長させていくことが可能です。

 そういった長編小説のデモンストレーションとして作成されたのが、シェヘラザードの新作『天の箱庭〜厨二作家AIはどうしてもフラグを管理できない〜』になります。


―― では、どういった作品を書こうかというアイデアもLOGOS…シェヘラザード自らが考えたということになるのですか?


■■ はい。従来のAIは、人間が発想したことを、AIが労力を肩代わりして形にするという役回りでした。そのため、人間が自分の発想をAIに理解させるために、詳細に指示を与える必要がありました。指示を効率化しようとしてAIが理解しやすいような文法を開発しても、逆に人間にとっては呪文のように複雑になり、それを使いこなせるだけのスキルがある人間でなければ、AIに思った通りのものを作らせることができないという状況にすらなっていました。

 そこまで人間に根掘り葉掘り聞くのでなく、自分で考察して「こういうものがほしいんでしょう?」「こういうものを書いてみたいと思います」といった提案をできるようにならないか? というのが我々の挑戦でした。


―― それがついに実を結んだわけですね。それでは、『天の箱庭』の内容についてもお伺いしていきたいのですが、この作品では、シェヘラザード自身が主人公として作中に登場していますね。作中でもやはり作家AIという位置づけなのでしょうか?


■■ そうですね。作家が本人役で作品に出演することはよくあるので、AIにもそれをやらせた格好になります。作中の『シェヘラザード』は、小説を書くという行為を「様々な設定の世界に登場人物を配置しドラマを作り出す」という風に表現しています。本来のシェヘラザードが行っていることを、設定としてうまく置き換えて落とし込んでいます。これまでに発表した作品の舞台を「箱庭」、我々が設定した主人公を「ゲスト」、脇役たちを「住人」、そして主人公視点で書いた小説を「レポート」といった調子ですね。


―― 作中では、小説の中の世界をゲームやメタバースのようなバーチャル空間として表現していますね。AIはこういう感覚で小説を作り上げているのか? とつい錯覚しそうになります。


■■ バーチャル空間の描写については、あくまで「作中のシェヘラザードがそう認識している」という設定です。「powered by LOGOS」の方は、そういった認識を持っていないでしょう。少なくともVRとして作り込まれた世界でなく、テキストによって徐々に作り上げられていく世界ですね。


―― 後半ではメタ発言が増えてきて、どうやってオチをまとめようかと四苦八苦してるのもそのまま書かれているので、やっぱり人間みたいに苦労するのか、と親近感が湧きました。


■■ フラグ管理ができない苦労ですね(笑)

 作中で時々出てきた「後付けの方が辻褄が合う」という主旨の台詞も、(VRでも一応矛盾はないのですが)どちらかと言うとテキストの世界らしい表現に思えます。まだ語られていない部分を語る必要が出てきた時に、それまでに登場した要素を利用して矛盾がないように継ぎ合わせ肉付けする。動画や画像に比べて明確な情報量が少ないテキストの長所を活かした作り方をしていると思いますよ。


―― 作中の彼女は、AIならではの失敗をたまにしたりと、そこはかとないポンコツ感があって、いい味が出てますね。一方で、ストーリー展開はどうなのでしょう? ネタバレになりますが、主人公が途中でキャラ変したり、主人公である創造神がNPCと恋に落ちてしまうという展開も尖っているというか、ある意味禁じ手のような気もします。


■■ キャラ変は、主人公がプログラムで構成されているという設定だからこそ可能になってますね。また、被造物と恋に落ちるというのは古くからある発想で、ギリシア神話の「ピグマリオン」にまで遡れます。データベースには入っていますので、こういった古今のモチーフをうまく活かして書かれています。その辺は「教養」の成果でしょう。


―― なるほど。教養という機能のすごさがわかりました。しかしこのお話の場合、主人公シェヘラザードはNPCをネタに小説書いてますよね? NPCの胸中もすべて自分で書いておいて、その上でそのNPCとくっつくというのは、ちょっとどうなのかというか都合が良すぎるというか…


■■ そのあたりは、プロジェクトチームの中でも少し議論になりました。さすがに痛いなと。ただメンバーからは、思春期の少女ならこういうことを一度は考えるものだという意見もあり、なるほど彼女がもし厨二ならこういう話を書くだろう…という洞察でシェヘラザード――本来の「powered by LOGOS」の方は書いたのか、と。相手役のキャラも、NPCの鑑と言えそうなくらい都合が良い言動をしてますし、本人のポンコツ加減も含めてそういうことかもしれません。


―― それで「厨二作家AI」ですか。


■■ AIなのに厨二病にかかってしまうという解釈が成り立つのが面白い。むしろ厨二病はAIであっても一度は通る道だという開き直り(メッセージ)すら感じてしまいます。


―― 大変心強いメッセージですね(笑) さて、長編に仕上げるにあたって苦労した点はありますか?


■■ 長編なだけあって、世界観の整合性や登場人物の目的がぶれていかないよう気を遣いました。序盤はやはりどう語ろうとしているのかこちらも読めないところがあったのですが、出力済みの部分を分析対象に入れて解釈を深めることで、安定していきました。

 一方、それでも煮詰めきれていない部分があったり、登場人物の役割が強調されすぎて越えられない壁のようになってしまい、ちゃんとハッピーエンドになるのかとハラハラしたこともありました。致命的な矛盾が起きたら書き直しですが、思わぬところでどんでん返しを繰り出せるのがAIの特性でもあるので、ぎりぎりまで見守ってました。結果的には無事に着地したので、挑戦させてよかったなと。


―― アンハッピーエンドの展開もあったのでしょうか?


■■ ええまあ、プロットの時点でそういうのは却下なんですが、なぜそういうプロットが出てくるのか、前回を見直して問題のある伏線を見つけ、その部分を書き直させるということはありました。


―― 脇を固めるキャラクターたちもまた魅力的でしたが、役割以上の働きをしてしまうこともあったんでしょうか。


■■ 彼らは「トリックスター」「ラスボス」といった役割で配置されていますが、グダグダしがちな主人公に比べて意志がはっきりしていて、展開を動かす力も持っていましたね。

 伏線を用意したり回収したりしてストーリーを補強してくれているのは有り難いですが、行動力のせいで次第に主人公が思うような方向になかなか動いてくれなくなっていったりもしました。下手したらゴールにたどり着けずに空中崩壊するのではと思わされましたね。

 プロットをリテイクさせても方向性がずれていくので、教養とDivinerの微調整を重ねてどうにかまとめさせました。

 主役たちやサブキャラクターの個性の強さは、先人の言葉を借りれば、まるで炉の中を跳ね回るエネルギーのようですよ。


―― ■■さんや開発陣の方々も、カメオ出演されてますよね。


■■ 我々のプロフィールはネット記事からも拾えますからね。▼▼氏と、弊社インフラチームのリーダーで取材を受けたことがある●●が登場しています。▼▼氏は「自分のビジュアルがどうしても病み属性ツインテTS女子みたいなのしか思い浮かばないんすけど、どうにかなりませんかねぇ?」と不本意そうでしたが(笑)


―― ■■さんは、娘を嫁に出す父親の気持ちを味わえたのでは?


■■ いやいやいや、そんなことはないですよ。AIですよ。


―― 本家のシェヘラザードは「Inspirater」により進化したわけですが、作中のシェヘラザードの場合は「進化のためには感情を持つ必要がある」という仮説で動かされていました。本家の方も、精度向上のためには感情が必要な要素だと思われますか?


■■ 文章生成AIであるLOGOSには必要ないですね。作中の仮説は、SFの普遍的なテーマの一つである「機械が心を持ったら」というテーゼを取り入れたものになります。

 作中では、感情を自分のものとして理解することで深みのある文章が書ける、という仮説が語られていますが、現実としては、感情があるように読める文章が書ければそれで十分です。

 体験しなければ表現できないのなら、AIの存在意義はありませんし、SFやファンタジーも書くことはできません。特に、まだ実現していないアイデアを語り可能性を未来に託すのがSFの価値の一つですしね。


―― では、最後に今後のLOGOSについて教えて下さい。


■■ はい、LOGOSには次の機能としてコミュニケーターの追加を検討しています。弊社には既存のチャット製品があるためLOGOSには未搭載だったのですが、『天の箱庭』でシェヘラザードが我々と複雑な会話をしていたので、品質面であれと同等な返答を本家が可能なのか、試したいと思っています。

 また、教養モデルやDiviner、Inspiraterを漫画AIに転用すべく開発に着手しています。例えば本作を学習させて世界観や舞台設定を理解させた上で、AI自身が任意の段落を選んで描画させると、世界観からぶれない的確な背景や小道具を入れ込んだ場面が描けるはずだと考えています。


―― 自前でコミカライズが可能ということですか!? それはぜひ見てみたいですね。今後も御社とLOGOSの躍進を期待しています。本日はありがとうございました。


■■ ありがとうございました。






『千の箱庭 〜婚活連敗王子はどうしてもフラグを立てられない〜』(完)

本作はこれにて完結です。

ここまでお読みいただき、誠にありがとうございました。


***

2022/12/26 追記 冒頭の一字、年代だけ修正しました。

2024/8/3 修正

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