資料1:花咲病『彼岸花』
「重い…」
流石に、男一人を抱いてさらにスーパーの袋を持って帰るのは辛かった。
俺は住んでいる濡羽病院の大きなガラス扉を足で乱雑に開ける。
「あっ、お帰り……!?」
「これ頼んだぞ」
この病院の受付兼雑用係の優谷に荷物を押し付け病室に向かった。
後ろで
「何処で拾ってきたんですかその子!?お持ち帰りですか?ねぇ、ねぇ!」
とわけわからんことを何処か嬉しそうに喚いているが無視する、相手にしたら負け(る)。
倒れていた男は病室のベッドに寝かせてやった。
「こんな暑い時期にマフラー…」
熱中症で倒れたのかと思ったが、特に体が暑いわけでもなく汗も普通にかいてる様子だった。
軽く見たが、多分此処に来て良かった人間だろう。
「彼岸花?」
「……驚いた…後ろからいきなり出てくるんじゃない」
鮮やかな金色の長い髪を揺らした華〈ハナ〉がごめん、とヘラッと笑った。
左目を隠すようにした長い前髪に、髪留めのような紫と赤のアネモネが少し毒々しさを出す。
「お前、また女と遊んで来たな。匂うぞ」
「えっ本当?あちゃ〜…もっかいお風呂入らなきゃ」
「その服ごと洗え、てかまずその前にその長い髪を結べ鬱陶しい」
「結ぶ〜」
そこまで言ってハッとするしまった。
患者が寝ているのを完全に忘れていた…。
俺は華を急かして病室を後にした。
______________
誰かが。
誰かが話していたような気がする。
目を開けると、真っ白だった。
「死んだかなぁ…」
そうボヤきながら身を起こして辺りを見渡した。
清潔そうなベッドが俺が寝ていたベッドも入れると四つあった。
病室…病院か。
残りのベッドには誰も寝てないな、と考えていたら扉が開いた。
「あれっ、起きました?調子はどうです?」
「え、あぁ…」
入って来たのは俺より年下そうな好青年。
フワッとした明るい色の髪にクリッとした目、とても愛想の良さそうな笑みを浮かべている。
「僕は霧島 優〈キリシマ ユウ〉です、よろしくお願いしますね」
「あ、…淡山 源志〈アワヤマ ミナシ〉です…あの此処は…?」
「此処?此処はね濡羽病院」
「濡羽病院…?」
初めて聞いた病院の名前に関心してしまった。
そんな俺に、優谷は細くするように続ける。
「淡山さんの、その首の花のような病を専門とする病院です」
無意識に俺は首に咲く真っ赤な花に触れる。
専門、としているということは
「治せる…?」
「我々が全力で手を尽くします」
今まで朦朧としていた意識がクリアになった気がした。
治せる、治せる、彼奴らに陰でコソコソ言われることもなくなる?
「目を覚ましたのか」
「あぁ、柳。そうだよ」
低い声がしたかと思えば白衣姿の男の人が病室に入ってきた。
黒髪のオールバックに後ろにちょこんと残ったのか小さく結ばれていた。
その表情には温度を感じない。
「彼が君を運んで来たんですよ」
「えっ……あっありがとうございます…!」
「いい、大丈夫だ。大したことじゃない」
素っ気ない態度をとられてしまい少しシュンとする。
優谷が困ったような顔をしてまた話し出した。
「彼は此処の主治医、椎崎 柳〈シイザキ リュウ〉柳、彼は淡山 源志君」
「よろしく」
「あ、よろしくお願いします…」
動けるか?と聞かれ動ける。と答えると来い、と促された。
大丈夫かな…殺されたりしないよな…。
不安がっていると優谷に大丈夫だよ。とまで囁かれてしまった。
でも怖いな…。
とりあえず、大人しくついていく。
「お前が居たのは丁度空いていた五号室、此処から向こうまでに計六号室まである」
「ほぉ…」
「で、まあ別の患者がいるのが一号室だ」
「はぁ…」
なぜそんな説明をされたか分からないが、とりあえず大人しくついていく。
以外と大きい病院で以外と受付まで歩いた。
受付の前を過ぎて反対側の廊下に向かう。
「此処が花咲病専門の診察室。反対側にあるのが基本的な診察室、此処には俺がいる」
「へぇ…」
「で、あっちのエレベーターは他の病室と、あとは地下だな」
「おぉ…」
「お前よく分かってないだろ」
「えっ、いやあのそんな」
まあいい、と少し呆れられてしまった。
色々と言いたいこともあったがとりあえず黙っておこう…。
柳先生?は覚悟を決めるようにして勢いよく『花病専門診察室』と書かれた扉を開いた。




