表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
六角瞳  作者: 有寄之蟻
真相編
110/114

・110・本当の捕食者は

……意味、わかんない、とミーは呟く。


「……ミーがどんなに、おいし…そうでも、オレは……ミーを食べたり、しない。……むしろ、オレが食べら…れる、から」


話すキムの声に、またしっとりとした熱がこもってきて、ミーは反射的に恐怖を覚える。


しかも、間近にあるキムは、恍惚とした笑みを浮かべ、愛しげにミーを見つめているのだ。


あの、リリと同じような。


キムは一体何を言っているのか。


あきらかに獲物を見つけた眼をしているのに、なぜよりにもよってミーがキムを食べたりすると言うのだろう。


あまりの不可解さに、ミーは無意識に顔をしかめ、 キムの胸を押して距離をとった。


すんなりと離れたキムだが、変わらずうっとりとした視線をミーに向けてくる。


ぞわりと背中を走ったのは、一体なんだろうか。


コワイ、と思っているのに、それと同時にあの名前のつけたくない感覚がこみ上げてきて、ミーは動揺した。


キムの瞳を見ちゃいけない、と頭の片隅で考える。


が、(あで)やかな紫に心を絡み取られて、目がそらせない。


キムは音もなく白いテールを一本出すと、自身の右手の平を躊躇なく(・・・・)切った(・・・)


唐突すぎて状況が理解できないミーの鼻は、無意識にあの"いい匂い"を嗅ぎ取る。


思わず大きく吸い込めば、キムはにっこりと笑みを深めた。


すっと差し出された血の溜まった右手に、ミーは驚くも、意に反して身体は吸い寄せられるように覗き込む。


手の平を赤く染める液体。


それはどうしても惹きつけられてしまう、"いい匂い"を発している。


「……ミーは、さ……ヘキサの血、が甘く感じ…るんでしょ?」


囁くような問いかけに、疑問に思いながらも首肯する。


「……ミーは、ヘキサだよ…間違いなく。……甘い香り、で獲物を引き…寄せて、捕食する」


キムは右手の平の血液に左の人差し指をつけると、素早くミーの口につっこんだ。


いきなりのとんでもない行動に驚愕し、しかし甘い血の味につい舐めてしまった自分に、ミーは愕然とする。


「……ミーはね、ヘキサを食べる…ヘキサなんだ、よ」


悦を浮かべたキムの紫の瞳の中に、奇妙な笑みを描くミーの歪んだ顔が映っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ