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六角瞳  作者: 有寄之蟻
真相編
106/114

・106・ミーの成長

キムは、一瞬呆気に取られたように口を開いて、ゆっくりと苦笑した。


「…………ありがとう」


唐突な言葉に、……なにが?と意味が分からずミーは眉を寄せて首を傾げる。


「……オレ相手、でも…すぐに警戒すること。……ちゃんと、危機感持ってね」


どこか嬉しそうな、娘の成長を見た父親のような反応に、ミーは気まずく頷いた。


確かに、自身の危機感のなさは今回の事件が起きてしまった一因でもある。


ヘキサアイズになったキムはなんだかコワイから、そうならないようにしなきゃ、と咄嗟に対応した事が嬉しいようだ。


これが前からできていれば、リリに襲われる以外の道があったかもしれない。


キムが今朝からおかしかったのは、もしかしたらミーにこのような危機感を抱かせる事が目的だったのだろうか。


それなら、今まで過剰に暴走する事もなく、事件後に様子が変化したのも納得がいく。


キムはミーを守ると宣言し、おそらく、それはミー自身が自衛する意識を持たせる事も含まれていたのだろう。


ミーはそう思考して、あぁそういう事だったんだ、とホッとした。


キムのあの尋常でない視線の強さも、声が持つ熱も、それにもかかわらずいつもと同じ優しい温度も、皆コワくてたまらなかった。


それはミーの知らないキムで、リリと同じようなーーミーを捕食しようとする者と同じように感じていた。


安堵したのは、それもこれもミーが自身が狙われる存在である事を自覚し、警戒心を持つための行動であったなら、もうあのような事をしないだろう、と無意識に考えたからだった。


キムは、表情を苦笑からいつもの儚げな微笑に戻し、立ち上がってミーの横に座った。


それも間に距離をあけず、肩と肩が触れ合う、ピッタリとした位置に。


困惑してミーが身体を離そうとすれば、やんわりとキムが腕を回し、まるで抱きしめるかのように、力を込める。


キ、キム……?と、戸惑いからか細くなった声を上げれば、キムは覗き込むように視線を合わせてきた。


「……キレイな、青。……初めて見た、時から…そう思ってた」


わずかに熱のこもった低音に、ミーの背中を痺れが走る。


透き通った紫に真正面から見つめられて、その美しさに、視線を逸らす事ができない。


知らず頬が赤くなっていくミーは、キムの行動に内心かなり混乱していた。


もうあのようなコワイキムにはならないと思ってたいたのに、やっぱりなっている。


しかし、今は今朝のような暴走している感じではなく、ちゃんと正気のようにも見える。


それならばなぜ、キムはこんな事をしてくるのか。


片手が頬に触れ、もう片方の手は、そっとミーの髪を撫でる。


近すぎる距離にキムの体温を感じて、ミーの中によく分からない感覚がこみ上げてきた。


それの正体を掴むのが恐くて、ミーは唇をきつく結んで、抑え込もうとする。


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