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六角瞳  作者: 有寄之蟻
真相編
105/114

・105・癒しのハーブティー

午後10時を過ぎた頃、ミーのスマホにキムからの連絡が入った。


昼頃に別れる際、夜にまた来ると言っていた件で、今から家に言っても大丈夫か、という確認だった。


それに大丈夫と返信し、キムがきた時に出せるよう、お茶の準備を始める。


始めはココアだったが、次第にレパートリーが増えて、今は主にハーブティーを出している。


ミーの元々の趣味で飲んでいたら、キムが興味を持ったので、試しに出したら気に入ったのだ。


いろいろと尋常でない体験をした事と、キムは仕事終わりで疲れているだろうからと、リラックスできるハーブをブレンドしてみる。


本当は香りを楽しんで飲むものだが、キムは甘党なため、専用に蜂蜜も用意してある。


キムが到着したのは、連絡が来て10分も経たないくらいだった。


ちょうどポットを温めていたミーは、作業の手を止め、キムを招き入れる。


お礼を言って入ってきたキムに、少し待ってねと声をかけ、数分でハーブティーのカップを差し出した。


ゆっくり香りを吸い込んだキムが、ふぅー……と息を吐く。


なんとなくお疲れ様と言うと、キムはにっこりと笑みを深めて小さく頷いた。


しばし、二人でお茶を飲み、心地よい沈黙に浸る。


長い身体を器用にたたんでクッションに座り、静かにカップを傾けるキムを、ミーはなんとなく見つめる。


色素の薄い茶色の短めの髪に、瞳。


シャープなラインが象る輪郭に、バランスの良い顔立ち。


標準装備の微笑はいつ見ても、何度でも綺麗という言葉を想起させる。


そんな美貌に魅入りながら、キムは何の用があるんだろう、とミーは考えていた。




◆◆◆




ーーーーそれは、唐突に起こった。


キムが置いたカップの中身が、あとわずかになっている。


それに気づいたミーが、おかわりいる?と尋ねた時。


考え込むようにどこか宙空を見つめていたキムが、すっとミーを見据えた。


それがあまりにも俊敏な動きで、見覚えのある強い視線に、ミーは内心びくりとしながらも、……キム?と首を傾げた。


すると、キムの双眸が、あの(・・)淡い紫の光を放つ。


思わず、ミーは喉の奧で悲鳴を飲み込んだ。


ヘキサになったキムは、何かおかしくなる。


おそらく、美味な『人間』の香りを放つミーを食べたくて仕方がない可能性がある。


瞬時によぎった考えに、ミーは慌てて自身もヘキサに変化した。


実感がないため判断できないが、きっとミーの瞳も青い光を灯しているだろう。


こうすれば、ミーの香りは『人間』のハチミツの匂いから、ヘキサアイズのミントのような匂いに変わる、はず。


なぜか判別のできないミーは、不確定な事実に不安を抱えながら、キムの様子を慎重に窺った。

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