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六角瞳  作者: 有寄之蟻
真相編
104/114

・104・事情聴取が終わって

黒いスーツの後ろ姿を見送って、ミーは内心、意外と優しい人だったな、と呟いた。


以前の酷薄な態度のせいで、灰原ウォーに対しては、コワイという印象が強かった。


しかし、この数時間の対面の中で、ミーに関する誤解が解け、ウォーが態度を変えたためだろうか。


初っ端の真剣な謝罪や、キムとの会話、終わりのミーに対するフォローなどから、根本的には非情な人ではない、という認識を持った。


だがやはり、刑事という職業柄か、質問する口調は圧力があったし、手がかりを掴もうと必死になっている様子は正直怖かった。


もっとも、それは自分ではなく主にキムに対しては向けられていたため、ミーはほとんど空気のようではあったけれど。


それと同時に、キムのウォーへの態度についても思案する。


初めてのウォーとの対談では、ミーを守るためと、ウォーの正体が不明だった事から、キムも警戒していたはずだ。


しかし、キムはミーがバイトに向かった後、灰原ウォーと会話を続け、《協会》への登録手続きまでしている。


短い時間でミーの印象が変わったのだから、キムもウォーに対する警戒は解かれていてもおかしくないはずだろう。


だが、キムはウォーから呼び出しがかかった時点で、機嫌が悪くなった。


原因は別にあるかもしれないが、対談中、始終ピリピリとした雰囲気をまとっていたし、ウォーの質問への返答も、どこか挑発的に思われた。


それに、途中で見せたあの表情。


ミーの知らない、捕食中のリリのような眼をしたキムの、歪んだ笑み。


いつの間にかいつものキムに戻っていたけれど、あれは一体どうしたのだろうか。


昨晩から今朝、現在にかけて、あまりにもたくさんの事を体験している気がする。


誘拐されたあの事件の時の、濃すぎる非日常体験と同じくらいに。


そんな風に、顔だけは机上に向けて、ぼんやりと思考していれば、


「……ミー、大丈夫?」


キムが心配げに顔を覗き込んできた。


それに困ったような笑みを浮かべ、ちょっと疲れたかも……、と答える。


キムはますます眉根を下げて、


「……そう、だよね。……家まで…送る」


言って、ミーの背中を撫でた。


ミーはのわずかに残っていたチョコレートプリンを食べると、キムのバイクで家まで送ってもらった。


キムはミーの家に着くなり、今日はゆっくり休んで、何かあったらすぐに連絡して、ただし用がない限りは外出はいないで、夜にまた来るから、と矢継ぎ早に喋ると、あっという間にバイクで走り去った。


ミーがはっとして時間を確かめてみると、もうすぐ正午になろうとしている。


今朝、何回か仕事は大丈夫なのかと尋ねた時、キムはなんでもないように答えていたが、やはり支障があったのではないだろうか、とミーは心配になった。


自分が危機感がないばかりに、キムに迷惑ばかりかけている。


そう改めて実感して、ミーはしばし落ち込んだ。


そして、これ以上の心配はさせないように、言われた通り家の中で大人しくする事にした。

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