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13番目の婚約者に選ばれたけど、王妃になる気はさらさらない  作者: 櫻木サヱ
選ぶ者と選ばない者

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30/30

同じ結論にはならない

 結果は、遅れてやってくる。


 すぐに分かるものもあれば、

 少し時間が経ってから見えてくるものもある。


 今回の課題は、後者だった。


 数日後。


 評価が、まとめて開示された。


 これまでの討論、選択課題、共同課題。

 それらを総合した中間評価。


 講義室は、静かだった。


 誰も騒がない。

 誰も声を上げない。


 ただ、それぞれが紙に目を落とす。


(……来たか)


 リリアも、自分の評価を開いた。


 項目ごとの評価。


 分析力。

 安定性。

 調整能力。


 どれも、悪くない。


 むしろ、高い。


 けれど。


 最後の一行。


 ――決断力:低


 小さく息を吐く。


(まあ、そうなるよね)


 驚きはない。


 選ばないという立場を取り続けた以上、

 当然の結果。


 視線を上げる。


 周囲も、それぞれ結果を受け止めている。


 セレナは、少し離れた場所で紙を閉じた。


 表情は変わらない。


 でも。


(上がってる)


 空気で分かる。


 評価は、良いはずだ。


 しばらくして、老女官が口を開いた。


「今回の評価は、現時点での傾向を示すものです」


 淡々とした声。


「今後の課題設定にも反映されます」


 つまり。


(この流れは、続く)


 選ぶ者は、より選ばれるように。

 選ばない者は、その立場が強調される。


 調整ではなく、分化。


 講義が終わり、人が動き出す。


 ざわめきは、小さい。


 でも、確実にある。


 リリアは、静かに席を立った。


 廊下に出る。


 足音が、少しだけ多い。


「評価、見ました」


 横に並んだのは、イーサ。


「見ました」


「予想通りですね」


「ええ」


 短いやり取り。


「問題は?」


「ありません」


 そう答える。


 本当に、問題はない。


 この評価は、間違っていない。


 自分の選択の結果だ。


「では、続けますか」


「続けます」


 迷いはなかった。


 イーサは、少しだけ頷いた。


「分かりました」


 それ以上は言わない。


 中庭。


 夕方の光が、少し柔らかい。


 人影は、まばら。


 以前より、やはり少ない。


 それぞれの場所が、決まっているから。


 ベンチに腰を下ろす。


 紙を、もう一度開く。


 決断力:低


 その一行を、しばらく見つめる。


(否定はできない)


 決めないことを、選んできた。


 だから、決める力が低いと評価される。


 正しい。


 でも。


(それでも、いい)


 少なくとも、今は。


 足音が近づく。


 顔を上げると、セレナだった。


「……座っても?」


「どうぞ」


 少し距離を空けて、彼女が座る。


 沈黙。


 特に、気まずさはない。


「評価、どうでした?」


 先に聞いたのは、セレナ。


「それなりに」


「決断力」


「低いですね」


 あっさり答える。


 彼女は、小さく笑った。


「正直ですね」


「隠す理由がないので」


「そうですね」


 少しの間。


「私は、高かったです」


「でしょうね」


「嬉しいです」


「それは、良かったです」


 会話は、淡々としている。


 でも。


 少しだけ、柔らかい。


「でも」


 セレナは、前を見たまま言う。


「同じ結論には、ならなかったですね」


「なりませんでしたね」


「これからも?」


「たぶん」


 短く答える。


 彼女は、少しだけ目を細めた。


「残念ですか?」


「いいえ」


 リリアは、首を振る。


「その方が、自然です」


 同じ考えの人間ばかりでは、

 意味がない。


 違うからこそ、残るものがある。


「……そうですね」


 セレナも、否定しなかった。


 風が、少しだけ吹く。


 静かな時間。


 ぶつかったあとに残る、

 妙な落ち着き。


 勝ったわけでも、負けたわけでもない。


 ただ。


 違うまま、残っている。


(それでいい)


 無理に揃える必要はない。


 同じ結論に、なる必要もない。


 王妃になる気は、ない。


 その気持ちは、変わらない。


 そして。


 選ばないという選択も、変わらない。


 それがどう評価されても。

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