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13番目の婚約者に選ばれたけど、王妃になる気はさらさらない  作者: 櫻木サヱ
補佐官を前提とした争い

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22/26

利用価値

補佐官を、味方に引き込めばいい。


 そう考える者が現れるのは、時間の問題だった。


 最初に動いたのは、意外にも静かな人物だった。


 第八候補、セレナ。


 彼女は、目立たない。

 声を荒げたこともない。

 前に出るより、常に一歩引いた場所にいる。


 だからこそ、油断していた。


「補佐官様」


 丁寧すぎるほどの礼。


「少し、ご相談が」


 応接室に入った彼女は、周囲を一瞥してから腰を下ろした。


「どうぞ」


 リリアは、いつも通りの距離感で応じる。


「私は、争いが得意ではありません」


 セレナは、指を重ねた。


「ですが、ここにいる以上、

 何もしないという選択も許されない」


「そうですね」


 否定はしない。


「補佐官様は、制度の味方だと伺いました」


「ええ」


「ならば」


 セレナは、ゆっくり言葉を選ぶ。


「制度を守るために、

 特定の候補を支えることは、

 理にかなっていると思いませんか」


 来た。


 真正面からの提案。


「具体的には?」


「私です」


 即答だった。


「私が王妃になれば、

 補佐官制度を恒常的なものとして残します」


 静かな声。

 だが、はっきりした取引。


 リリアは、少し黙った。


「それは、私個人への保証ですね」


「はい」


「制度ではなく」


「結果的に、制度は守られます」


 間違ってはいない。


 だが。


「お断りします」


 即答だった。


 セレナは、目を見開いた。


「理由を、伺っても?」


「補佐官が、

 誰かを勝たせるために存在し始めたら」


 リリアは、淡々と言う。


「制度は、その瞬間に歪みます」


「……」


「それは、あなたが王妃になる前に、

 補佐官を殺す提案です」


 空気が、重く沈んだ。


 セレナは、ゆっくり息を吐いた。


「やはり、難しい方ですね」


「補佐官なので」


 同じ言葉を返す。


 セレナは、立ち上がる前に言った。


「では、別の方法を探します」


「ええ」


「補佐官を通さずに」


 その一言に、意味が滲んでいた。


 彼女が去った後、イーサが低く言った。


「始まりましたね」


「ええ」


 リリアは、書類に視線を落とした。


「表から使えないなら、

 裏から削る」


「補佐官個人を、ではなく」


「制度ごと、です」


 夜。


 別の候補者からも、

 似たような誘いが届いた。


 支援。

 便宜。

 暗黙の協力。


 全て、丁寧に断った。


 断るたび、

 リリアの立場は明確になる。


 誰の味方でもない。

 だから、誰にとっても都合が悪い。


(……そろそろ、圧が来る)


 王妃候補だけでは、終わらない。


 制度を利用できないと判断した者は、

 制度そのものを不要だと叫ぶ。


 それは、政治の言葉になる。


 翌朝。


 老女官からの呼び出しがあった。


「上が、動き始めています」


 その一言で、十分だった。


 補佐官は、便利だ。


 だが、制御できない便利さは、

 最も嫌われる。


 十三番目の婚約者は、

 選ばれる側であると同時に、

 選考そのものを揺らす存在になっていた。


 王妃になる気は、ない。


 けれど。


 王妃選考に関わる以上、

 無関係では、もういられない。

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